Interview

4人編成になった新生POLYSICSからアルバムが届いた。結成20周年。進化するその手応えをボーカルのハヤシに訊く

4人編成になった新生POLYSICSからアルバムが届いた。結成20周年。進化するその手応えをボーカルのハヤシに訊く

結成20年目を迎えたポリシックスが大変なことになっている! 
新メンバー、ナカムラリョウ(g,synth)を迎え4人編成になったポリの新作『That’s Fantastic!』は、どこを切っても新鮮な驚きに満ちたアルバムだ。ギターもキーボードも弾けるナカムラの加入によってリズムやアレンジの自由度がぐっと増し多彩になった。ナカムラという新たな刺激を得た彼らは、次々とアイディアが湧いてきて止まらない。「どうせいつもと同じでしょ」とか思ってるあなたにこそ聞いてもらいたい痛快な大傑作だ。絶好調のハヤシ(vo,g)に訊いた。

取材・文 / 小野島大 撮影 / Viola Kam (V’z Twinkle)

そろそろ4人目を入れたら、もっと面白い、楽しいことができるかなって思ったんですね

大変に素晴らしいアルバムですね。久々に「おおっ」と思いました。

マジっすか!おお〜嬉しいなあ。

新メンバーのナカムラリョウさんが加入しての初アルバムなんですが、そもそも新メンバーを入れるという構想はいつごろから?

1年半ぐらい前かなあ。カヨが卒業して以来、3人でもう7年ぐらいやってきたんですけど、自分がギター弾いて歌うと、マイクスタンドの前から離れられないでしょ。もっと自由にできればいいなと思い始めたのね。ここにもう1人メンバーがいたら、もっと自由にパフォーマンスできて、面白いことができるかなと思った。あと、3人体制でアレンジを考える時に、シンセのフレーズとか全部打ち込みでやってたんですけど、そこも手弾きにすると、より「バンド感」みたいなのが出るよな、と思ったのもあります。

なるほど。

あと、今年出した『Replay!』というリテイク・ベスト・アルバムに収録した新曲の「Tune Up!」のアレンジを考えてる時に、ツイン・ギターのアレンジが湧いてきたのね。ここでもう1人ギターとシンセを弾ける人が入ったら、もっと面白く楽しいことができだろうなって思ったんです。曲作りをやるにも、もう1人いたらいいなと思うようになって。

でも7年も3人体制でやってきたわけですよね。なぜ今になってそう思うようになったんですか。

そこは……最近になって自分のやりたいことがどんどん広がってきたというのが大きいかな。前は4人でずっとやってきて、カヨが卒業して、その時は代わりのメンバーをすぐ入れるという気にはならなかったんです。彼女のあとに誰が入ってもしっくりこないと思ったし。それで3人でできることを考えようってずっとやってきたんだけど、そろそろ4人目を入れたら、もっと面白い、楽しいことができるかなって思ったんですね。

なるほど。

でも新メンバー入れたいって言っても、そう簡単に見つかるわけないじゃない。ギターとシンセ弾けるような人を探したけど、なかなかいない。そうするうちギターとシンセって限定するから見つからないんじゃないか、もっと幅広く自由な発想でメンバー探したほうがいいじゃないかって迷走し始めて(笑)。トロンボーン入れたらいいんじゃないとか、もうひとりドラム入れてヤノとツイン・ドラムにしたらいいんじゃないかとか提案した時は、さすがにメンバーから不安がられましたね(笑)。

オレがナカムラ君を誘ったのは、焼き直しじゃなく新しいポリシックスを作りたかったのね

ハヤシ(G,Vo,Syn,Programming)

そこでナカムラさんに出会った。

実は13年ぐらい前に彼がヴォーカルギターやってたthrowcurveというバンドとポリが対バンして。その後も節目でポリのライヴを見にきてくれたんです。でも特に親しくなるわけでもなく、連絡先も知らなかった。それが去年の8月に偶然再会して。彼はギターもシンセも弾けるし曲も作れる。これは新メンバーにアリかもな、とビビッときて。それで何度か飲んで人間性を探ったりして。

彼にしようと思った決め手はなんですか。

決め手はね……彼に新メンバー云々の話をする前に、まずはデータをやりとりして曲を作ってみようって提案したんです。オレが投げたアレンジに対してどんなものが返ってくるかなと。そうしたら、自分が投げたタマを面白い形で打ち返してくれる。これはいいなと思い、次はポリでスタジオに入ってセッションしてみたんです。今作の「Pretty UMA」や「Sea Foo」みたいな、ヘンテコなニュー・ウエイヴ・ファンクみたいな曲を一緒にやったら、今までにないアプローチでギター・フレーズとかを考えてきてくれた。すごく新鮮で面白かったので、これは一緒にやってみたらいいんじゃないかと思い誘いました。

彼にとってみたら、自分のバンドをずっとやってきて、ここにきて人のリーダー・バンドに入るのは少し考えるところもあったんじゃないでしょうか。

うん、そうだと思います。長いこと自分がリーダーとしてバンドやってきたのに、今更20年もやってるバンドに入るのはどうなの、って訊いたことがあって。オレがナカムラ君を誘ったのは、焼き直しじゃなく新しいポリシックスを作りたかったのね。彼が今まで培ってきた経験を活かせば面白いことができるんじゃないか。それを彼はわかってくれて。自分が入ることで新しいポリシックスができるならぜひ、と言ってくれたんです。彼はサポートの仕事も一杯やってるし、曲提供もしてるけど、やっぱりバンドをがっつりやりたい思いもあったみたいだし。

誰かの穴を埋めるんじゃなく、新しく加わるわけだから、何か新しいものを出さないとバンドに入ってもらう意味もない。

そうですね。曲作りで自分が想定してないものが彼から返ってくるのは刺激的だったしね。これは面白いことになりそうだという手応えはありましたね。

たとえばハヤシ君が巻上公一さんからヒカシューに誘われたり、平沢進さんからP-モデルに誘われたりしたら、けっこうなプレッシャーでしょう?

 (笑)そうですよねえ。もちろん彼もプレッシャーを感じてたみたいで。3人体制のポリシックスを見た時、ものすごく完成されてて、あのテンポでここまでタイトにかっちり演奏できるバンドはほかにない、自分が入ったことでポリの演奏が下手になったように見られたりするのはイヤだ、と思ったみたい。気負いがハンパなかったって言ってましたね。

平日は4人でレコーディングやって、週末は3人でフェスに出る、みたいな(笑)

ナカムラリョウ(G,Vo,Syn)

3人でかっちり組み上がってる楽曲に、プラスアルファで新しい要素を加えるのはけっこう大変だと思うんです。新しい曲なら最初から4人で演奏することを前提としてるから問題ないけど、3人で既に完成されてる曲を、イメージを大きく変えず、かつ新メンバーを加えた必然性を感じさせるようアレンジを作り替えるのは。

そこはほんと大変です。未だに苦労してる。3人体制の曲を4人でやるのは大変。カヨ時代の曲なら、シンセをギターに置き換えたりすればいいけど、3人体制の曲は、3人でシーケンスとバンドががっちり組み合わさってアンサンブルになってたから。それを一旦バラバラにして削ってシーケンスを組み直して、どう乗せるか。ものすごい考えましたねえ。そこはもう全員でアイディアを固めていって。

それは自分にとって面白い作業でした?

面白いですねえ。大変だけど。ハハハ!それで曲の聞き所が増えて面白くなっていくのは嬉しかった。たとえば「How are you?」(『eee-P!!!』2010年)で、オレとナカムラ君がギター・バトルしたりね。そういうのは今までなかったし。完成するまで何度もバンドでアレンジして、そうじゃないよね、もっと面白くなるよねって話をして。大変だけど楽しい。

新メンバー加入を公表する前は、3人ポリシックスのライヴ活動をやりながら、新体制ポリシックスのレコーディングとかアレンジ固めを、並行してやってたってことですか。

そうですそうです。夏にレコーディングしてたんで、平日は4人でレコーディングやって、週末は3人でフェスに出る、みたいな(笑)。4人のライヴリハもやりつつ3人のライヴリハもやって(笑)。頭がけっこうこんがらがりましたね。

じゃあ彼が入ることでバンドにも大きな刺激になった。

ああもう、めちゃくちゃありますね。すべてにおいて。曲作りのアイディアや幅が広がったのもそうだし、ライヴでの制約がなくなってのびのびとパフォーマンスできるようになってるし。ツインギターのバンドをやること自体、オレは初めてなんですよ。たとえば「XCT」みたいな初期の曲をツインギターでやるのが最高に面白い。デイヴ・グレゴリーのいたころのXTCみたいじゃないか、とひとりで興奮したりして(笑)。

「おお、これは新しいんじゃないか!」って手応えがあって。ビート感だったり雰囲気だったり

フミ(B,Syn,Vo)

なるほど。新作の話に移りますが、1曲目のアルバムタイトル曲「That’s Fantastic!」がめちゃくちゃ刺激的で新鮮で、新生ポリシックスの面白さを端的に象徴する曲だと思います。このファンキーなノリはさっき話に出た、「Tune Up!」という曲がきっかけになっているのではないかと。

うん、うん

この曲はハヤシ君とナカムラさんの共作となってます。彼のこの曲への貢献とは?

もともとこの曲の青写真的なものをオレが作ってて。もっとカオスだったの、デモは。もっとサンプリングがバンバン入ってて、ごちゃごちゃしてる感じだったのね。ナカムラ君と話してて、自分の中では出し切っちゃってアイディアないんだよって言ったら、彼が「ちょっとやってみたいことがある」って言って、ウチに来てアイディアを出し合いながら曲にしていったんです。もっとベースメント・ジャックスみたいなベースが絡ませて、とか。ここをマシン・ヴォイスにしよう、とか。もっとヴォーカルが多かったんだけど、”That’s Fantastic!”だけ言いまくってる感じでもいいかも、とか。お互いアイディアを出し合って形にしていった。ナカムラ君がそういうギター弾くならオレはこう弾こうかな、とか。そうやってデモができて、バンドでやったら「おお、これは新しいんじゃないか!」って手応えがあって。ビート感だったり雰囲気だったり。なのでほんと、2人が通ってきた音楽のアイディアを出し合って新たに作った感じでしたね。

ナカムラさんの、ハヤシ君にはない部分とは?

ブラック・ミュージックのへの造詣かな。そこの引き出しはすごくあって、オレより全然詳しい。オレはトーキング・ヘッズみたいな、ブラック・ミュージックに影響を受けたニュー・ウエイヴみたいなものが好きだから。ア・サートゥン・レイシオとかジェイムス・チャンスとか、ああいうギクシャクしたものが好きだけど、彼はもっとルーツ的なものとかクラブ・ミュージック寄り、ハウス的なものも好んで聴くので、その両者のアイディアみたいなものがうまく融合した感じに仕上がったと思うんです。

特にリズムがこれまでのポリにはない感じで、そこはフミちゃんとヤノ君の貢献も大きそうですね。

うんうん、もちろん。そこはもう、あの2人のリズムへの信頼みたいなものはすごくありますね。ただヤノはそれまでマシンのようなビートを叩くのが得意だったんで、「ルンバルンバ」みたいな跳ねるビートや「Shut Up Baby」みたいなレゲエっぽいリズムは最初ちょっと苦労してたけど、結果的にはすごくいいテイクがとれた。

やっぱりリズムですよね。今回ビートでいろんなことをやりたいと思ったんですよ

ヤノ(Dr,Vo)

ほかにアルバムのキーとなる曲はどれでしょう。

「That’s Fantastic!」はわりと最初の方にできたんですけど、「Shut Up Baby」「Cock-A Doodle-Doo」が最後の方にできて、それでアルバムの全貌が見えた感じですね。それまではどういうアルバムになるか最後の最後まで見えなかったんです。やっぱりリズムですよね。今回ビートでいろんなことをやりたいと思ったんですよ。ポリの得意とするBPMが速くてものすごい情報量の詰まったニュー・ウエイヴ・パンクみたいなものじゃないところで、ポリっぽい部分を出せないかなと思って、ビート面でいろんなことをやってみたんだけど、まだ行ける、まだ足りないってずーっと試行錯誤して。みんなから「まだ行けるだろハヤシ!」って言われて(笑)。自分でももっと行けると思ったし。もっと新しいポリができそうな予感があった。新体制のポリシックスのアルバムとして、これじゃちょっとぬるいんじゃないかと思ってやってたら、最後の最後に「Shut Up Baby」「Cock-A Doodle-Doo」ができて、さらに多彩で新しいビートを取り入れたアルバムになりましたね。あのリズムが入ったことで、わかりやすいアプローチになったんじゃないかと。

ナカムラさんという、キャリアとスキルがあって、しかもハヤシ君とは少し違う感覚をもった音楽家が加入することで、ハヤシ君のいろんな部分が刺激されて活性化して新しい感覚が開いてきたという印象を持ったんですよ。なのでこれまでのポリに近い曲調であっても新鮮に聞こえる。

ああ〜〜〜それはあるかもしれないな〜自分だけなら「Shut Up Baby」みたいな曲は作ろうと思わなかったかもしれないね。ああいうレゲエ/ダブっぽい曲。デモの段階でナカムラ君から「こういうギターを入れてみた」とか「こういうシンセを入れてみた」って、早い段階でレスポンスが返ってくるんですよ。それも大きかったかもしれないね。お互い同じシーケンス・ソフトを使ってるので、データのやりとりでアレンジを考えることができたのも大きくて。「Shut Up Baby」とか、彼が早い段階でシンセのダビングとかしてくれて、バンドでスタジオに入る前に具体的に世界観が固まってたんですよね。それも大きかったな。

こいつがいるならここまでできるとか、こいつがいれば今までやってなかったこともやれる、という手応え。

あったかもしれない。今話してて思ったけど、ポリ入る前に一番最初にやったデモで、オレがこういうタマ投げたら彼がどう返してくれるだろうなってワクワクする期待する気持ちは、未だにあるかもしれない。

今、アイディアが湧いてきて止まらない状態なんじゃないですか。

うん、このままやっていったら、どんどん面白そうなことができそうな予感はありますね。

もっと面白いアイディアを考えなきゃいけないし、もっと刺激的なライヴにしていかなきゃいけない

ポリらしさを保ちながらこれほど新鮮なものを作れた。今後の伸びしろも大いにありそうですね。こういう言い方は誤解を招くかもですが、バンドの寿命が伸びた感じ。

おお〜〜それは嬉しいなあ。それは結構意識しましたね。『What‘s This???』(2016年)で、ポリの得意とする形をガツンと出せたから、それと同じことをしたくないっていうのがまずあった。みんながイメージするポリシックスを更新してくのも大事なんだけど、それ以上にやりたかったのは、自分がバンドとしてまだまだ行きまっせという姿勢の部分だったり、まだまだこれから面白いことやってくよっていう意欲が伝わらなきゃダメだなと思ってたんですね。今年20周年でいろいろ過去を振り返ることも多かったんですけど、そこで落ち着いてしまうんじゃなく、もっと面白いアイディアを考えなきゃいけないし、もっと刺激的なライヴにしていかなきゃいけない。それを繰り返していって、何年かたってまた振り返ってみて、オレたち面白いことやったねって思えるような、そういう活動ができればいいなと思います。

その他のPOLYSICSの作品はこちらへ

ライブ情報

結成20周年記念TOUR “That’s Fantastic!” ~Hello! We are New POLYSICS!!!!~

2018年1月11日(木) 千葉LOOK よりスタート!
そのほかの詳細はhttp://www.polysics.com/live/

POLYSICS

ハヤシ(G,Vo,Syn,Programming)、フミ(B,Syn,Vo)、ヤノ(Dr,Vo)、ナカムラリョウ(G,Vo,Syn)。
1997年、アメリカのNew Waveバンド“DEVO”に憧れたハヤシが高校生の時に結成。バンド名の由来は、KORGのシンセサイザー“POLYSIX”から。全員揃いのツナギにバイザーという奇抜な出で立ちに加え特異なパフォーマンスと、爆音ギターとシンセやヴォコーダーなどのコンピューターミュージックを融合させた唯一無二のサウンドで一躍注目を浴びる。1999年にアルバム『1st P』でインディーデビュー。

2000年にはマキシ・シングル『XCT』でキューンレコードからメジャーデビュー。
2003年にはアメリカで『NEU』をリリースし海外での活動を本格化。毎年コンスタントにツアーを行い、海外ライブのトータル本数は250本以上。国内外合わせて年間100本以上のライブを行い、認知度も高まる。
2010年3月、メジャーデビュー10周年を記念し、日本武道館にて初ワンマンライブを開催。このライブをもってVo.,シンセサイザーのカヨが卒業、バンドは活動休止に入る。
2010年8月、ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2010のGRASS STAGEに、ハヤシ・フミ・ヤノの3人体制のPOLYSICSとして登場。新たなスタートを切る。
2012年3月3日、SHIBUYA-AXでのワンマンライブにて通算1000本目のライブを迎え、続く3月4日のワンマンライブでは15周年を迎えた。
2015年に2日で100曲演奏するというライブ「ウルトラチャレンジ OR DIE!!! ~燃えろ!クアトロ地獄!2日で100曲カブリ無し!!!~」を決行、さらに翌2016年には1日で100曲ライブ「20周年まであと1年!!! ~まだまだやるで無茶なこと!!! 1日100曲かましたる!!!~」を開催するなど、振り切ったライブで話題となる。
2017年3月、豊洲PITにて開催されたワンマンライブ「20周年 OR DIE!!! All Time POLYSICS!!!」にて20周年を迎えた。
10月14日TSUTAYA O-EASTにて開催された<POLYMPIC 2017 FINAL!!!!>から新メンバーであるナカムラ リョウ(Guitar,Voice,Synthesizer)を迎え、4人体制となる。
11月29日に通算15枚目となるフルアルバム『That’s Fantastic!』をリリース、2018年には、全国22か所をまわるツアー<POLYSICS結成20周年記念TOUR“That’s Fantastic!”~Hello! We are New POLYSICS!!!!~>を開催予定。

オフィシャルサイトhttp://www.polysics.com