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『V!勇者のくせになまいきだR』ムスメが楽しさをアップする?新感覚VRの真相

『V!勇者のくせになまいきだR』ムスメが楽しさをアップする?新感覚VRの真相

最近VR関連の話題で、“ムスメ”というワードを見かけることが増えてきました。これは『V!勇者のくせになまいきだR』(以下、『Vなま』)に登場するキャラクター、魔王のムスメのこと。ゲームを遊んだプレイヤーの多くがその魅力の虜になり、発売から1ヵ月以上経ったいまでも、SNSなどの各ネットコミュニティを中心に、その魅力がじわじわと拡散され続けています。

実はこのキャラクター、その存在がゲームの進行を直接左右するような重要キャラクターではありません。本作のメインになるリアルタイムストラテジー部分だけを楽しみたいのであれば、極端な話、このキャラクターがいなくとも成立するゲームなのです。

それではなぜ、このキャラクターがここまでの注目を集めているのでしょうか。これには、『Vなま』VR空間の活用方法と密接な関係があるのです。今回は本作でしか味わえない独特のVR体験と、それを盛り上げるキャラクターたちについて紹介します。

文 / 大工廻朝薫(SPB15)


入れ子構造が生み出す新たなVR体験

前回の記事でも紹介しましたが、本作はVRゲームとしては異質な、リアルタイムストラテジー(以下、RTS)というジャンル。ほかのVRゲームのように主観視点で動き回ったり、敵やヒロインと対峙したりといった要素はありません。プレイヤーは文字通り“神の視点”から、テーブルの上に表示されたフィールドを見下ろして魔物たちを操り、勇者たちの守る城を攻め落としていきます。

▲テーブルの向きを変えたり、気になるポイントを覗き込んだりすることも可能。リアルタイムで移り変わる戦局を支配し、魔王軍を勝利に導くのがプレイヤーの役割です

ゲームの舞台となるのは、魔王の居城である“あんこくの塔”の一室。征服対象となるフィールドの光景が部屋の中心にあるテーブルに投影されており、魔物と勇者の戦いがそのフィールド上でくり広げられます。本作のRTSとしての要素は、一部の情報ウィンドウを除き、すべてこのフィールドに集約されています。このフィールド内に干渉できるのは、神コンを持つプレイヤーのみ。神コンを持たない魔王やムスメは、直接侵略を手伝うことはできません。同じVR空間の中にあって、テーブルの内側と外側は明確に区別されています。『Vなま』のVR空間には魔王やムスメのいる部屋と、RTSとしてのルールが適用されるテーブル上のフィールド、ふたつのエリアが存在しているのです。

▲テーブルの上に広がるフィールドには、破壊神であるプレイヤーだけが、その手に持った神コンの力で介入できます

このテーブル上のフィールドをそのまま本作の“RTSパート”として解釈すると、『Vなま』は起動時にまず魔王やムスメのいるVR空間へとアクセスし、さらにそこからテーブル上のRTSパートへとアクセスしていく、“入れ子構造”を持ったゲームとして捉えることができます。

▲テーブル上でくり広げられるRTSパート。VR空間の中に入り、そこからさらに異なるゲームを遊んでいるようなプレイ感覚です

本作がほかのVRゲームと一線を画しているポイントは、この構造を利用して、VRコンテンツとしてメインになる部分をゲーム本編から切り離し、ゲームシステムの外側にもVRコンテンツとしての魅力を作り上げた点にあります。

本作のVR空間内には魔王とムスメ、そしてプレイヤー本人である破壊神の3人が存在します。そしてRTSパートをプレイしているあいだ、魔王とムスメはテーブルのそばで征服の進行状況を見守りながら、状況に応じて助言をしてきたり、発破をかけてきたりと、さまざまな反応を見せてくれます。

▲3人でテーブルを囲む、どことなくアットホームな雰囲気のなか侵略を進めていきます

自分のプレイに対する評価やコメントが、VR空間の中から飛んでくるというのが本作のおもしろいところ。プレイ中に視線を上げて回りを見渡せば、ゲームの行方を注視している魔王やムスメの姿を見ることができます。彼らは声をかけるだけでなく、魔王軍が劣勢になれば慌てふためき、勝利すれば喜びを露わにしながら采配を褒め称えたりと、豊かな感情を動きでも表現しながらゲームを盛り上げてくれます。

プレイ中もつねにプレイヤーを隣で見守り、ともに一喜一憂しながら感動を高めてくれる仲間の存在こそ、本作が示したVR体験の新たな可能性と言えるでしょう。

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