【80年代名鑑】明菜からYMOまで 80'sからの授かりもの  vol. 48

Column

ブ-ムを越えて、いきなり“社会現象”となったチェッカーズ

ブ-ムを越えて、いきなり“社会現象”となったチェッカーズ

1984年。いきなりチェッカーズは、「社会現象」となる。よく語られる事だが、当時の人気音楽番組『ザ・ベストテン』に、デビュー以来のシングル3曲が、すべてチャートインしたのである。まさに前代未聞。彼らの勢いは、もはや誰にも止められなくなった。

5月17日のことだ。しかも次の週もその次の週も3曲入っている。そして5月31日。「涙のリクエスト」(5位)「ギザギザハートの子守唄」(6位)を従え、1位に輝いたのが「哀しくてジェラシー」だった。引き続き、売野・芹澤コンビの作品だが、テイストは少し違う。60年代の日本のGS風であり、荒木一郎の「いとしのマックス」あたりを彷彿させる雰囲気もあった。でも、さすがの彼らもピーク(頂上)がきたら、あとは下山するのみ……、というのが普通だが、さらにその勢いは、尾根のように続いていくのだった。

4枚目のシングルが「星屑のステージ」(84年の8月23日リリース)。シングルとしては初のバラードであり、アーティストとしての真価が問われた(なぜか昔から、バラードだと、そう言われる)。でも、よくぞここまで名曲が続くと、周囲を驚かせるクオリティなのだ。

売野の歌詞が、実にドラマチックである。編曲も、サックスなどの煽りもあるが、展開してく、というより、一定の気配をずっと伝えてく印象だ。演劇の舞台では、背景となる“書き割り”が重要だが、この歌の場合、編曲が終始、星屑を表わす“音の書き割り”として、眼前に展開するかのようなムードを醸している。

久しぶりに聴いて、「こんなに胸に迫る楽曲だったっけ…」と、改めて感じ入ってしまった。その際、非常に重要なのが、藤井フミヤの歌の“聞え方”だ。内面にあるものも含め、表現しようとしている。そこが今までと違う。例えば「涙のリクエスト」の場合、主人公の心情を、クリアに伝えるためのボーカルだ。「星屑のステージ」は、まったく違う。録音の仕方もあるのだろうけど、二つの方角に向け、同時に歌っているような、そんな含みのある“聞え方”なのだ。では、二つの方向とはなにとなにだろうか。

とあるバンド・マンが、今は亡き恋人に向け歌っているという、そんなシチュエーションの歌である。ただ、よりオプチミストな聴き手なら、離れ離れになっただけで、いつか再会できると、そう信じて歌ってる…、という受け取り方をするかもしれない。その場合、“星屑のステージ”という表現が、“乙姫~彦星”系の言語として響くことだろう。

しかしここでは、順当な解釈のほうで進める。さっきの“二つの方角に向けて”だが、ひとつはもちろん、天国の彼女へ向けて、である。伸びやかなフミヤのボーカルが仰角をまとい、彼女へ届けと響き渡る。でも同時に主人公は、自分を慰めるために歌っているようにも聞える。この場合、声がまとうのは、その反対、俯角、だろうか…。こちらの涙腺を刺激するのは、むしろ彼の声のなかの、後者の成分、なのである。
 
この年の12月にリリースされた、彼らのセカンド・アルバム『もっと!チェッカーズ』には、ロックンロ−ルを中心に、幅広い音楽性が展開されている。高杢が歌う「スノー・シンフォニー」は、60年代初頭のスウィートなティーンズ・ポップ風。藤井兄弟の作品で、尚之が歌う「Lonely Soldier」は、60年代後半の、若者の問題意識が高まった時代のフォ−ク・ロック調でもある。

こうして幅広さを見せつつも、ドゥーワップが得意の彼らが、その本領を発揮したのが「Jukeboxセンチメンタル」だ。 クリスマスの歌。いまの季節にもピッタリだ。

今回は最後に、彼らの音楽的ルーツを示す記事をみつけたので、引用・紹介させて頂く。『MUSICSHELF』というサイトに掲載されていた「”藤井フミヤ”ができるまで」というコラム(彼のインタビュー)だ。ちなみに、フミヤが初めて音楽をやろうと思ったキッカケは、「キャロル」(矢沢永吉などがいた、伝説のR&Rバンド)だった。日本におけるフィフティーズ・リバイバルにも寄与したバンドだ。その後、彼は、チェッカーズはどうしたのか? 以下、その証言である。

シャナナを聴き始めて、いろんなロックンロールにつながっていく。シャナナはコーラスの上手さに惹かれたな。『グリース』(映画)に出てくるじゃん?
あれで動くシャナナを初めて見た。シャナナのカバーをやるロックンロール・バンドを高1で組んだね、先輩たちと。たまにリードをとるサイド・ボーカルだった。で、これのオリジナルは何だ?ってことになって、『アメリカン・グラフィティ』のサントラ盤とかを聴き始めて、本格的にロックンロールのルーツに入っていった。そこからドゥーワップにはまっていく。それがチェカーズの起源。

いやはや、素晴らしいではないか。“これのオリジナルは何だ?”って遡って興味を満たしていくあたりが素晴らしい。こういう若者は、文化を系譜的に捉え、そのなかに自己のオリジナリティを育むことが出来る。

さて次回は、彼らが登場した文化的背景なども探っていくことにしたい。キーワードは「フィフティーズ・リバイバル」、「DCブランド・ブーム」、「ニューウェイヴの台頭」、などである。

文 / 小貫信昭

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