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『真・女神転生 DSJ』悪魔と天使と人間が織り成す哲学的SFの世界

『真・女神転生 DSJ』悪魔と天使と人間が織り成す哲学的SFの世界

2009年に発売された『真・女神転生 STRANGE JOURNEY』のシナリオやシステムに大幅なブラッシュアップを行い、異境の地でよりディープな探索を楽しめるようになった『真・女神転生 DEEP STRANGE JOURNEY』(以下、『メガテンDSJ』)。南極に発生した亜空間“シュバルツバース”を舞台にくり広げられる悪魔と天使、そして人間が織り成す物語は、人という存在のありようを考えさせられる、まさに奇妙で奥深い旅となっている。

本稿では、『真・女神転生』シリーズのなかでも異彩を放つSFテイスト全開の世界、『メガテンDSJ』でつづられる悪魔と天使と人間との物語、そして『メガテンDSJ』の世界に生きるキャラクターたちの魅力に迫っていく。

文 / 村田征二朗(SPB15)


丁寧な設定作りが支えるSFテイスト

第1回の記事では、ヘビーユーザーもカジュアルユーザーもディープに楽しむことができる『メガテンDSJ』の絶妙な難度バランス、RPGとしての面白さに触れてきました。今回の本稿では、作中で描かれる世界、そこで紡がれる物語など、タイトル通りストレンジでありながらも『真・女神転生』シリーズらしさを備えた本作の魅力を見ていきます。

『真・女神転生』シリーズは“悪魔召喚プログラム”によって悪魔を使役するという設定があり、言ってみれば悪魔をデータとしてとらえています。その意味で、ある種SFとも言える要素を含んだ作品です。そして『メガテンDSJ』では、主人公たちが科学技術の粋を集めた機能拡張型特殊強化スーツ“デモニカスーツ”に身を包んでいることをはじめ、近未来感や科学要素がふんだんに盛り込まれており、よりSF色が強くなっているのです。

▲こちらがデモニカスーツ。悪魔や天使といった、『真・女神転生』シリーズのファンタジー的なイメージや、従来の日常的な服装をしたキャラクターたちとは真逆をいくデザインに驚いた人も多いことでしょう

上記画像のような燃える戦場が広がっていたかと思えば、別の場所ではショッピングモールのような光景が広がっているなど、南極にあるはずのシュバルツバース内部はまさにストレンジ、奇妙な空間となっています。あらゆる物を飲み込みながら広がり続ける亜空間の謎を解き明かして人類の未来を守るために、調査隊は科学技術を駆使して人類未踏の異境を解析し、踏破していくのですが、この設定がゲームシステムとしてかなり巧妙に落とし込まれているのです。

踏破したマップの地形や仕掛けが自動的に記録されていくオートマッピングや、ダンジョン内にランダムで発生するアイテムの収集というのはダンジョン探索を行うRPGでは定番のシステムです。これらの機能は“ゲーム的なお約束”として作中でとくに説明がされないことも珍しくありませんが、本作ではデモニカスーツの記録機能、調査機能を持ったアプリによるもの、と説明されています。

▲ダンジョン探索中の下画面に表示されるオートマッピング。もはや当たり前の機能ですが、そこにもしっかりと設定を施すことで、作品世界の説得力を高めたものとなっています

ダンジョンものにはつきものである鍵のかかった扉や隠し扉などは本作にも用意されており、これらについてもSF感を演出する設定が施されています。“現地に落ちている鍵を使う”といったファンタジー的なものではなく、シュバルツバースに存在する“フォルマ”という特殊な物質を収集、分析することでデモニカスーツの解析機能などを強化でき、それによって新たな道が開けるようになっているのです。

「設定がそこまで大事なの?」と思う人もいるかもしれませんが、筆者としてはその重要性を強く推したいところです。プレイ中の細かいSFチックな演出があるおかげで、プレイヤーは“人類が大きな謎に科学技術で挑んでいく”という本作の世界を自然に受け入れることができ、物語にもより強く入り込めるのです。

▲マップ上のフォルマを獲得するときの“これぞSF”なスキャン演出もたまりません

▲『メガテンDSJ』ではデモニカスーツのセリフにも音声が入っており、これまたSFらしさをアップしてくれます

いくら魅力的な世界設定であっても、“ゲームだから入っている”というシステム的に処理された部分が見えると冷めてしまうものです。しかし、『メガテンDSJ』では “ゲームシステムとして必要だから入れる”、“ゲームとして当たり前だから説明しない”という処理はせず、システムのひとつひとつに設定が用意されています。だからこそ、プレイヤーは本作のSF感溢れる世界を十二分に楽しむことができるのです。