Interview

紅白に出演決定した松たか子が、朝ドラ『わろてんか』主題歌など話題曲を収録した充実のアルバム制作現場を語る。

紅白に出演決定した松たか子が、朝ドラ『わろてんか』主題歌など話題曲を収録した充実のアルバム制作現場を語る。

松たか子、8年ぶりのオリジナル・アルバム『明日はどこから』が完成した。NHK連続テレビ小説『わろてんか』の主題歌である表題作をはじめ、TBS系ドラマ『カルテット』主題歌の「おとなの掟」、さらには映画『嘘を愛する女』(2018年1月20日公開)の主題歌「つなぐもの」と、話題満載の収録曲である。プロデュースは佐橋佳幸で、彼の音楽への愛情が、アルバム全体を“グッド・ミュージック”に押し上げたと言ってもいい。ではさっそく、松たか子に語ってもらおう。

取材・文 / 小貫信昭

仮タイトルだった“涙はどこから”から“明日はどこから”へ

オリジナル・アルバムは久しぶりですね。

実は2017年はデビューして20周年でもあったので、「なにか形に出来ればいいな」とは思ってたんですけどね。自分で書いた曲も、少しづつ溜まってましたし。

全体の構想はどのように。

どんな方に曲をお願いしようか…、ということは、プロデューサーにお任せしてました。でも佐橋さんのこだわりとして、基本的に、“詞も曲も一緒にお願い出来る人”、ということだったんです。全体の制作期間ということでは、2~3年前に作った曲も入っているので、長いといえば長いですね。

「明日はどこから」は、どのように誕生したのでしょうか?

まさか最初は、朝ドラの主題歌をやらせて頂けるとは思ってなかったんです。でも、「最後まで候補として残ってるらしい」って、その段階でマネージャーさんから聞かされたんですよ。「でもそんな、決まらないでしょ?」とか言ってたら、決まりまして、そこから曲を作り始めたんです。いつもは曲からなんですが、なぜかこの時は詞から考えていって、「こんな方向でいくのはどうですかね?」って、最初はメモ程度でしたが、佐橋さんやマネージャーさんに見てもらって、「いいんじゃない」って言って貰えたところから書いて、そのあと、曲を作っていったんです。

仮タイトルは“涙はどこから”だったそうですね。

そうなんですよ。“ヒロインがみんなに希望を与えていく笑いのドラマ”ということをお聞きして、“笑い”をテーマに書こうとしたら、どうしても、そこに至るまでの厳しい過程とか、それこそ“涙を流しながら笑いを作り出す人がいたんじゃないか?”とか、逆のことを、どうしても書きたくなったんですよ。でも、さすがにプロデューサーの方が、「“涙”はちょっと…。『わろてんか』なので」って言われまして(笑)、「ですよねー。でも、こういうことを書きたいんです」ということだけはお渡しして、その後、「私の言いたいことは“涙”を“明日”に変えても伝わるかな?」ということで、最後はこうなりました。

大貫妙子さん書き下ろしの「空とぶペンギン」や、細野晴臣さんのカバー「三時の子守唄」など、松さんもリスペクトしているであろう方々の作品も取り上げられていますけど。

大貫妙子さんの曲は、最初、彼女のデモを聞かせて頂いた時、“それ以外の何物にもならない完璧な世界”があったので、まず、大貫さんのように歌ってみたんですよ。でも、ご本人から「囚われず、好きに歌っていいわよ」と、電話でご指導頂きまして、いったん大貫さんの歌い方から離れてみたんです。でも、「やはりあの歌い方がしたくなるよね」ってことで、戻すところは戻したり、その過程がとても勉強になりました。細野晴臣さんの曲を歌ってみるように勧めてくれたのは佐橋さんで、アレンジは佐橋さんと Dr.kyOnさんのユニット、“Darjeeling(ダージリン)”です。この歌は、なんとも言えないほど温かいんですよね。でも、温かいんだけど、ぽつんとした可愛いさもあって、寂しさも少しあって、素敵なんですよね。

二人の編曲は、「恋のサークルアラウンド」もそうですね。この曲と「奇跡のオト」が、どちらかというとバンド・サウンドでロック色もありますよね。

「恋のサークルアラウンド」は、ザ・コレクターズの加藤ひさしさんに書いて頂きましたが、最初、けっこう高いし“歌い切れるかな?”って思ったんですよ。でも、バンドの音だったり、あと、スタレビさん達のコーラスの力に凄く助けられて、なんとか歌い切ることが出来ました。「奇跡のオト」は、前回のツアーの時、最後にステージで「新曲を演奏出来たらいいよね」って話してて、それで作ってみた曲なんですけどね。その時は歌詞が完全じゃなくて、今回、それを仕上げてレコーディングしました。内容は、まさにツアーをやってる時の心境を描いてます。今までの私には、なかったタイプの曲です。

椎名林檎さんの世界に巻き込まれていくのが楽しかった

やはりお訊きしたいのが、椎名林檎さん作詞作曲の「おとなの掟」です。ドラマ『カルテット』では、劇中ユニット“Doughnuts Hole”の一員としてでしたが、今回、ボーナス・トラックとして、ソロ・ヴァージョン(役名から取った”Maki Maki”名義)も収録されていますね。

椎名林檎さんにはもう、優しく厳しく、引っ張ってもらいました。彼女の世界に巻き込まれていくのが楽しかったというか…。でもこれも、“なにか一緒に出来たらいいね”という、とてもシンプルなところから始まったんです。そこに様々な偶然も重なりまして、ドラマ『カルテット』の主題歌になり、“Doughnuts Hole”として、出演者四人で歌うことになり、そして今回、アルバムを出すにあたり、ひとりのヴァージョンも録音することになったんです。

聞き比べる楽しみもありますね。ご本人は気持ち的に、どんな違いがありましたか?

一人のヴァージョンのほうが平常心というか、逆に“Doughnuts Hole”として主題歌を作ってた時は、気楽な気持ちで楽しめたところがありました。なのでこのふたつは、すごく温度が違うんですけどね。でも最初は、四人のものとソロと、どちらを正式にアルバムに入れるか迷ったんです。でも松田龍平君が、“Doughnuts Hole”としてアルバムに入ることを“楽しみにしてる”という話をマネージャーさんから伝え聞いて、だったら四人のものをボーナス・トラック扱いにするのは胸が痛いし(笑)、私のソロのほうをオマケにさせて頂いたんですけどね。

ドラマ拝見していた時に思ったんですが、最後にこの曲が流れると、次回はどう展開するんだろう、と、どんどん興味が膨らむ感じでした。

椎名さんは、ドラマの内容を知り尽くして書いたわけじゃないと思うんですよ。でも結局、歌詞のなかの“おとなは秘密を守る”という言葉が、ドラマが様々に展開していく上でも、大きな力になっていった気がしますね。

さて最後は、話題の映画『嘘を愛する女』の主題歌、「つなぐもの」について教えてください。

この歌の詞は坂元裕二さんで、坂元さんにはデビュー曲の「明日、春が来たら」を書いて頂いてまして、今年は20周年ということで、「何かお願い出来たらいいね」って話してたんです。でも、時間を経て再び書いて頂いて、しかもそれを、自分の作曲で歌えるというのは、すごく嬉しかったです。坂元さんは脚本を書く方ですから、映画がどんな内容で、どんなテーマで書けばいいかを、全部知った上で、でも「囚われずにこれを書いた」っておっしゃってましたけどね。

作曲のほうはどうだったんですか?

実はストックじゃないですけど、「ちょっと曲作りをしておこうか」みたいな時期があって、その時の曲なんです。でもこれは、「こういう曲、書きたいな…」って想いがあった時のもので、コード進行とか、ちょっと似てたりもするんですけど。その曲というのは、カーラ・ボノフの「Falling Star」なんですよ。でも曲が出来た時点では、誰かに詞をお願いするのかボンヤリしてて、最初は自分で書くつもりでもいたんです。その時、自分のことを“あなたを知らない 分からない”みたいなこと書いてみたいなって思っていて、そしたら映画の内容が、恋人が大きなウソをついていて“違うヒトだった”、みたいな、そんな内容だったんですよ。

まるで予知していたかのように…。

そんなふうに、いろいろな重なりが出てきて、そしたら坂元さんが、こういう歌詞を書いてくださって、この曲を最後にレーディングした時、「これでアルバムがまとまるんだな」って、そう思えたんですけどね。

ライブでこそ聴きたい曲も入ったアルバムですし、ぜひぜひ機会が巡ったら、コンサート・ツアーのほうも期待しております!

「SONGSスペシャル」出演決定

放送:12月16日(土) 22:30~ 23:14 (予定) NHK総合テレビ
『わろてんか』主題歌『明日はどこから』のほか、初出演の『NHK紅白歌合戦』でも歌ったデビュー曲『明日、春が来たら』などを披露。
また、今年NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』小野但馬守政次役で大きな注目を集め、現在は『わろてんか』にも出演中の俳優・高橋一生さんが登場。
20年の歴史が詰まった楽曲のスタジオパフォーマンスと高橋一生さんとの音楽談義を中心に、松たか子の今を切り取る特別版『SONGS』。

映画『嘘を愛する女』

2018年1月20日(土)全国ロードショー
出演:長澤まさみ 高橋一生 DAIGO 川栄李奈 黒木瞳 吉田鋼太郎
監督:中江和仁
脚本:中江和仁・近藤希実
主題歌:つなぐもの/松たか子
配給:東宝
製作:「嘘を愛する女」製作委員会
制作プロダクション:ROBOT
©2018「嘘を愛する女」製作委員会
オフィシャルサイトhttp://usoai.jp/

松たか子

1977年生まれ、東京都出身。
1993年歌舞伎座『人情噺文七元結』で初舞台。1994年NHK大河ドラマ『花の乱』でテレビドラマデビュー。
以降最近では『坂の上の雲』(NHK)、『運命の人』(TBS)、『おやじの背中』(TBS)『ふつうが一番』(TBS)『カルテット』(TBS)に出演。歌手としても1997年『明日、春が来たら』でデビュー以降、シングル22枚、アルバム9枚をリリース。
映画では『ヴィヨンの妻~桃桜とタンポポ~』『告白』『夢売るふたり』『小さいおうち』『アナと雪の女王』(日本語吹替)『HERO』。舞台では『パイパー』『ジェーン・エア』『もっと泣いてよフラッパー』『逆鱗』『メトロポリス』などに出演。
2017年11月15日シングル「明日はどこから」(NHK連続テレビ小説『わろてんか』主題歌)12月6日アルバム『明日はどこから』を発売。2017年12月5日より舞台『かがみのかなたはたなかのなかに』(新国立劇場小劇場)再演が決定。
オフィシャルサイトwww.matsutakako.jp/