Interview

「花の唄」のメロディは劇伴のあちこちに潜んでいた─ 梶浦由記が明かす、『Fate [HF]』の楽曲制作と“冒頭30分”構想

「花の唄」のメロディは劇伴のあちこちに潜んでいた─ 梶浦由記が明かす、『Fate [HF]』の楽曲制作と“冒頭30分”構想

現在大ヒット公開中の『劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」I.presage flower』。『Fate/Zero』、『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』(ゲスト・コンポーザーとして参加)に続いて梶浦由記が劇伴音楽を担当している。PCゲームからスタートし、様々なメディア展開を見せる『Fate』シリーズの劇場版最新作での楽曲制作について、話を聞いた。

取材 / 冨田明宏 文 / リスアニ!編集部

エンディング主題歌に込めたヒロインへの想い

公開中の劇場版『「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」I.presage flower』では劇伴とAimerさんの歌うエンディング主題歌のプロデュースを担当されている梶浦さんですが、どのような流れで制作は進んでいったのですか?

梶浦由記 今回は、最初にAimerさんのエンディングを作るということで、その打ち合わせからでしたね。実はそのときに、もう本編の音楽の構想がアニメの制作サイドにはあって、「最初の30分はまず音楽はつけないつもりです」と言われたんです。間桐 桜と衛宮士郎の物語を描いている冒頭30分には音楽がなく、物語の世界が変わるところから「ドン!」と音楽を入れたいと仰っていたのが印象的でした。ただ、実際に物語ができてくると、冒頭の日常のシーンでも、少しだけ、あまり不吉なにおいがしない、聞き流してしまえるような音楽を付けたんですけど、後半との落差がすごく効果的で、制作陣が狙った通りのものが出てたかと思います。

Aimerさんが歌われた「花の唄」については、どのような思いで作られましたか?

梶浦 どういう曲にしようかと話していくなかで、須藤(友徳)監督や近藤(光)プロデューサーとも、「今回は(ヒロインの)桜の曲で」という意見は一致していたのですが、特に細かい指定はなくてお任せしていただきました。歌詞には桜の気持ちを書いてみようと思ったんですが、桜ってあまり想いを口にしなくて、第1章の段階では本音を何も言ってない。なので、もう少し桜に思い入れを持って終わってほしいという想いもあって、第1章の内容よりもう少し先のところまで、桜の気持ちを主題歌で言ってしまおうと思いました。普段こういうことはあまり好きではないのでやらないんですけど、あの(1章の)終わり方だと、今回だけはやってもいいかなって。

「その歌をどういうふうに聴かせるか」という意図がないと、人の心には届かない

梶浦さんは、シンガーとしてのAimerさんの魅力をどこに感じていますか?

梶浦 素晴らしく魅力的な声をしていらっしゃるのは勿論ですが、きちんと策略のある歌を歌われる方だなとも感じたんです。歌がどう心に響くかって、演出なんですよね。演出を音に乗せるテクニックは無論必要ですが、「その歌をどういうふうに聴かせるか」という意図がある歌じゃないと人の心には届きませんよね。Aimerさんはその演出がご自分でできる方で、「花の唄」もAimerさんの演出プランで聴かせていただきたいなと思ったので、レコーディングでもほんとにただ聴き惚れていました(笑)。

劇伴には、その「花の唄」のメロディが使われた曲もありました。

梶浦 エンディングを書くときに、ufotableの方からエンディングのメロディを本編にも取り入れてほしいというお話があって。ただ今回は、Aimerさんの声ありきでメロディを作っていったので、BGMとしてどう使うかはあとから考えようと思っていました。結局、電子ピアノでAメロのフレーズを会話劇に使ってみたり、三拍子にしてオペラっぽい歌にしたり、いろんな使い方をして想定以上にあのメロディを劇伴にこっそりと使っています。なので、ご覧になった方は、サブリミナル的に、無意識に「花の唄」のメロディがどこかしらしみ込んでいて、エンディングで歌が始まったときに、ある程度入りやすいのかなと思っています。

ある意味、ヒロインの桜を象徴するメロディでもあると思うので、それが作品の随所に出てくることによって、何の作品かということがおのずと音楽からも見えてくる仕掛けになっているなと思いました。

梶浦 そうなってるとうれしいですね。

でも聴いていて、とにかく今回の劇伴は前半の朗らかな音楽以外は、不安にさせたり不穏にさせるものがずっと通底していて。

梶浦 ほんとにそうですね(笑)。思えば後半にはそういう曲しかないと思います。

最初からそういうオーダーだったんですか?

梶浦 作っていたら自然にそうなっていましたね。士郎が笑って始まるシーンとかはないですから。後半に入るところでガラッと景色は変えたいという話はありましたが、過去のシーンを流すときに「『Fate/Zero』の音楽使った方がいいですか?」と聞いたら、「使ったほうがわかりやすくていいと思います」と言われたので、そこからわかりやすく『Fate/Zero』のテーマを流させていただいたりもしています。

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