LIVE SHUTTLE  vol. 219

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シド 全国ホールツアー完走!『NOMAD』という新たな挑戦の果てに流した大粒の涙

シド 全国ホールツアー完走!『NOMAD』という新たな挑戦の果てに流した大粒の涙

SID TOUR 2017 「NOMAD」

このツアーを観た人は、きっといまでもShinjiのギターとストリングスがユニゾンで弾く「NOMAD」のメインフレーズを聴くだけであのツアーの情景を思い出すはずだ。それぐらい、シドのキャリアを語る上で、今後間違いなく“分岐点”として記憶に残る、見逃せない大事なライブツアーになった。

3年半ぶりのオリジナルアルバム『NOMAD』を引っさげて行なった全国ホールツアー<SID TOUR 2017 「NOMAD」>、そのファイナルを無事迎えたばかりのシド。放牧されて、しばらくの間は遊牧民(=NOMAD)となって各々で活動していたメンバーと、彼らの帰りをずっと待ち続けていたファンたち。シドから伝えられた再会の場所は、地方都市を含む全国16カ所。その会場すべてが、お互いの姿が肉眼で確認できるようなサイズのホールばかりだった。再び“シド”という名の下に集まった4人のメンバーと各地のファンが、これまで築き上げてきた絆が生み出す心温まるぬくもりや信頼感を、込み上げてくる懐かしい思いとともに確認しながら、同時にそこで目の当たりにしたもの。それは、まぎれもなく次のフェーズへと突き進んでいく新しいシドの勇敢な姿だったーー。

なぜ彼らには充電期間が必要だったのか。その再始動にあたり、なぜ『NOMAD』のようなアルバムを生み出したのか。その答えはすべて、今回のツアーが雄弁に物語っていた。それをこのツアーの折り返し地点となった10月27日に行われた東京・東京国際フォーラム ホールA、関東での最終公演となった11月21日の東京・中野サンプラザ、そしてツアーファイナルとなった11月25日の北海道・わくわくホリデーホールの3公演から探って行きたいと思う。

アルバムを引っさげたツアーといっても、今回はシドとして久々のライブツアー。過去のヒット曲、人気曲をたくさん盛り込んで、お互いに再始動を祝福し合う祝祭ムード満載のライブでも、ファンはきっと大歓迎だったに違いない。その上で、4人は最新アルバム『NOMAD』曲をすべて盛り込んだセットリストでこのツアーに挑んできたのだ。

ライブのオープニング。再会のシーンは、場内が暗転した後、ドラムがセッティングされた上層部のステージに4人が横一列に並んで姿を現すという幕開けで、待っていてくれた観客を冒頭から歓喜に包んだ。国際フォーラムは本ツアーのなかでもっとも大きな会場だったため、このオープニングの演出はアリーナクラスのライブを見ているような迫力があり、その美しい凛とした佇まい、シドとなった4人が放つ強いオーラに圧倒された。一人ずつではなく4人揃ってという登場の仕方。さらに、いつもはバラバラだった衣装を全員きっちり白い衣装で統一(アンコールも黒いTシャツで揃えて登場)してきたところからも、この4人で集まって、真っさらなところから再びシドを始めようというような彼らの決意が感じられた。そうして、ライブはアルバム同様「NOMAD」で新しい物語をスタートさせていく。いままでとは違う、格段に奥行きとスケール感を兼ね備えた音で“新しい世界”での再会を歌い鳴らすシドは、1曲目から度肝を抜かれるようなサウンドの進化を華麗に見せつける。“お前はいつも綺麗だからおれがいなきゃダメさ”と歌いながら、マオが官能的に最前列のファンを誘う「XYZ」、札幌では「Dear どさんこ!」と札幌バージョンの曲紹介も飛び出したおなじみの「Dear Tokyo」とロックチューンで駆け出したあと、改めてマオが挨拶。東京の2公演では「『NOMAD』聴いた?」(観客「聴いた!」)「どうだった?」(観客「カッコイイ!」)とホールだからこそダイレクトに届くファンのリアクションを噛み締めていた彼ら。単に「新しい」で終わるのではなく、誰もがあっと驚くほどの完全なる真新しいシドに挑戦したという『NOMAD』の楽曲。シドとしてこれまで築き上げてきた確固たるスタイルの延長戦では充電期間をおいた意味がない。新しい要素を取り込み、それらが血肉化していったとき、果たしてそこにはどんな新しいシドのバンドフォーマットが生まれるのか。

最終日、マオはこのツアーを通して「一番良い状態に育ってきたところだ」とファンに告げた。そのあとは『NOMAD』の楽曲と歴代ナンバーが織りなす「シド最新型」の物語を堪能。ジャジーなオープニングからShinjiのギターが歌い出し、ゆうやお得意のリズムアプローチでおしゃれなフュージョンへとクロスオーバーして切り出される「KILL TIME」は、間奏に楽器隊のソロをフィーチャー。Bメロのリズムをキャッチして歌をのせるヴォーカルなど、メンバー4人の磨かれたテクニックが際立つ。4人がフィーチャーされるのは演奏だけではない。次のブロックに行く前のMCパートも、マオが振らなくてもソロステージを経験して来た明希が自らしゃべりだし、そこからメンバーをリレーして最後にマオがしゃべるという新しいスタイルが生まれていた。

中野では「いい声出てる」、札幌では「みんなの熱を感じます」と会場ごとの手応えを伝えていった明希。フォーラムで「『NOMAD』のギターを弾くのが楽しくて仕方がない」と伝えたShinji 。中野で「3万3000円自腹切ってドラム台を高くしました」と観客を笑わせたゆうやは、そのあとマオが上京して初めて降りた駅が「中野だったんですよ」と話すと、「その頃住んでた部屋に泊まったとき、風呂の狭さ(マオが立つお立ち台の半分ぐらいだったとか・笑)にびっくりした」と当時のマオの生活をばらすシーンも。札幌では逆に、美味しいラーメンをみんなで食べに行ったとき、20分ぐらい並んだところでゆうやが「もうやめない?」といいだしたらラーメン王子・Shinjiと口論になったことをマオがばらした。そのときのゆうやの決め台詞が「俺たちラーメン並びに来たんじゃないでしょ? ライブしに来たんでしょ」だったといって最後に客席の笑いを誘った。これらのトークからも分かるように、充電期間を経て、4人がかもしだす空気は明らかにおだやかなものに変わった。4人でバンドをやること、新しいシドを探す物語を彼ら自身がわくわくドキドキしながら楽しんでいるのがダイレクトに伝わってくる。

ソロを経て、さらに繊細なところまで心配りをするようになったヴォーカリングで、マオがせつないラブソングを歌い上げる「スノウ」。そこから始まったライブ中盤、本編でわくわくドキドキが最高潮に高まったのが「低温」の存在。『NOMAD』のなかでももっとも挑戦的なサウンドを叩き出したこのナンバーを、いまの4人は、ライブアレンジを加えたサウンドで魅せきることができるバンドに成長。楽器隊の頭上に迫るように大きなライトが降下。そのライトの点滅とリンクするようにゆうや、明希、Shinjiとソロをつなぎ、その日ごとのアドリブを入れて「低温」のイントロダクションを楽器隊のアンサンブルで作り出したあと、マオのヴォーカルが加わると、場内が緊張感ある静寂な空気に支配されていく。これまでのシドを遥かに超越した、毛穴から身体を侵食してくるようなダークでアンビエントな音像が、観客たちを魅了。その暗闇から這い上がるように「躾」、「バタフライエフェクト」を連続投下していった場面では、「低温」とは真逆のベクトルにあるダイナミックなスタジアムロックを聴いているようなソリッドでスリリングなシドが目の前に現れ、ど迫力のバンドサウンドで観客をしびれさせた。

そうして「MUSIC」からなだれこんだ終盤戦は、照明もカラフルになり、華やかに彩られたステージに立って「V.I.P」、「夏恋」、「one way」とテッパン曲をゴージャスに連発。観客を引き連れ、最後まで途切れることのない熱狂へとみんなで上り詰めていった。

アンコールは、毎回懐かしい曲を演奏しながら、その途中には4人の和気あいあいとしたトークで場内をなごませたグッズ紹介のコーナーが、このツアーでは定番化。ファイナルの札幌では「1曲増やしたいな~」というマオの突然の提案から、ステージ上でメンバーが協議。その結果、サプライズで予定になかった「Re:Dreamer」を追加でアクト。場内からは大歓声が沸き起こった。そして、ラストの「普通の奇跡」直前のMCでは、マオから毎回胸にしみる言葉が伝えられた。“生きている意味を見失うことがある”と書いてあったファンレターのことをとりあげ「生きてる理由は1つじゃなくて、それをひたすら積み上げていくのも俺はありだと思います。シドは来年15周年、生きてる意味を一緒に探しましょう」と語ったフォーラム。ライブ中にチラチラメンバーを見ては「コイツらとやれてよかったなと思います。ステージ上って、こういうことがいちゃうんだよね。来年15周年だけど、14年目になったいま、4人でご飯行ったりして。“ここは違うアプローチをしてみよう”とか、新しい挑戦の言葉がまだまだ出てくるんだよ。それぞれが音楽に貪欲だから、シドはこういうバンドになったんだと思います。この4人で15年目を迎えられて幸せです。俺たちはこれからも“世界一カッコいい”を更新し続けるから」と宣言した中野。最終日は「15周年はみんなでグチャグチャになろうぜ! いつもはスクリーンで発表するんだけど、今回は自分たちの言葉で伝えたかった」といってZeppを中心としたスタンディングのライブハウスツアーを行うことを発表。その後、『NOMAD』を締めくくるバラード「普通の奇跡」のアクトに入ろうとしたときだ。札幌では、マオが曲のタイトルコールをした瞬間、観客が一斉にスマートフォンをとりだし、ライトを灯して客席を白一色に発光させてみせた。ファンがこのようなサプライズを仕掛けるのは、シド史上初のこと。「ちょっと、なにそれ‥」とマオが感嘆の声を上げる。真っ白になった客席を見渡しながら、明希は演奏しながら大粒の涙を流している。ゆうやとShinjiが、なんとか涙をこらえて演奏を続けるなか、ついに涙をこらえられなくなったマオが最後に感極まって涙をこぼす。こうして、ツアーのフィナーレに最高の風景を観客と一緒に生み出してみせたシド。ラストには「普段はやらないんだけど」とマオが断りを入れつつ、4人で手を取り合って最後の挨拶をすると、その姿に観客たちから惜しみない拍手が送られた。

このツアーを通してつかんだ新しいシド。彼らはこの勢いのまま、2018年、記念すべき結成15周年のアニバーサリーイヤーに突入する。1月1日、東京・Zepp Tokyoで行なう<シド 結成十五周年記念公演 「シド始め」>でそのアニバーサリーイヤーを幕開けしたあと、5月5日からは<SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR 2018>で全国のライブハウスを駆け抜ける。2018年も、新しいシドの進化を見逃せない。

文 / 東條祥恵 撮影 / 原田直樹(札幌公演より)

SID TOUR 2017 「NOMAD」
11月25日 わくわくホリデーホール

1.  NOMAD
2. XYZ
3. Dear Tokyo
4. KILL TIME
5. 螺旋のユメ
6. 硝子の瞳
7. スノウ
8. 泣き出した女と虚無感
9. 嘘
10. 低温
11. 躾
12. バタフライエフェクト
13. MUSIC
14. V.I.P
15. 夏恋
16. one way
En1. ミルク
En2. プロポーズ
En3. 眩暈
En4. Re:Dreamer
En5. 普通の奇跡

ライブ情報

シド 結成十五周年記念公演「シド初め」
2018年
1月1日(月・祝)東京・Zepp Tokyo

SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR 2018
5月5日(土・祝)東京・Zepp DiverCity(TOKYO) ~ID-S限定LIVE~
5月6日(日)東京・Zepp DiverCity(TOKYO) ~ID-S限定LIVE~
5月12日(土)大阪・Zepp Osaka Bayside ~ファン投票LIVE(大阪編)~
5月13日(日)大阪・Zepp Osaka Bayside ~暴れ曲限定LIVE~
5月18日(金)愛知・Zepp Nagoya ~ファン投票LIVE(名古屋編)~
5月19日(土)愛知・Zepp Nagoya ~暴れ曲限定LIVE~
5月26日(土)福岡・DRUM LOGOS ~ファン投票LIVE(福岡編)~
5月27日(日)福岡・DRUM LOGOS ~暴れ曲限定LIVE~
6月2日(土)北海道・Zepp Sapporo ~インディーズ曲限定LIVE~
6月9日(土)宮城・SENDAI GIGS ~昭和歌謡曲限定LIVE~
6月15日(金)東京・Zepp Tokyo ~ファン投票LIVE(東京編)~
6月16日(土)東京・Zepp Tokyo ~暴れ曲限定LIVE~

SID(シド)

2003年結成。マオ(vo)、Shinji(g)、明希(b)、ゆうや(ds)からなる4人組ロックバンド。
2008年、TVアニメ『黒執事』オープニングテーマ「モノクロのキス」でメジャーデビュー。
2010年の東京ドーム公演では4万人を動員。結成10周年となった2013年には、初のベストアルバムをリリースし、オリコンウィークリー1位を獲得。同年、横浜スタジアムで10周年記念ライブを開催、夏には初の野外ツアーで4都市5公演で5万人を動員し大成功を収める。2014年には香港・台湾を含む全国ツアーも開催。2016年1月にはベストアルバム『SID ALL SINGLES BEST』をリリース。
2017年1月には約1年ぶりのシングルとなる映画『黒執事』主題歌「硝子の瞳」をリリース。5月にはシングル「バタフライエフェクト」をリリースし、両日ソールドアウトの中、日本武道館2days公演を実施。成功を収める。9月には、3年6ヵ月ぶりのオリジナルアルバム『NOMAD』をリリース。先日の11月25日の札幌公演にて、SID TOUR 2017 「NOMAD」も無事終了した。15周年イヤーの2018年5月より全国ライブハウスツアーを開催する。

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