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劇団番町ボーイズ☆が『クローズZERO』を初舞台化。この場所でたしかに生きていた──その証を残す、彼らの熱き戦い

劇団番町ボーイズ☆が『クローズZERO』を初舞台化。この場所でたしかに生きていた──その証を残す、彼らの熱き戦い

個性派演劇集団・劇団番町ボーイズ☆が、2007年に大ヒットした映画『クローズZERO』を舞台化した劇団番町ボーイズ☆第10回本公演 舞台『クローズZERO』を、11月30日~12月3日にCBGKシブゲキ!で上演した。

取材・文 / 松浦靖恵

誰かのために一生懸命になれる愛すべきヤツらがいた

高橋ヒロシのマンガ『クローズ』を原作とし、コミックで描かれた物語の1年前をオリジナルストーリーで映像化した実写映画『クローズZERO』が公開されたのは2007年。観客動員数190万人、興業収入25億円を超える大ヒット作として、今もなお多くの人の記憶に残っている大人気作品が、10年の時を経てついに初舞台化された。

『クローズZERO』の舞台は、腕に覚えのある猛者ばかりがいる不良高校・鈴蘭男子高校。ステージ上には「ケンカ上等」「押守」「夜露死苦」など、乱暴に落書きされた壁があり、ここが彼らの居場所である鈴蘭男子高校だということがすぐにわかった。

物語はヤクザの矢崎丈治(伊﨑央登)がチンピラの片桐拳(いとう大樹)を銃で撃つシーンから始まるのだが、この場面から一気に物語の時間軸は鈴蘭高校の入学式当日へと過去に遡り、一匹狼的な存在の滝谷源治(松本大志)が中心となって結成されたG.P.S、百獣の王の異名を持つ芹沢多摩雄(堂本翔平)や辰川時生(藤岡信昭)が率いる芹沢軍団、海老中トリオ、ライダージャケットに身を包んだ武装戦線など、悪くてカッコいい“悪メン”の不良グループたちが、鈴蘭のテッペンを取るために激しい争いを繰り返していく。

2時間半という限られた上演時間の中で、登場人物たちの性格やキャラクターの違い、それぞれが抱えている想いを鮮やかに浮かび上がらせたのは、脚本と演出を手がけた山田能龍(山田ジャパン)。

たったひとりで多勢と戦おうとしていた転校生の滝谷(松本)に、うだつの上がらないチンピラ・片桐(いとう)が「何をやっても中途半端な俺が、何か変われるんじゃないかって。根拠のない予感だけど、俺にはおまえが必要なんだ」と告げたとき、照れながらも「保証しねえぞ」と、いきがっていた滝谷が笑顔になったシーンは、出会ったばかりの2人の間に、誰かに必要とされることや必要だと思える人がいること、そして、自分以外の誰かに喜んでもらえることが、生きる糧になるのだということを、そのワンシーンだけでも十分に伝えてきた。

また、芹沢軍団の頭・芹沢(堂本)とナンバー2の辰川(藤岡)は、言葉を多く交わさずともつねにそばにいる存在だが、辰川が病を患っていることを知った芹沢は「今を真剣に生きる」ということの本当の意味を知っていくのだ。

矢先組の組長・矢崎丈治を演じたのは、原作映画『クローズZERO』で芹沢軍団の“極悪ツインズ”の三上豪役を演じていた伊﨑。今回はヤクザの組長役ということでケンカのシーンはなかったが、彼が演じた矢崎の威圧感のあるたたずまいや感情をほとんどあらわにしないクールな表情は、エネルギーに満ち溢れた不良高校生たちがいる青くさい世界とは対極にある大人の世界、理不尽な社会をも浮かび上がらせた。

また、チンピラの片桐を演じたいとう大樹は、大人になりきれない大人という立ち位置にある揺れ動く心模様を、時に涙を流しながら白熱した演技を見せた。さらに“大人組”のひとりであるモロ師岡は、滝谷源治の父親でヤクザの組長役として登場。モロは登場時からコミカルな動きやアドリブを連発するのだが、その様子は若手俳優たちとの共演を心から楽しんでいるように見えた。モロ師岡のアドリブ以外にも、「男子ってホントにアホだよな~」なんて女子が思ってしまうような行動やセリフのやりとりが盛り込んであったり、演者は男性しかいないため、合コンシーンでは演者が女子姿で出てきたりと、バトルシーンが多いこの物語の中に放り込まれた笑える場面は、観客のみならず、一瞬でもタイミングを間違えれば怪我をしかねない本格的なアクションに挑戦している若い演者たちの張り詰めた緊張感をほぐす役割りも担っていたのではないだろうか。

くだらない会話で思いっきり笑ったり、同じような日々を繰り返しながら生きている彼らの姿が、時に切なく思えたのは、大切な仲間と出会えた鈴蘭高校を卒業していく日が近い将来に訪れるからだ。卒業すればヤクザになるヤツもいるだろう。就職をし、結婚をし、父親になるヤツもいるだろう。この場所から離れたら別々の人生が待っていることも、鈴蘭のテッペンを取ったって、決着をつけたところで、自分たちが高校を卒業すれば新しいヤツらがまたテッペンを取るために現れ、そしてまた消えていくことも、彼らは十分にわかっている。けれど、彼らは拳を交え、真剣に戦い合い、戦うことで相手を知り、自分と向き合い、そして、自分がたしかにこの場所で生きていたんだという証を残すための戦いをしていた。映画版を観て、この物語の展開や結末がわかっている人たちも、『クローズZERO』初心者の人も、そんな彼らの熱くて青くさい青春にグッときてしまったはずだ。

血気盛んな鈴蘭男子校の猛者たちを演じた若手俳優たちは、舞台狭しと走り、動き、最後には力尽きてしまうのではないかと思えるほど迫力満点のバトルシーンを作り上げ、彼らの心臓の高鳴りが客席まで届くのではないかという思えるくらいの激しいアクションを見せた。また、芹沢軍団とG.P.Sのメンバーが見守るなか、ボディに当たる拳の音や激しい呼吸が客席まで聞こえてきた滝谷と芹沢の緊張感のある一揆撃ちは圧巻のひと言だった。

滝谷と林田恵(松島勇之介)が対峙するラストシーン。それは滝沢が一段と高く飛びあがり、林田に向っていくシーンで暗転になり、この物語はそこで終わった。その瞬間から、この物語の続きが知りたい、登場人物たちのその後を知りたいと思った。きっと、この舞台に参加した俳優たちも、舞台『クローズZERO』を何度でもやりたいと心から思ったことだろう。この物語には誰かに必要とされる喜びを知り、誰かのために一生懸命になれる愛すべきヤツらがいた。その愛すべきヤツらを懸命に演じ、登場人物に新たな息吹を吹き込んだ俳優たちに、拍手を送りたい。

公開ゲネプロ後に囲み取材も行われ、キャストを代表して松本大志、堂本翔平、二葉勇、伊﨑央登、モロ師岡が登壇、心境を下記のように述べた。

稽古場の雰囲気は男子校みたい。このカンパニーだからこそ創り上げられた

松本大志〈滝谷源治 役〉
ゲネプロで実際にお客さんが入ってみて、全然違いました。笑いどころでお客さんの反応があるので、気持ちもすごくノリます。最後のほうで体力が尽きてくるなかでも、いかにどう立ち回りができるかを考えられましたし、今、達成感がすごくあります。稽古場の雰囲気は男子校みたいで、言い合うところは言い合え、たくさんの刺激がありました。このカンパニーだからこそ創り上げられたと思います。また、芝居だけでなくアクション、笑いのシーンにも注目して欲しいです。千秋楽まで怪我なく、全力で取り組みます。ぜひ、劇場に観に来てください!

堂本翔平〈芹沢多摩雄 役〉
稽古場で客演の先輩方は、前日にもらった台本でも次の日には台本を持っていなくて、僕も負けないように頑張ろうと思いました。また、稽古の中で、ディスカッションもできるようになり、やっと言い合える仲になったんだなと実感しています。この作品の殴り合いは憎しみではなく愛のある殺陣になっていて、戦うということよりも、純粋に楽しんでいる感じです。稽古は大変でしたが、そのつらさを上回る楽しさを感じることができました。今日はお客さんの生のリアクションを実際に肌で感じることができ、良かったです。怪我なく最後まで頑張ります!

二葉勇〈戸梶勇次 役〉
今日のゲネプロで、皆の熱量が倍にはなったと思います。初日に向けての緊張感は増していますが、舞台の上で役としてちゃんと生きることができるようになったと思います。僕たちは普段喧嘩しないんですよ(笑)。今回の喧嘩のアクションは、ヒーローショーとはまた違った熱量があり、本気で当てるところがあるので、服を脱ぐと実際にアザができているんです。本当の痛みを知っていますし、劇中で胸ぐらをつかまれるシーンでは、瞬間的にちょっとイラっとするんですが(笑)、それもお芝居の糧にしています。

伊﨑央登〈矢崎丈治 役〉
(組長役なので)僕には喧嘩のシーンは全然ないのですが、演じてみたいなと思いました。千秋楽まで『クローズZERO』の世界をきっちり表現したいと思います。僕は映画にも出演させていただいたのですが、そのときに監督は、僕に自由に演技をさせてくださいました。なので、稽古場では皆にも自分なりに考えてやってみるようにとアドバイスしました。僕は大人組、だそうで(笑)、劇団番町ボーイズ☆とは第3回本公演以来の共演となりますが、皆の成長が見えたのが嬉しかったです。そんなところにも注目していただければと思います。

モロ師岡〈滝谷英雄 役〉
若い子がいっぱいだったので稽古開始前にはイジメられたらどうしようかと思いました。モロ!とか呼び捨てにされたらどうしようか、稽古場で靴に画鋲入れられたりしないかな、とか(笑)。いろいろと心配していたんだけど、でも実際には皆さんとても真面目でいい子ばっかりで、稽古中もダメ出しするようなところは全然なかったんです。劇団番町ボーイズ☆というカンパニーには、計算ではできない若い子たちのパワーというか、怖いもの知らずなところに加えて、魅力溢れる人ばかりの劇団だなと感じています。僕は暴力シーンもたくさんあるのですが、演技とはいえ変なものは掴まないようにしています(笑)。

劇団番町ボーイズ☆第10回本公演 舞台『クローズZERO』

2017年11月30日(木)~12月3日(日)CBGKシブゲキ!!
原作:映画「クローズZERO」(©2007 髙橋ヒロシ/「クローズZERO」製作委員会)
脚本・演出:山田能龍(山田ジャパン)

出演:
滝谷源治 役:松本大志(劇団番町ボーイズ☆)
芹沢多摩雄 役:堂本翔平(劇団番町ボーイズ☆)
伊崎 瞬 役:坂田隆一郎(10神ACTOR)
牧瀬隆史 役:三岳慎之助(10 神ACTOR)
辰川時生 役:藤岡信昭(ハルク・エンタテイメント)
戸梶勇次 役:二葉 勇(劇団番町ボーイズ☆)
田村忠太 役:コーシロー(ハルク・エンタテイメント)
三上 学 役:千綿勇平(劇団番町ボーイズ☆)
三上 豪 役:安井一真(劇団番町ボーイズ☆)
筒本将治 役:菊池修司(劇団番町ボーイズ☆)
阪東秀人 役:鶴田亮介(劇団ヘラクレスの掟)
千田ナオキ 役:砂原健佑(劇団番町ボーイズ☆)
山崎タツヤ 役:西村涼太郎(ステッカー)
桐島ヒロミ 役:籾木芳仁(劇団番町ボーイズ☆)
本城俊明 役:木原瑠生(劇団番町ボーイズ☆)
杉原 誠 役:織部典成(劇団番町ボーイズ☆候補生)
林田 恵 役:松島勇之介(10 神ACTOR)
田村 保 役:西原健太(劇団番町ボーイズ☆)
真中トオル 役:矢代卓也(劇団番町ボーイズ☆)
黒岩義信 役:ただのあさのぶ(山田ジャパン)
矢崎丈治 役:伊﨑央登
片桐 拳 役:いとう大樹(TEAM-ODAC)
滝谷英雄 役:モロ師岡

オフィシャルサイト

関連書籍:コミック『クローズZERO』

コミック「クローズZERO」1巻
著者:内藤ケンイチロウ、高橋ヒロシ、武藤将吾
出版社:秋田書店