LIVE SHUTTLE  vol. 213

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ゆず 彼らの音楽性、彼らの歌を、まさに“目視”できる距離感で楽しもうと思ったホールツアー

ゆず 彼らの音楽性、彼らの歌を、まさに“目視”できる距離感で楽しもうと思ったホールツアー

YUZU HALL TOUR 2017 謳おう
2017年11月7日 パシフィコ横浜 国立大ホール

アール・ヌーボー的なデザインの額縁のようなステージ・セット。そしてコンサート・タイトルは“謳おう”だ。皆で“歌おう”というのが今回の主旨。しかし“謳”の文字には“本当に必要なことを伝える、または称える”、という意味もある。

ちなみに、前回レポートしたのは東京ドームだ。コンサート施設としては最大規模であり、彼らの歌の到達距離の大きさを知った。一方、今回はホール・ツアー。彼らの音楽性、彼らの歌を、まさに“目視”できる距離感を楽しもうと思った。

6月にリリースされた「4LOVE」EPから、「日常」でスタートする。伸びやかな二人の“二色”の声が、サビで混ざりあい“多色”となるあたりが心地良い。そして「眼差し」へ。この日、北川の第一声は、「ヨコハマ、ただいまー! 帰ってきたぞー!」。そう。ここは彼らの地元だ。

演出の特色としては、細長いスクリーンが左右にあり、縦に歌詞を映されていくこと。もちろん一緒に歌うため、だろう。さらにもうひとつ、歌が改めて、“活字として脳の中に入ってくる効能”を感じる。「眼差し」なら、歌に出てくる彼女の、揺るがぬ意志の象徴であるこの言葉が、より深く刻まれるのだ。

中間部に語りというかラップというか、独特な構成もある「ダスキング」などは、“おー、この曲で来たのね”、という選曲である。「もうすぐ30才」は、若さだけでは立ちゆかない“微妙なお年頃”がテーマで、歌い出しのエピソードが傑作だ。この日は最後に、“もぉぉ〜 すでに40才”と、自分達の実年齢へと落とし前をつけることも忘れなかった。

「いこう」から、二人だけのパフォーマンスへ。客電もついて、どの年齢層の人達が観に来てくれているのか客席にアンケートしつつ、北川はふと目に付いたお客さんに、直接話しかけたりもする。まさにホールならではの“近さ”を満喫だ。

僕が観に行った日は、自分達の披露宴で「栄光の架橋」を歌った(?)という若い夫婦の男性をステージに上げ、即興でその曲を一緒に歌う、なんてビッグなサプライズも。“え〜と、そこのメガネの人。あ〜、後ろの人もメガネだから、二人とも手を挙げちゃったぁ(笑)”と言いつつ、丁寧にその両者に話を聞いたりする北川は、まさに“仕切りの名人”だった。

このあとはソロ・コーナー。改めて岩沢が、畏まった感じで名乗ってから喋り出す。十代の頃の自分の“あだ名遍歴”を披露し、「保土ケ谷バイパス」へ。心に積もり解消されない想いと、かつて渋滞の名所だったこの付近を対比するかのようでもある。具象と心象を絶妙なバランスで構成してくあたり、まさに岩沢の世界だ。

同じ『謳おう』EPから、今度は北川が「天国」を。生きる意味を問いかける作品と言えるが、足下を見つめることも忘れない。途中、自らスティックでタイコを叩き、即座にそれをループにして流し、作品に奥行きをもたらすアイデアも。曲のテーマ的にも、見事に次の「カナリア」へとつながった(この曲、アコギのイントロが、鳥肌もののカッコ良さだ)。

今回の特筆すべきコーナーは、「ゆずと一緒に謳おう カラオケメドレー」。彼らがただ名曲メドレーを披露するのではなく、その時、今回のために制作されたカラオケ映像が、スクリーンに映される。もちろん歌詞も流れ、みなさん大いに歌ってください、という趣向だ。カラオケなのに本人達も歌ってくれてるという豪華版。

そしてメドレーゆえ、カラオケ映像もノン・ストップ。相変わらず凝ったものであり、「いつか」では寒い寒い冬の風情を、「恋の歌謡日」では、その場で北見川潤子とムーチョ小岩沢に変身してみせた。ただ、マジな感動曲である「栄光の架橋」の時、あまりに本人達が次々と必死の形相で各競技の選手達を演じるものだから、ついウケてしまい(特にラストの水泳の場面…)、歌うのが疎かになってしまったことも告白しておこう(北川はこの事態を予測してたのか、途中、“笑わないで〜”とか言ってたけど)。

そして最後はカラオケらしく、採点が。相変わらず、アタマからシッポまで、ゆずはとことんやることが洒落てる。94・327点! それがこの日の“我々の成績”であった。

新曲の「恋、弾けました。」を聴けたのも収穫である。“冷やし中華、始めました”を彷彿させるタイトルの言葉のリズムだが、タイプ的には「LOVE & PEACH」的な、理性や理屈より、衝動や(体の)屈伸こそを重要視するものに思える。アレンジ的に、最初のほうはエレクトロニカ的風情もある演奏に思えたが、今後、さらにステ−ジでの弾け方の度合いも増していくことだろう。

“地元だ地元だぁ〜”の掛け声が冴えた「夏色」、さらには「タッタ」と、本編終盤は出し惜しみなし。みんながタンバリンもっての後者における、振り付けのタイミングとともに“♪シャン!”という音が大きく響く光景は、これはこれで、体を駆使しての“謳おう”精神そのものだったのではなかろうか。

気づけば今年連続リリースされたEPからの楽曲が、ホール・ツアーの肝ともなっていて、新曲をじっくり受け止めようという雰囲気も、ホールならではという気がしつつ、気づけばアンコールへ。カントリー・ロック的な「ロンリーカントリーボーイ」は、新たなゆずのポップ観を提示するものだろう。さらにCF曲としてもお馴染みの「愛こそ」。この歌のメロディ(特にサビ)は実に印象的だ。メロディ・ラインというのは既に“出し尽くされた”とも言われるが、「愛こそ」を聴いた時には、普段、あまりマッサージされない心の部分に施術してもらったような新鮮な気分でもあったのだ。

前回のような、20年の区切りのベスト・セレクション的なツアーの後は、「さて、次は?」、ということが期待される。どんなアーティストもそうだろう。それをまず、彼らは2作のEP連続リリースで音源として示し、このホール・ツアーに臨んだが、二人が相変わらず、吸水力のいいスポンジで在り続けていることを証明する内容でもあった。

帰り道、「みなとみらい駅」の改札を足早に抜けたとき、鞄のなかのタッタンバリンが、ごく小さく、チリンと鳴った。そう。家に着き、ドアを開けるまで、ゆずのライブは終わらないのである。

文 / 小貫信昭 撮影 / 太田好治

YUZU HALL TOUR 2017 謳おう
2017年11月7日 パシフィコ横浜 国立大ホール

SET LIST
1.日常
2.眼差し
3.ダスキング
4.もうすぐ30才
5.旅立ちのナンバー
6.無力
7.いこう
8.保土ヶ谷バイパス
9.天国
10.カナリア
11.ゆずと一緒に謳おう カラオケメドレー
12.リアル
13.恋、弾けました。
14.夏色
15.タッタ
EN1.ロンリーカントリーボーイ
EN2.愛こそ

ゆず

北川悠仁、岩沢厚治により1996年3月結成。
横浜・伊勢佐木町で路上ライブを行うようになる。1997年10月、1st Mini Album『ゆずの素』でCDデビュー。万人を引きつけるキャッチーなメロディーと独特なハーモニー、飾らない共感性の高い歌詞が評判を呼び、翌6月にリリースした1stシングル「夏色」がスマッシュヒット。以後、「飛べない鳥」「栄光の架橋」「虹」「雨のち晴レルヤ」などヒット曲を多数世に送り出し、スタジアム・ドームクラスのライブも大盛況。2017年にデビュー20周年を迎え、アニバーサリーイヤーを記念し発売されたオールタイムベストアルバム『ゆずイロハ 1997-2017』が大ヒットを記録、そのアルバムを引っさげて行われた自身初のドームツアーでは約30万人を動員。さらなるエンターテインメントの可能性を追求しながら、現在も第一線で活躍中!

オフィシャルサイトhttp://yuzu-official.com

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