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今だからもう一度ガンダムと向き合いたい。“ガンプラ世代”のための『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』入門

今だからもう一度ガンダムと向き合いたい。“ガンプラ世代”のための『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』入門

現在40代の男性の多くは、ローティーンあるいはプレティーン時代にガンプラブームに遭遇し、熱狂した記憶があるのではないだろうか。この世代は『機動戦士ガンダム』という作品に感銘を受けたいわゆる“ファーストガンダム世代”より遅れてガンダムの洗礼を受けた“ガンプラ世代”にあたるが、子供には正直あのストーリーは難しかった……。以降、アニメのストーリーはさておきホビーとしてガンダムを堪能した方、あるいはそのまま離れてしまった方などいろいろいるとは思うが、昨今ファーストガンダムをリビルドした『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の映像化が展開している。ここでは、あの頃劇中では語られなかった1年戦争以前の話が描かれている。本作は、かつての『ガンダム』が難しくて分からないまま大人になってしまった“ガンプラ世代”にこそ観てもらいたい作品なのだ。

文 / 田中尚道(クリエンタ)


ギネスブックに載るくらい売れていたガンプラ

MS-06C ザクⅡ(『機動戦士ガンダム THE ORIGIN V 激突 ルウム会戦』より)

本題に入る前に昔話でも。ご存知の方も多いとは思うが、TVアニメ『機動戦士ガンダム』は、1979年に放送されるものの、放送時の視聴率は振るわず、放送終了半年経ってから発売されたプラモデル(いわゆるガンプラ)が爆発的にヒットするという皮肉な現象に見舞われている。放送当時小学1年生だった筆者も、初回放送時の記憶はない。学校で一部年長の兄弟がいる友達が何か言ってた気もするが、それぐらいの話だ。テレビの話題のメインは『8時だョ!全員集合』だったりしたそんな時代。それが、3年生になろうかというあたりからガンプラがホビーとして認知されていき、町のプラモ屋で手に入らないという状態になった。

当時は人口1万人あたり1軒のプラモ屋があったそうで、どこの町にもプラモ屋があった。プラモ屋は駄菓子屋同様、子供たちの社交場であり情報交換も教室以外にそこで行われるわけだが、やれ「週末にはどこそこのデパートに入るらしい」とかそんな情報を聞きつけては友人たちで買いに行くツアーが組まれたりしたものだ。とはいえ、小学校低学年だからなかなか遠くに行かせてもらえない。時に友達の保護者を仕立てて行ったりするものの、小学生低学年が知っている情報は周りの高学年も知っている。なので、どこでも大行列(昔は何をするにも並んだ)。その後も新商品が発売されると並び、劇場版が上映されると並びと、行列に並んだ記憶ばかりが思い起こされる。また並んだから買えるというものでもなく、並んだ挙句残ってたのが「シャア専用ムサイ」だったときのガッカリ感(別にシャア専用ムサイが欲しくないわけではないのだが、専用艦なので、1隻あれば十分なのだ。シャア専用ザクも同様)。

ムサイ級軽巡洋艦 初期量産型イオージマ(『機動戦士ガンダム THE ORIGIN V 激突 ルウム会戦』より)

劇場版が公開されるタイミングだったか、バンダイのプラモデルのCMがジオン開発工場のジオラマバージョンになったときは、居並ぶザクに戦慄したものだ。「300円のザク1個買うのに大変な思いをしているのに、ジオンはスゲーな」とか、のんきに考えていた。ジムの発売はかなり遅かった記憶があるが、そのころになると量産型モビルスーツはたくさんあってなんぼだったので、お兄さんがたに買い占められなかなか買えなかった。

そこには“大人の入り口”があった

そんなガンプラ人気を後押しするようにTVシリーズの再放送も頻繁に行われていたが、15歳のセンシティブなアムロに感情移入するには幼すぎ、ニュータイプとかはさっぱりわからない。ニュータイプに関しては劇中でも「エスパーみたいなもの」とざっくり言われているのみで、そのころ流行っていたサイオニクスものに比べてもなんともうすぼんやりした理解しかなかった。テレパスって電話みたいに明確に意思疎通できるものという認識があったからだ。

ララァ・スン(『機動戦士ガンダム THE ORIGIN IV 運命の前夜』より)

学年が上がるにつれ、大規模破壊兵器を制限した南極条約や、地球連邦による大規模反攻作戦「オデッサ作戦」などの専門用語の理解はできたが、ニュータイプだけはかなり大人になるまでわからない。当時の子供たちは、友達とああでもない、こうでもないと議論(のようなもの)をしながら何とか作品世界を理解しようと努めていたのだ。ガンプラを求めて生活圏の外に出る、物語を理解するために友達と話し合う。大人の入り口がそこにあったのだと今になれば思える。とはいえ、子供だった僕らの興味はどんどん移っていくもの。小学校高学年になるころのガンプラはMSバリエーションシリーズにシフトしていくが、そこまで付き合っているのはかなりのコア。ほかの友達は野球やったり、ぼちぼち認知されてきたファミコンで遊びだしたりと、ホビーも多様化。逆にあの頃「趣味はガンダム」と言い切ってた連中は、今でもガンダムが大好きだ。

再構築によってわかりやすくなった物語

『機動戦士ガンダム』のストーリーはアムロの視点とシャアの物語がベースになるわけだが、シャアの物語は直接語られることがほぼなかった。それでもジオン・ズム・ダイクンという思想家が暗殺されて、シャアと名を変えた息子のキャスバル・レム・ダイクンが父の仇を討つために暗躍していることくらいは分かるわけだが、せいぜいがシャアの行動の動機付けくらい、スパイス程度の扱いだ。

ギレン・ザビ、キシリア・ザビ(『機動戦士ガンダム THE ORIGIN IV 運命の前夜』より)

『機動戦士ガンダム』の放送からぼちぼち40年が経つが、その間にいろいろな設定、解釈が加えられた結果、当時キャラクターデザインとアニメーションディレクターを務めた安彦良和の手で2001年に『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(以下『THE ORIGIN』)の漫画連載がスタート。その後10年をかけて1年戦争終結までを描き切っている。また2015年よりアニメ化され、こちらは漫画版とエピソードの並びを変えて宇宙世紀の古い順、つまりシャア(キャスバル)、セイラ(アルテイシア)の幼少期から物語がスタートする。これによって金髪碧眼の王子が奸臣にその座と父を奪われ復讐に燃えるというシャアのストーリーが明確になるだけでなく、宇宙移民であるスペースノイドと地球に暮らすアースノイドの確執、キャスバルの父、ジオン・ダイクンが提唱した人の革新「ニュータイプ」への提言、機動歩兵であるモビルスーツの開発史が描かれファーストガンダムにあった複雑さや不明点が解きほぐされているのだ。

現在アニメ版では『機動戦士ガンダム』の物語以前、1年戦争序盤のルウム戦役の前半まで来ているが、いよいよ後半が描かれる第6話「誕生 赤い彗星」は2018年の5月5日に劇場上映が決定している。

アニメで観るもよし、漫画で読むもよしの『THE ORIGIN』

シャア・アズナブル(2018年公開『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 誕生 赤い彗星』より)

さて、このアニメ版『THE ORIGIN』はクオリティが非常に高い作品となっていることもあり、リリースペースも非常にじっくり進行。2017年年末時点で視聴できるものは5話までとなっている。もちろんじっくりアニメを待つのも良いが、アニメを観つつ、ルウム編に入ったらコミックを読むというのも『THE ORIGIN』を楽しむ方法のひとつ。これからの年末年始の休みを活用すれば、コミックス版なら一気に完結まで楽しめる。連載時に刊行されていたコミックが24巻、のちに2冊を合本にした愛蔵版12巻が発売中だ(電子コミックでは通常版24巻)。

映像もコミックも配信されているというこのご時世、なんでも並んで買っていたあのころに比べると、家にいながら、さらに24時間いつでも楽しめるという点に時代の進化を感じざるを得ない。人はあんまり革新してないけど、時代は確実に進歩している。

ちなみにニュータイプについてこの歳になって思うのは、多分「すごく空気が読める人のこと」なんだろうなということ。『THE ORIGIN』でもニュータイプは出てくるが、どちらかと言えば「宇宙世紀」という架空の歴史を描く大河作品であり、新兵器の開発の苦労話であったり、政治的な駆け引きであったりといった中年好みのエピソードがてんこ盛り。あの当時を懐かしみつつ、40年近い歳月が磨き上げてきた物語を楽しんでほしい。

Blu-ray&DVD
機動戦士ガンダム THE ORIGIN

I~V
発売中

販売元:バンダイビジュアル

機動戦士ガンダム THE ORIGIN 誕生 赤い彗星

2018年5月5日より全国35館にて劇場上映予定【4週間限定】

【あらすじ】
宇宙世紀0079年1月23日、戦場はルウムにうつり、ジオン、地球連邦の両軍の戦いの幕が切って落とされた。

ジオン軍の若きエースパイロット、シャア・アズナブルは、自ら駆る赤いモビルスーツ「ザク」による目覚ましい活躍で名声を上げ、「赤い彗星」の異名をとるようになった。

そして激戦の末、和平交渉のテーブルにジオン、地球連邦がそろったとき、ある声明が世界中に発信される。

一方、地球連邦軍は反撃すべく「V作戦」を計画する。

そのころ、サイド7の平穏な日常のなか、少年アムロ・レイは自ら行動し、新兵器「ガンダム」の秘密を探りつつあった…。

© 創通・サンライズ

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『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』  © 創通・サンライズ イラスト/安彦良和

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