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第19回文化庁メディア芸術祭 受賞作品発表。アニメ部門優秀賞に岩井俊二監督

第19回文化庁メディア芸術祭 受賞作品発表。アニメ部門優秀賞に岩井俊二監督

11月26日、平成27年度[第19回]文化庁メディア芸術祭の各賞受賞作品および功労賞の受賞者が発表された。アニメーション部門ではアニメ初監督となった岩井俊二監督の「花とアリス殺人事件」が優秀賞を受賞するなど、例年とは異なる動きがみられた。

 

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文化庁メディア芸術祭は、毎年、アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門において優れた作品を選出して顕彰し、受賞作品の鑑賞機会として受賞作品展を開催する、メディア芸術の総合フェスティバルだ。本年度の作品応募は、世界87の国と地域から4,417作品が寄せられ、その中より厳正なる審査の結果、各部門の大賞、優秀賞、新人賞、さらに功労賞が発表となった。

各部門の大賞には、アート部門に『50 . Shades of Grey』(CHUNG Waiching Bryan)、エンターテインメント部門に『正しい数の数え方』(岸野雄一)、アニメーション部門に『Rhizome』(Boris LABBE)、そしてマンガ部門は『かくかくしかじか』(東村アキコ)が、それぞれ選ばれた。

第19回文化庁メディア芸術祭の贈呈式は2016年2月2日(火)に国立新美術館で開催され、翌日、2月3日(水)から2月14日(日)までの12日間、国立新美術館を中心に、受賞作品等を展示する受賞作品展が開催される。同展では作品の展示や上映、国内外の多彩なクリエイターやアーティストによるシンポジウムやトークイベント、ワークショップ等のさまざまなプログラムを通じ、同時代の表現を紹介する。

アニメ部門大賞は短編アニメ『Rhizome』に

冒頭にも伝えたが、これまで国内外の商業作品が受賞することが多かったアニメーション部門の大賞には短編アニメーション作品の『Rhizome』が受賞するなど、これまでと異なる動きがあった。圧倒的な精密さと極端な構図で展開されるもので、大変クオリティの高い映像ではあるが、これまでであれば、アート部門に出品されていたタイプの作品だ。この他にも優秀賞は短編が大変強く、大勢を占める結果となった。期待されていた劇場アニメーションの『心が叫びたがっているんだ』(長井龍雪/岡田麿里/田中将賀)や『百日紅 〜Miss HOKUSAI〜』(原恵一)、『バケモノの子』(細田守)といった長編作品は審査委員会推薦作品にとどまった。

[3]_アニメーション部門大賞 『Rhizome』 Boris LABBÉ

アニメーション部門『Rhizome(リゾーム)』短編アニメーション Boris LABBÉ(ボリス・ラベ)[フランス]© Sactrebleu Procauction

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ビデオコメントを寄せたBoris LABBÉさん

そうした中、『花とアリス殺人事件』が優秀賞を受賞した唯一の劇場アニメーションとなった。同作は実写のベテラン映画監督である岩井俊二監督の初のアニメーション作品で、岩井監督が2004年に制作した実写映画「花とアリス」の前日譚となるもの。本作は実写版の制作直後より構想が立てられてきたもので、実写版で二人の主人公を演じた蒼井優さんと鈴木杏さんがおなじ役柄のボイスキャストを務めている。

制作には実写で撮影した動画をもとにアニメーションに書き起こす「ロトスコープ」と、セル画で制作されたアニメの質感を追求した「セルルックCG」というふたつの手法を組み合わせたもので、ビデオコメントを寄せた岩井監督が「年齢を考えずに新しいことに挑戦したい」としているとおり、実写監督がアニメを手掛けるだけではない、大変な意欲作と言える。

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アニメーション部門 優秀賞『花とアリス殺人事件』劇場アニメーション(1時間39分) 岩井 俊二(IWAI Shunji)[日本]© 2015 “the case of hana&alice” Film Partners

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ビデオコメントを寄せた岩井俊二監督

 

この他、新人賞には注目される新興のアニメスタジオ、スタジオコロリドが手掛ける『台風のノルダ』(新井陽次郎)などが受賞した。

エンタメ部門はインタラクティブ音楽劇の『正しい数の数え方』に

エンターテインメント部門大賞の『正しい数の数え方』はみずからを勉強家とする岸井雄一さんによる人形劇+演劇+アニメーション+演奏といった複数の表現で構成された音楽劇。同作は、フランス・パリのデジタル・アートセンター「ラ・ゲーテ・リリック」の委嘱作品として制作され、アサヒアートスクエアなどで上演された。批評的であり、実験的でありながら、子どもたちを相手にインタラクティブな交流を促し、演者と観客の動きがステージに反映されるエンターテインメントとして成立している。

登壇した岸井さんは「今回の受賞をきっかけに、世界中をまわって、子ども達に見せたい。会期中には講堂で上演する案もありましたが、小屋を作って、連日公演を行います」とコメントした。

[2]_エンターテインメント部門大賞 『 正しい数の かぞえ方』 岸野 雄

エンターテインメント部門 大賞 『 正しい数のかぞえ方』音楽劇 岸野 雄一[日本]© 2015 Out One Disc

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『正しい数のかぞえ方』はインタラクションなどさまざまな要素を取り入れたエンターテインメントだ。© 2015 Out One Disc

マンガ部門大賞には『かくかくしかじか』が選ばれた。ビデオコメントを寄せた作者の東村アキコさんは「実際に自分が高校生の頃に出会った変わった先生との思い出をそのまま絵にした作品。青春時代にやり残してきた事や、先生に言いたかった事を描いています」と語っているとおり、作者がマンガ家の道をこころざしてきた青春時代の自伝的作品となっている。

また、優秀賞には2013年に第17回手塚治虫文化賞短編賞を受賞した『機械仕掛けの愛』などが受賞した。『機械仕掛けの愛』の作者・業田良家さんが登壇し、「(自分の作品が)美術館に展示してもらえるのがうれしい。何度も見に来ると思います」と喜びを隠さなかった。

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マンガ部門 大賞『かくかくしかじか』東村 アキコ(HIGASHIMURA Akiko)[日本]©Akiko HIGASHIMURA / SHUEISHA

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マンガ部門 優秀賞『機械仕掛けの愛』業田 良家(GODA Yoshiie)[日本]

アート部門大賞の『50 . Shades of Grey』はプログラミング言語を使用したコンセプチュアルなグラフィック・アート作品。作者のCHUNG Waiching Bryanさんが、過去30年間に学んだBASICからActionScriptまでの6種類のプログラミング言語やソフトウェアを用いて、50段階の灰色のグラデーション画像を制作し、その画像を表示するプログラミング言語の文字列を額装して作品としたもの。鑑賞者には灰色のグラデーション画像はそれを生成するための文字列だけが提示される。

[1]_アート部門大賞 『50 . Shades of Grey』 CHUNG Waiching Bryan

アート部門 大賞『50 . Shades of Grey』グラフィックアート CHUNG Waiching Bryan(チョン・ワイチン・ブライアン)[英国]©2015 Bryan Wai-ching CHUNG

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ビデオコメントを寄せたCHUNG Waiching Bryanさん

優秀賞を受賞した『(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合』(長谷川愛)は実在する同性カップルの一部の遺伝情報からできうる子供の遺伝データをランダムに生成し、それをもとに「家族写真」を制作するというもの。社会的に同性婚を認める方向にあり、かつ同性の遺伝子を操作して実際に子をもうける事が理論上可能になってきたいま、タイムリーでもあり、根源的な課題を投げかける作品と言える。同作品は「六本木クロッシング2016」(2016年3月26日〜、森美術館)に出展される予定だ。

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アート部門 優秀賞『(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合』写真、ウェブ、映像、書籍 長谷川愛(HASEGAWA Ai)[日本]©Ai Hasegawa

第19回文化庁メディア芸術祭各賞、受賞作品は以下のとおり。

■アート部門
□大賞
『50 . Shades of Grey』 CHUNG Waiching Bryan
□優秀賞
『The sound of empty space』 Adam BASANTA
『Ultraorbism』 Marcel・li ANTUNEZ ROCA
『Wutburger』 KASUGA (Andreas LUTZ / Christoph GRUNBERGER)
『(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合』 長谷川 愛
□新人賞
『算道』 山本 一彰
『Communication with the Future – The Petroglyphomat』 Lorenz POTTHAST
『Gill & Gill』 Louis-Jack HORTON-STEPHENS

■エンターテインメント部門
□大賞
『正しい数の数え方』 岸野 雄一
□優秀賞
『Dark Echo』 Jesse RINGROSE / Jason ENNIS
『Drawing Operations Unit: Generation 1』 Sougwen CHUNG
『Solar Pink Pong』 Assocreation / Daylight Media Lab
『Thumper』 Marc FLURY / Brian GIBSON
□新人賞
『ほったまるびより』 吉開 菜央
『Black Death』 Christian WERNER / Isabelle BUCKOW
『group_inou 「EYE」』 橋本 麦/ノガミ カツキ

■アニメーション部門
□大賞
『Rhizome』 Boris LABBE
□優秀賞
『花とアリス殺人事件』 岩井 俊二
『Isand (The Master)』 Riho UNT
『My Home』 NGUYEN Phuong Mai
『Yul and the Snake』 Gabriel HAREL」
□新人賞
『台風のノルダ』 新井 陽次郎
『Chulyen, a Crow’s tale』 Agnes PATRON / Cerise LOPEZ
『Deux Amis (Two Friends)』 Natalia CHERNYSHEVA

■マンガ部門
□大賞
『かくかくしかじか』 東村 アキコ
□優秀賞
『淡島百景』 志村 貴子
『弟の夫』 田亀 源五郎
『機械仕掛けの愛』 業田 良家
『Non-working City』 HO Tingfung
□新人賞
『エソラゴト』 ネルノダイスキ
『たましい いっぱい』 おくやま ゆか
『町田くんの世界』 安藤 ゆき

■功労賞
飯村 隆彦(映像作家/批評家)
上村 雅之(ハードウェア開発者/ビデオゲーム研究者)
小田部 羊一(アニメーター/作画監督/キャラクター・デザイナー)
清水 勲(漫画・諷刺画研究家)

このほか、優れた128作品が審査委員会推薦作品として選定された。

オフィシャルサイト
文化庁メディア芸術祭 フェスティバルサイト