Interview

aiko 新作は「底抜けに元気になれる曲」。最強のハッピー・ソングを生み出したストーリーと紡いだ作品への想いを訊く。

aiko 新作は「底抜けに元気になれる曲」。最強のハッピー・ソングを生み出したストーリーと紡いだ作品への想いを訊く。

約1年2ヵ月ぶりとなるニューシングル「予告」をリリースしたaiko。自らを底抜けに元気にするために、そして聴き手の感情をハッピーなものとするために紡がれたという表題曲は、すべての人にとっての道しるべとなり得る最強の仕上がりとなった。彼女が本作に封じ込めた想いとは? カップリングに収録される「間違い探し」「月が溶ける」といった2編の名曲についての話題も含め、たっぷりと話を聞いた。

取材・文 / もりひでゆき

毎日ずっと音楽のことを考えて生きてこられたことはすごくありがたいなって思います

約1年2ヵ月ぶりのニューシングルがリリースされました。

久しぶりになりましたね。ただ、その間にたくさんのライブをやらせてもらっていたので、来てくれたみなさんのおかげでモチベーションは保つことができていて。これまでと同様に、毎日音楽のことを考えて生きてこられたことはすごくありがたいなって思います。

曲作りは継続的に行っていたんですか?

はい、ぼちぼちやってました。自分にはまだ掘ってないところがあるんじゃないか、そこを掘ってみたらまた新しいタイプの曲ができるんじゃないか、みたいな気持ちで作ってましたね。昔はね、「ここで寝たら死ぬ!」くらいの気持ちでうわーっと必死で作り続けてたところがあったんですよ(笑)。とにかく曲を書かないといけないんだって毎日思って、生きていたというか。でも最近はちょっと息抜きすることもできるようになったところもあって。より楽しみながら曲作りできるようになってたと思います。

「予告」はいつ頃できた曲なんでしょう?

はじめのワンコーラスができたのが去年の末か今年の頭やったと思います。その時期は精神的に堕落しすぎて、「こんなんでいいんかな?」って常に思ってる状態で。動き出そうと思ってもその原動力がそのときの自分にはなかったというか。そんな状況を抜け出すために作ったんです。まず自分自身が底抜けに元気になれる曲、そして聴いてくれた人も元気になってくれるような曲を作りたいなと思って書いたのがこの曲だったんですよね。

「今日は寒いけど風が気持ちいいな」とか、そういう些細な嬉しさみたいなものを一瞬でも感じられるきっかけになったらなって

最強の曲が生まれちゃいましたね。たいていの悩み事ならこの曲で解決するような気がします。

あははは。ほんま(笑)? そうであったら嬉しいですよね。私はどちらかというとファンの人と密に過ごしてきたタイプやと思うんですけど、最近はSNSなんかもあるからたまに昔から応援してくれてる子のことを一方的に検索したりするんですよ。「元気にやってるかな?」と思って。そうするとね、めっちゃ元気やった子が突然病気になっちゃってたりとか、みんなそれぞれにいろんなことがあるんですよね。一緒なんですよね。だからこの曲を聴くことで少しでも気持ちが楽になってくれたらいいなってすごく思うんです。「今日は寒いけど風が気持ちいいな」とか、そういう些細な嬉しさみたいなものを一瞬でも感じられるきっかけになったらなって。

まさにそういう力を持った曲だと思いますよ。出だしの“♪トゥットゥル”で心が瞬間的に軽くなるし。

Twitterで「“♪トゥットゥル”がクセになります」とか「毎日“♪トゥットゥル”口ずさんでます」って言ってくれてる人が多くてすごく嬉しいですね。この曲は“♪トゥットゥル”の部分からできたんですよ。出だしからインパクトのある、いきなりマヨネーズかかってるみたいな曲ができひんかなと思って(笑)。

あははは。いきなりマヨネーズ(笑)。確かにド頭から美味しい曲になってますもんね。なんなら“♪トゥットゥル”前のブレスでもうヤラれてしまう感じもあるし。

本当ですか?良かったです!自分の中ではそのブレスも含めて曲になっている感覚なので、そこに引っかかってくれるのは嬉しいですね。

ライブを今年もたくさん味わえたからこそ、こういう曲を作ることができたんだろうなって思うんです

この曲にはライブでのファンとの繋がりみたいなものを感じさせる表現もちりばめられている印象がありました。

そうですね。ライブって自分にとってほんとに大事なものなんですよ。来てくれるお客さんによって毎回違った空間が生まれるし、上手くいった時の快感は他のどんなものでも絶対味わえないものでもあって。ほんまにやめられない、もう中毒なんですよね。で、そんなライブを今年もたくさん味わえたからこそ、こういう曲を作ることができたんだろうなって思うんです。実際、2コーラス目の歌詞はツアー後に書いたものなので。

アレンジもすごく楽しい雰囲気ですね。aikoさんの中で具体的なイメージは最初からあったんですか?

ありました。いろんな楽しいものを売っている雑貨屋さんみたいなサウンドにしたかったんですよ。なのでそういうイメージをお伝えしてアレンジしていただきました。前と比べると自分の思っていることをいろいろ話せるようにもなってきたというか。ここまで言ってもいいんやなって気づくことができたので、制作の現場はより楽しくなってますね。意見を交わすことによって、その場で曲が変化していくのもすごくおもしろい。19年やってきたけど、まだまだ新しい感覚が自分にあることがすごくありがたいなって思いますね。

歌のレコーディングはいかがでしたか?

今回もほんまに楽しいレコーディングでした。歌うことが好きなので、細かいことはあんまり気にせずに、とにかく楽しんで歌ってましたね。

ナチュラルな笑顔が浮かぶ歌声になっていますよね。そんな中、大サビでは地声とファルセットが行き来してるところもあって。すごく印象的でした。

確かにそうですね。基本的に自分のキーの幅を気にせずに曲を作ってるので高いところではファルセットを使ったりするんですけど、前に比べて「こうじゃないといけない」みたいな固定観念がなくなってきてるところもあって。

より自由になってきているということですかね。

そうですね。すべてを緻密に計算しつくして歌うタイプの人もいるとは思うんやけど、今の私はそういう計算をしてしまうと曲に対する感情をうまく乗せれなくなってしまう気がするんです。だから難しいことは考えず、自由に歌えばいいんじゃないかなって。それをした上で歯の矯正をするみたいに、ゆっくりと変化もしていけたらいいなって思うし。まぁ、たまに歌うことが楽しすぎてボーカル録ってるときに「わきゃーッ!」ってなってしまったときはさすがに「いやいやこれはダメやろ」って自制することはありますけどね(笑)。

「偶然の産物が常にあると思うなよ」って客観的なaikoが言ってきたりもするし(笑)

aikoさんの場合、ライブでのパフォーマンスやMCもそうですけど、常にその場の空気や感情によって変幻自在にその表情を変えていくじゃないですか。それはきっと曲作りやレコーディングでも同じなんでしょうね。だからこそ僕らは常に瑞々しいaikoさんに出会えて、常に驚かされるっていう。

ありがとうございます! なんかね、私は同じことをやっていると飽きてきてしまうんですよ。だから偶然できあがったもの、アドリブみたいなものがすごく好きなんです。ただ、年齢を重ねていくとそれで失敗することもあると思うんですよね。パワーで「えい!」ってやりきるのが難しくなってくるというか。「偶然の産物が常にあると思うなよ」って客観的なaikoが言ってきたりもするし(笑)。それこそパワーだけで押し切ってた20代の頃の映像とか見ると「ごめんなさい」ってちょっと恥ずかしくなったりもするんです。でも一方では、あの当時の私を褒めてくれる人もいるし、そういうやり方をしてきて良かったなって思う自分もいたりして。だから両方の感覚がせめぎ合ってる感じではあるんですけど……今のままでええんかな? だったら今のままで頑張ります!

好きという感情と、諦めに似た冷静な感情の間で行ったり来たりしている、狭間の感情を歌ってる感じなんですよね

シングルの2曲目には「間違い探し」が収録されています。

相手に対して初めて「好きだな」と思ったときの感情はもう残っていないのかもしれないけど、また新しい感情が生まれてもいて。でも、それが愛なのかどうなのかはもう一緒にいすぎてわからない、みたいな。そういう感覚を歌った曲ですね。

1コーラス目のBメロにグッときました。永遠に繋がっていられるとは思っていなかったけど、いざ終わりの兆しに直面すると胸が痛くなってしまうという。ものすごくリアルな感情ですよね。

ちょっとでもイヤなこととかがあったりすると、「あ、やっぱり他人やしな」と思ってスーッと引いてしまうあかんところがあるんですよね。それは親とかに対してもそうで、ほんとに人としてダメだと思うんですけど(笑)。

でも一方では相手を強く思っている気持ちもあるわけですよね。

好きという感情と、諦めに似た冷静な感情の間で行ったり来たりしている、狭間の感情を歌ってる感じなんですよね。

で、そうやって感情が揺れ動いているからこそ相手の“間違い探し”をしてしまうと。

そうですね。例えば8時に仕事が終わるって言ってたけど、実は7時半に終わってたみたいな、そういうちっちゃな嘘ってあるじゃないですか。それって普段の生活の中では全然問題にならないものなんやけど、2人の間に何かわだかまりがあったりするとそれをきっかけに、他の嘘、間違いをどんどん探そうとしちゃうんですよね。で、自分の中の想像がどんどん確信に変わっていくっていう。イヤですよね。ほんまならそんなことしたくないんやけど(笑)。

2人の関係がもうダメかもなって思ってるときは絶対に間違い探しやと思って動いてますからね

でもそうやって追及していくと実は間違いじゃないこともあるわけですよね、きっと。

そうそう。なんの問題もなかったってこともあると思います。でも、2人の関係がもうダメかもなって思ってるときは絶対に間違い探しやと思って動いてますからね。全部がもう間違い探しなんです……「めんどくさい女やな!」って言われそう(笑)。

いやいや(笑)。それも好きという感情が残っているが故のことですから。サウンドはすごくかっこいい仕上がりですよね。

この曲はミックスを2回やらせてもらったんですよ。最初はコーラスが入ってなかったんやけど、なんとなく押しが弱い気がしたからコーラスを入れてもう一度やり直させてもらって。だからこそより思い入れが強い曲にもなったんですよね。

歌はちょっと早口なところもありますね。

そうなんです。歌っててすごく気持ちいいから、やりきった感があるんですよ。まだ好きやけどもう諦めないといけないって思っている歌詞ですけど、曲調とメロディがすごく気持ちいいので、歌い終わると「まぁしゃーないか!」みたいな気持ちにもなりますね(笑)。すごく好きです、この曲。

相手のことをどうしようもなく好きと思っているときの曲です

そしてもう1曲、「月が溶ける」というバラードも。

好きな人と電話でしゃべってるときに「ありがとう」って何度も言われると、それが「さよなら」に聞こえてしまうくらい、相手のことをどうしようもなく好きだという曲です。でもその想いを言葉にすることはできないから心で反芻していると自然と涙が溢れてきて、ふと見上げたら涙で月が溶けてたっていう。

好きすぎて不安になってしまうところはまさにaikoさんそのものといった感じですね。

そうなんです(笑)。私自身はお付き合いしていたとしても常に不安で、常に片想いだと思っている人なので、そういう部分が出てる気がしますね。

アレンジも歌もものすごくせつなく悲しい雰囲気です。

この曲は悲しくて切ない雰囲気にしかったんですよ。だからアレンジもそういう情景を大切に作っていただきました。ふとしたときに家でよく口ずさんでたんですよ。だからこの曲をCDに入れれるって決まった時とても嬉しかったです。たくさん聴いてもらえたらいいな。

aiko

1975年11月22日生まれ。大阪府出身。シンガーソングライター。1997年12月、インディーズ1stアルバム「astral box」発表。1998年7月に、シングル「あした」でメジャーデビュー。メロディはもちろん、彼女の恋愛観で綴られる歌詞に、そしてライブでの熱いパフォーマンスに、幅広い年齢のファンが支持している。現在、デビュー20周年目に突入中。

オフィシャルサイトhttp://aiko.com