LIVE SHUTTLE  vol. 220

Report

「君の名は。」、RADWIMPS、東京フィルハーモニー交響楽団がコラボレイション。超プレミアムなコンサートはこれまでに体験したことのない感覚

「君の名は。」、RADWIMPS、東京フィルハーモニー交響楽団がコラボレイション。超プレミアムなコンサートはこれまでに体験したことのない感覚

『君の名は。』オーケストラコンサート【RADWIMPS / 東京フィルハーモニー交響楽団】
2017年12月4日 東京国際フォーラム ホールA

2016年夏に公開され、大ヒットしたアニメ映画『君の名は。』のオーケストラコンサートが東京国際フォーラムで行われた。

映画公開から1年半近く経つのに、このライブのチケットは超プレミアムなものとなり、『君の名は。』の人気の根強さを改めて示した。それもそのはずで、このライブには東京フィルハーモニー交響楽団に加えて、サウンドトラックを担当したRADWIMPSが出演するのだ。映画とオーケストラのコラボはすでに定番コンテンツとなっているが、ロックバンドが映画に合わせてライブを行なうのはとても珍しく、たった2日間のみの公演ということもあって大いに注目を集めることになった。

この日、フォーラムの客席を埋めていたのは、30~40代のオーディエンスで、そのうちの70%くらいが女性客、30%くらいが男性客だ。ステージ中央には指揮台が置かれ、オーケストラのメンバーの椅子が並べられている。指揮者の正面上方に映画のスクリーンがセットされ、RADWIMPSの楽器は向かって左側に置いてある。会場の明かりが消されると、場内はシーンとなった。このあたりが通常のコンサートとは明らかに雰囲気が異なる。

やがて交響楽団員たちが位置に着く。続いてRADWIMPSの野田洋次郎(vo,g,pf)、桑原彰(g,cho)、武田祐介(b,cho)の3人が登場すると拍手が起こる。野田は左胸に右手を当てて、それに応える。最後に指揮者の栗田博文が現われて出演者が揃い、いよいよ開演となった。

中央のスクリーンに『君の名は。』の本編が映し出される。タイトルバックのシーンで、リバース(テープ逆回転のような音)のかかったギターのアルペジオに乗って、野田が「夢灯籠」を歌い始める。その凛とした声に、耳ばかりでなく、神経のほとんどを持っていかれる。劇場やDVDで観るのとはまったく違う印象だ。画面にシンクロして録音された音楽と、生で奏でられる音楽は、ここまで違うものなのか。画面に「音楽 RADWIMPS」という文字が浮かんでも、ステージ左端で立って歌う野田に目が行ってしまう。生々しい歌の存在感が凄い。今日のライブは、これまでに体験したことのない感覚を味わうことになるのだろう。それにしても、いきなり歌うのは精神的にはかなりシビアだと思うが、野田が最初のひと声からしっかり歌っていたのには驚かされた。

「三葉の通学」では、ストリングスに合わせて桑原がアコースティック・ギターでメロディを弾く。細かいニュアンスまで拾うP.A.の上手さもあって、非常に聴きやすい。フルオーケストラとアコギのバランスを取るのは相当難しい作業だが、ストレスなく楽しめる。桑原が作曲した「憧れのカフェ」は軽快なジャズ・ビートのインストで、桑原のエレキギターが躍動して楽しかった。

場面に応じて、メンバーの出入りが頻繁に行なわれる。そこも通常のライブとは大きく異なっている。野田がピアノの前に座って弾くインストもストリングスとよく絡んで、映画のストーリーをサポートしてライブはスムーズに進行する。

ガツンと来たのは「前前前世」だった。ドラムが入る曲は、やはりロックバンドのエネルギーが画面より先行する。フォーラムいっぱいにRADWIMPSサウンドが響き渡り、満員のオーディエンスを包み込む。ただ、パッションあふれる演奏が終わっても、拍手は起こらない。ゆるみなく映画のストーリーが進んで行くので、なかなか拍手をする“間”がないのだ。なので、少しもどかしいような不思議な感情を抱えながら、コンサートは進んでいったのだった。

野田が書いた「御神体」では、徳澤青弦によってアレンジされたストリングスが美しく響く。続く「デート」では、野田のピアノのシンプルな音色がフォーラムを温かく満たす。

ここまで映画&ライブを観覧していて、思うことがあった。映画『君の名は。』は、好評の一方で、「RADWIMPSのPVのようだ」という感想を言う人もいた。こうしてRADWIMPSの生演奏で映画を観ていると、その意見も分かる気がする。RADWIMPSは映画の時間軸に沿ってパフォーマンスをしているのだが、感情表現において何度も映像を上回ってしまう。映像と音楽に“主従関係”はないはずなのだが、ライブで接しているとどうしてもそう感じてしまう。特に東京フィルハーモニー交響楽団が、完全に映像を主として演奏しているので、その差を否応なく感じてしまうのだ。

別の見方をすれば、新海誠監督と、サントラの大半の曲を書いた野田洋次郎の世界観は、非常に近いと言える。時間を超越した物語や、心と身体が入れ替わるキャラクター設定を使って伝えたいことが、新海と野田は一致する部分が大きいのだろう。「RADWIMPSのPVのようだ」という言い方が成り立つなら、『君の名は。』は「音楽のような映画だ」と言っていいのかもしれない。

それにしてもRADWIMPSは、バンド演奏だけでなく、ギターやピアノのインスト部分でも存在感を発揮して、映画を“リード”していったのだった。

ストーリーが佳境に差しかかり、大規模な災害が起こったり、主人公たちが巡り合うシーンでは、迫力ある音楽がオーディエンスに向かって大音量で鳴らされる。中で野田がピアノで3連符のアルぺジオを弾きながら歌った「スパークル」がよかった。桑原のリリカルなギター、武田の伸びやかなベースプレイが、永遠の感情を描く。映像とは一線を画す、音楽の役割を立派に果たしていた。

クライマックスでは「なんでもないや」が演奏される。ティンパニーの音が加わったRADWIMPSの音が、大会場に高らかに響き、この映画の壮大なテーマを歌い上げる。アカペラで始まるバージョンの途中で、映画はついにエンドロールに入った。RADWIMPSのサウンドを、ハープが優しく包む。野田の歌に熱がこもる。終わって、大きな拍手が巻き起こった。その拍手はどんどん高まっていき、メンバーと指揮者が舞台を去っても鳴り止まなかった。

アンコールでステージに戻ってきた野田は、「最後です。みんな立っていただいていいですか? 一緒に歌いませんか? 出し切って楽しみたいと思うので。今日は本当にありがとうございました」と言って、もう一度、「前前前世」を歌い出す。手を上げる人、リズムに合わせてハンドクラップする人、サビの前に野田が右手で会場をあおると、みんながメロディを歌い出した。本編上映の間、溜めていた感情があふれ出す、感動のエンディングとなった。

RADWIMPSの3人はオーディエンスへ深々とお辞儀をし、オーケストラに拍手を贈り、野田は指揮者の栗田と握手を交わしてステージを後にした。音楽シーンにとっても、映画界にとってもエポックメイキングなプロジェクトは、こうしてエンディングを迎えたのだった。ロックバンドとアニメ映画の本格的なコラボは、このライブを行なうことで、堂々と完結することができたのだと思う。

文 / 平山雄一 撮影 / ヤオタケシ
©2016「君の名は。」製作委員会

『君の名は。』オーケストラコンサート【RADWIMPS / 東京フィルハーモニー交響楽団】
2017年12月4日 東京国際フォーラム ホールA
SET LIST

 1.夢灯籠
2.三葉の通学
3.糸守高校
4.初めての、東京
5.憧れカフェ
6.奥寺先輩のテーマ
7.ふたりの異変
8.前前前世
9.御神体
10.デート
11.秋祭り
12.記憶を呼び起こす瀧
13.飛騨探訪
14.消えた町
15.図書館
16.旅館の夜
17.御神体へ再び
18.口噛み酒トリップ
19.作戦会議
20.町長説得
21.三葉のテーマ
22.見えないふたり
23.かたわれ時
24.スパークル
25.スパークル
26.デート2
27.なんでもないや
28.なんでもないや
EN.前前前世

その他のRADWIMPSの作品はこちらへ

 
vol.219
vol.220
vol.221