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「ダメな人たちの日常を覗き見しているような感覚」と賀来賢人が語る『流山ブルーバード』開幕。太賀、柄本時生、若葉竜也ら仲良し若手俳優が集結

「ダメな人たちの日常を覗き見しているような感覚」と賀来賢人が語る『流山ブルーバード』開幕。太賀、柄本時生、若葉竜也ら仲良し若手俳優が集結

映画『葛城事件』(脚本・監督)や舞台『世界』(作・演出)等で独特の世界観を提示し、注目を集めている劇作家・演出家・俳優の赤堀雅秋が書き下ろした舞台、M&Oplaysプロデュース『流山ブルーバード』が12月8日に下北沢・本多劇場で開幕を迎えた。
本作は賀来賢人が「太賀と一緒に芝居をしたい」と企画が生まれ、賀来と同世代で昔から知り合いの柄本時生、若葉竜也らも集い、東京にもほど近い地方都市・千葉県流山市を舞台に、この街の半径3キロ圏内でくすぶっている“ダメ”な若者4人と、彼らを取り巻く大人たちの青春群像劇を描いている。
前日同劇場にて、公開フォトコール&囲み取材が行われ、賀来賢人、太賀、柄本時生、若葉竜也、皆川猿時らが登壇。和気藹々と意気込みを語った。

取材・文 / エンタメステーション編集部 撮影 / 冨田望

やっぱり恥ずかしいのはある。どうしても、時生の顔を見ると笑っちゃって(笑)

囲み取材では、賀来、柄本、若葉が同い年、さらに太賀も含めた4人が昔からの顔なじみ同士ということもあり、チームワークもバッチリに、互いの発言にツッコミを入れながら、笑いの多い受け答えとなった。

ただ、長い付き合いだけにやりにくさもあったようで──。
賀来「やっぱり恥ずかしいのはあるんですけど、もう慣れたよね。最初は変な感じだったんですよ。どうしても、時生の顔を見ると笑っちゃって(笑)」
柄本「俺も(賀来を)見るたびに男前だなあーと思ってました(笑)」
若葉「太賀とはこの間も映画で共演してたんで全然やりやすかったんですけど、時生が……やっぱり照れますね。14年ぶりの共演なので」

その中でひとり、彼らを見守るベテランの皆川はというと──。
皆川「すごく品のいい若者たちに囲まれて、ちょっとだけ若返りました(笑)。歳の離れた方々とやるのは新鮮ですね。みなさん芝居も上手だし。ちゃんとしなきゃいけないなって思います。20歳くらい下ですから、子供でもおかしくないですよね。ま、子供じゃなくて良かったなとは思いますけど(笑)」
と、少々遠慮気味ながら、若手俳優との交流を楽しんでいる様子をうかがわせた。

さらに、今年を振り返ってどんな一年だったか感想を聞かれると──。
賀来「いろいろやらさせていただいて。子供も産まれましたし、頑張らなきゃなと思わせられる一年でしたが、すごくいい年でしたね。あっという間でした。(パパになってどう?)面白いですよ。笑わさせられますし、すごい楽しいです」
太賀「たくさんいろんなことがあって今まとめろと言われてもどう答えたらいいかわからないですけど、いい年でした。いろんな出会いもありましたし、いろんなところで鍛えられた気もしますし。2017年の締め括りとして今回の舞台があるので、胸張って舞台に立てれたらなと思います」
柄本「特に変わらず、いつもどおり仕事をさせていただけてることをありがたいなと思っております。(印象に残ってることは)おじさんになれたんで、それですかね」
若葉「この舞台がうまくいけば、今年いい思い出になるんだろうなって思います」
皆川「いろいろありましたけど……最近ウサギを飼い始めたんですが、それが血統書付きだと思っていたら、雑種だったという」
一同(爆笑)
皆川「でも、可愛がってますけどね。(賀来から名前はと聞かれ)うさ太郎」

そして、最後に賀来が本作への意気込みを述べた──。
賀来「流山に住む人たちの、ちょっとダメな人たちの日常を覗き見しているような感覚になると思います。今までに見たことのない赤堀さんの作品になっているとも思いますし、どの世代も楽しめる作品に仕上がっていると思いますので、みなさんぜひ観に来てください」

「若者たちは青い鳥を探すことすら忘れていた」

囲み取材前に行われたフォトコールでは3場面が公開された。

まず、スナックにて。太賀演じる土木関係で働く既婚者・足立健がカラオケでレミオロメンの「粉雪」を熱唱している脇で、実家の魚屋で働く高橋満(賀来賢人)と役者志望の古川浩一(若葉竜也)がママ(宮下今日子)と談笑している場面から。

健は歌いながらも周囲がどんな話をしているのか気になっている。若干苛立っているようにも見える。周りは歌などおかまいなしに話に夢中。歌声に負けじと声はどんどん大きくなっていく。歌い終わり、健は自らリモコンで演奏中止ボタンを押し、「乾杯し直そう」と声をかける。そこから男3人の会話──仕事の話、家庭の話、恋バナ、些細な世間話が始まるのだが、互いのステイタスを探り合うような、どこか噛み合わない微妙な空気が漂っている。そう、よくある光景がそこにはある。

ママの夫、赤堀演じる幹夫が酔っ払いながら戻ってくると、空気が少しだけ揺らぐ。彼の口から、流山で起きている通り魔殺人事件というワードがこぼれ落ちる。しかも、犯人は満だとなぜか断言する。物語を揺るがしかねない不穏な出来事なはずなのに、つい近所で起こっている事件であるのに、この日常と地続きに起こっている殺人事件の存在は、テレビ報道を見ているように別物としてスルーされる。よくある光景がここにもある。

舞台が回転し、場所をファミレスへと移す。そこにはゲームセンターで出会ったばかりの無職の伊藤和彦(柄本時生)と野宮直樹(駒木根隆介)が対面で座っている。野宮はゲームセンターの展望について話しているが、伊藤はしきりに虫歯を気にしている。野宮が頼んだチーズインハンバーグはなかなか来ない。少しして伊藤が急に立ち上がり少し離れた席に座っていたカップルにキレ出す。よくある光景がこんなところにもある。

話す相手は誰でもいいのか、絡む相手は誰でもいいのか。噛み合わないすれ違いのコミュニケーションがここにも垣間見える。そして最後に伊藤に向かい野宮がつぶやく。「俺のこと見えてる? 俺ここにいるよね?」と。この言葉は、この物語に登場するすべての人物の心の叫びなのではないか。流され続ける日々のなかで、誰かに、自分に、自らの存在意義を問いかける。例えそれが無用なことだとしても。

場所は深夜の高橋家のダイニングへと変わる。古川がチェーホフの『三人姉妹』のセリフを声に出している。そこへ仕入れに出かける満の兄・国男(皆川猿時)が入ってくる。国男も抜け出せない日々の生活に疲れているように見える。一方の古川は国男との平行線の会話にいたたまれず、逃げるタイミングを図っているようだ。

赤堀が切り取っている何気ないシーンや会話は、まさに誰しもが体験している日常のひとコマだ。そして、もしかしたら自らでさえ気づかない暗部を照らしている。そこからにじみ出ている現実という憂鬱が、観ているこちらにも侵食してくる。

さらに2人がいなくなったダイニングへ満が電話を片手に現れる。通話相手は、健の妻・美咲(小野ゆり子)。2人は不倫関係にあるようで、美咲に届いた脅迫状を健の仕業ではないかと疑いながらも「親友を信じたい」と言う。そして、満は美咲に明日駆け落ちをしようと持ちかけ、「ずっとこんな街を出たいと思ってた」と告白する。駆け落ちは満にとってきっかけにすぎず、ひとりで街を出る勇気はないだけにも見える。ただ、何かを変えたいと望む、満の心の葛藤がこぼれ落ちる。

どうやら『流山ブルーバード』に登場する人物は、みんなくすぶっている。みんなブルー=憂鬱を抱えている。ここから彼らにいったい何が起きるのだろうか。混沌としたやるせない日々に彼らはどんな希望を見つけるのだろうか。本作のキャッチに「若者たちは青い鳥を探すことすら忘れていた」とある。もしかしたら、自らで塗り潰したブルーの中に見失っている青い鳥は潜んでいるのかもしれない──。

本公演は12月27日まで下北沢・本多劇場にて上演。その後、2018年に地方公演を行う。ちょっとダメな若者たちの、流山に住む人々の現実という日常を覗いて見て欲しい。

M&Oplaysプロデュース『流山ブルーバード』

<東京公演>2017年12月8日(金)~12月27日(水)本多劇場
<島根公演>2018年1月11日(木)島根県民会館 大ホール
<大阪公演>2018年1月13日(土)~1月14日(日)サンケイホールブリーゼ
<広島公演>2018年1月16日(火)JMSアステールプラザ 大ホール
<静岡公演>2018年1月18日(木)浜松市浜北文化センター 大ホール
<大田区(東京)公演>2018年1月20日(土)~1月21日(日)大田区市民プラザ 大ホール

作・演出:赤堀雅秋
出演:
賀来賢人 太賀 柄本時生 若葉竜也 小野ゆり子 宮下今日子 駒木根隆介 赤堀雅秋 平田敦子 皆川猿時

主催・製作:(株)M&Oplays

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