Interview

ねごと 5thアルバムのタイトル『SOAK(ソーク)』=“沁み込む”に込めた思いとは。進化していくバンドのビジョンを蒼山幸子に訊く

ねごと 5thアルバムのタイトル『SOAK(ソーク)』=“沁み込む”に込めた思いとは。進化していくバンドのビジョンを蒼山幸子に訊く

ねごとが今年2枚目となる通算5枚目のアルバム『SOAK(ソーク)』をリリースした。サウンドプロデューサーに中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)と益子樹(ROVO)を迎えた「アシンメトリe.p.」(2016年11月発売)でエレクトロなダンスビートを獲得した彼女たちは、今年2月に4thアルバム『ETERNALBEAT』、6月に10thシングル「DANCER IN THE HANABIRA」、8月には11thシングル「空も飛べるはず/ALL RIGHT」と立て続けに新作を発表してきた。バンドでメインのソングライティングを務める蒼山幸子(Vo、Key)にハイペースに活動する理由を訊いた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 荻原大志

バンド感のある、ライブでも映えるバランスで作れたらいいねっていうのはありました

前作から10ヶ月という短いタームでニューアルバムがリリースされました。デビュー8年目のねごとの活動の中ではかなりハイペースな1年ですよね。

そうですね。でも、2月に出したアルバム『ETERNALBEAT』を作ってる時には、映画『トリガール』のタイアップとして、シングルが出ることが決まっていて。だから、「空も飛べるはず」と「ALL RIGHT」は去年の年末には録っていたんですね。8月にはシングルが出るっていうことも決まった上で、2017年がスタートして。自分たちとしは、とにかく曲を作りたいっていうモードだったので、もう1枚のアルバムをゴールに設定して、加速を止めずに出したいねっていうのをみんなで話して決めてたんです。しかも、あの2曲は割とバンドサウンドだった。でも、いまのねごとがやってたのは、エレクトロのダンスビートで、そっちもいまの自分たちのモードとしてあるので、ちゃんとそれを裏づけできるようなシングルを夏のシングルの前に出そうって話してて。

それが、6月に出た「DANCER IN THE HANABIRA」っていうことですよね。ちょっと振り返ると、『ETERNALBEAT』の前に「アシンメトリe.p.」があって。そこから加速してる印象ですが、その前が15年6月に出た9thシングル「DESTINY」だから、約1年半、空いてるんですよね。

その期間で私たちはライブをたくさんしてて。そこで、ライブをしている体感として、1曲1曲、「盛り上がってください」ってお客さんにお願いするのではなくて、ダンスビートをつなげていって、だんだん熱をあげていって、体を揺らしてもらうっていう方向性が、自分たちの性質にすごく合ってるなってことに気づいたんですよね。だんだん熱が通ってくっていう感じが、自分たちでも心地よかったこともあって。じゃあ、そっちの方向で作品を作っていこうっていうことで、中野さんや益子さんに入ってもらったのが、「アシンメトリe.p.」だったんです。

ニューアルバムにもお二人が参加してますが、ねごとにとってはどんな出会いになってますか?

簡単な言葉になっちゃいますけど、本当に大きい出会いだったと思いますね。音楽的なことも勉強させていただいたんですけど、それ以上にアーティストとて、クリエイターとして学ぶことが多くて。お二人とも、プロデューサーというよりはアーティストだなって感じる場面がすごく多かったんですよ。技術だけじゃない人柄だったり、音楽に向かう姿勢だったりを全力でねごとにもぶつけてくださったので、バンド力が上がるプロデュースをしてくださったなって感じてますね。

エモさが自分たちの中では大事だなって気づけたんですよね

今作に向かうにあたっては、何か前作との違いのようなものを考えてました?

『ETERNALBEAT』はエレクトロに振り切ったアルバムだったんですけど、ツアーで回ってみた時に、音源で聞くよりも、ライブの方がロックだし、エモーショナルだった気がしていて。そのエモさが自分たちの中では大事だなって気づけたんですよね。だから、次のアルバムは、もっとバンド感のある、ライブでも映えるバランスで作れたらいいねっていうのはありました。あとは、「空も飛べるはず」「ALL RIGHT」と「DANCER IN THE HANABIRA」っていう対極とも言える3曲がちゃんと同居しつつ、いまのテンションがちゃんと入ったアルバムにしたいなって話してましたね。

アルバムの中で、いまのテンションが一番表れてる曲をあげるとすると?

4曲目の「サタデーナイト」か、メンバーみんなが好きだって言ってくれるのは、3曲目の「WORLDEND」かな。いまのねごとのライブに取り入れても馴染みそうな曲調というか。4つ打ちで、ちょっとねごとっぽさもあるっていう。アルバムの曲順を決める時に、最初の3曲くらいって、一番アティチュードが出る気がする。こういうアルバムですよって紹介する3曲になるから、どうしようかってなった時に、まず、「DANCER IN THE HANABIRA」はインパクトがあるし、『ETERNALBEAT』から続いてやってることが明確な曲だから、1曲目にしようって決めて

『SOAK』っていう名前の通り、沁み込んでくるような感じの曲だなと思っていて

次が、藤咲佑がシンベを弾くダンスロック「INSIDE OUTSIDE」です。

一番流れが良かったんですけど、イントロから心にすっと入ってくるというか、それこそ、『SOAK』っていう名前の通り、染み込んでくるような感じの曲だなと思っていて。あと、リズムがサンバっぽいところがあるのが、好きですね。

アルバムのタイトルはどうして“ソーク”=“沁み込む”にしました?

最後に決めたんですけど、もともと、次のアルバムをどうしようっていうイメージの話をしていた時に、『ETERNALBEAT』は躍らせるアルバムだったので、さらに、ちゃんとエモさもあって、そこから一歩、深いところに行くようなアルバムにできたらいいねっていう抽象的な話をしてたんですね。その中で、日本語ですけど“沁み込む”っていう言葉は出てたんですよ。それで、アルバムができた時に、“ソーク”っていう言葉が一番ピッタリくるなと思って。本当に名前の通り、日常の中で聞ける、フィットする曲が多い気がしたんですよね。

ちゃんと聴いてくれる人の力になれるような曲を作りたいっていう気持ちが大きくなってきてるんですよ

サウンドも変化もありますが、歌詞の言葉も変わってきてますよね。

昔よりもリアルさが増してるかもしれませんね。元々の持ち味として、ドリーミーだったり、言葉遊びをしてみたりっていうことはあるけど、自分の気持ちとしては、ちょっと地に足をつけた状態で世界を見てるっていうモードでいて。おこがましいかもしれないけど、ちゃんと聴いてくれる人の力になれるような曲を作りたいっていう気持ちが大きくなってきてるんですよ。聴く人によって、聴く場所や時間は違っても、よし!って思えたり、少しでも共感してもらえるところがあるといいなと思ってて。ちゃんとその人が大事にしているものを肯定しているような気持ちになってもらえるような、手を差し伸べているような、自然なあったかさがあるアルバムにしたいなっていう気持ちで書いてますね。

3曲目の「WORLDEND」はラブソングとして共感する人が多いと思いますよ。タイトルは直訳すると「世界の終わり」だけど。

詞先で作った曲なんです。<さよなら 初めまして 世界をふちどったふたり>という頭の歌詞が出てきて。そこから、恋愛してる状態だけど、好きとか愛してるとかじゃない気持ちっていうのを言葉で表そうとした時に、<ワールドエンドに鉢合わせても大丈夫だよなんて言えるくらいにもう好きみたい>っていう表現が自分の中でしっくりきて。ある種のムードみたいなものが伝わるといいなと思って書きましたね。

「あなたは頑張りすぎないほうがいいと思う」っていう明確なアドバイスをくださって(笑)

そして、4曲目がリード曲「サタデーナイト」です。

曲調はアゲアゲのダンスではなくて。この曲に行き着くまでにいろいろあって。私が0から作って、みんなや中野さんに投げるっていう作業だったんですけど、自分の中ではやっぱりリード曲は盛り上がるような曲がいいのかなと思ったんですね。だから、ちょっと無理して作ってしまっていた時期があって。最初に中野さんに、仮のリード曲のデモを投げた時に、「いや、この曲はちょっと考えすぎてると思う。幸子ちゃんの良さはそれじゃないと思う」ってはっきり言ってくださって。「あなたは頑張りすぎないほうがいいと思う」っていう明確なアドバイスをくださって(笑)。じゃあ、ちょっと肩の力を抜いて、いま思ってることを素直に書こうと思って書いたのが「サタデーナイト」なんです。

これまでのねごとにはないような、ちょっと重ためのビートミュージックになってます。後半はEDMっぽく広がっていきますが。

そうですね。この曲をリードにするのも挑戦なんですけど、ゆっくりとねごとの世界に引き込んで行くぞっていう良さはちゃんと伝えたいなと思って。全体的に壮大だし、この重厚感をちゃんと聞いてもらえる位置はここかなってことで、4曲目にしました。

「WORLEND」のあとの「サタデーナイト」の歌い出しが<バイバイ世界>っていうのは?

あはははは。並べたらそうなっちゃったんですけど。そうやって思う夜もあるかなと思って。大げさな話じゃないと思うんですよね。自分が普段、聞いていて救われる音楽って、必ずしも、表面的に明るいことを言ってる曲じゃなかったりする。切なかったりしても、なんか元気になれたりすることもあるので。そういう、どうでもいいやみたいな夜ってきっと誰にでもあるし、そこからちょっとだけ前に進める瞬間みたいなのを書けたらいいなと思って書きました。なので、異世界の話ではなくて、本当に、或る土曜日の夜の話っていうところにフォーカスを当てて書いてますね。

ここまでは四つ打ちのビートで繋がってるんですが、続く「Fall down」は80年代風のブギーファンク〜アーバンR&Bになってますよね。

ちょっと雰囲気が変わる曲なので、折り返し地点に入れると、空気を変えてくれる気がして。こういうタイプの曲、あまりなかったので。ちょっと渋めの曲ですね。このあとの「moon child」と「undone」は益子さんと一緒にやったんですけど、益子さんは「歌を録るときは部分録りじゃなくて、ライブみたいに最初から最後までちゃんと歌って、その中でいいテイクを選ぶ」っていうのがポリシーなんですよ。「時間の経過も音楽だから」っていうのが益子さんの概念なんです。最初に一緒にやったときはびっくりしたんですけど、結果的に、いつも生き生きした歌になってるから、すごいなと思って。この曲は速いし、難しい曲なんですけど、情熱的に歌えたかなと思ってます。

「moon child」はドラムンベースですよね。しかも、打ち込みじゃなく、バンドサウンドの。

ROVOも人力でどこまでできるかっていうバンドだし、ねごとらしい疾走感とスペーシーさをちゃんと持ち合わせた、ライブですごく映えそうな曲になったなと思います。この曲は、みんなで歌える場面が多いんですよね。ツアーのリハでみんなで合わせてみると、すごいエモいなと思ったので、実際のツアーではもっと爆発しそうな予感がしてますね。

この辺からバンドサウンドが増してく印象です。シューゲイザー寄りの「undone」があり、シングル「ALL RIGHT」を挟んで、「シリウス」はドラムをドカドカ叩くロックになってます。

あははは。「シリウス」はまさに小夜子が瑞紀に「ドラムをドカドカ叩く曲をやりたい。ロックな曲もやりたい」って言ってて。割とアレンジもそのまま付き進んで言った曲ですね。

そして、最後が静かなるエコーがまさに身体に染み込んで行くようなエレクトロニカ「水中都市」が収録されています。

一番最後にレコーディングした曲だったんですけど、中野さんに「水中都市」が最後の曲になりますってお伝えしたら、この曲をすごい気に入ってくださっていて。実は「DANCER IN THE HANABIRA」を作ってた時にはできてた曲だったですけど、割とパーソナルな感じの曲だから、アルバムの真ん中にくるのであれば、そのパーソナルさでどきっとさせる立ち位置にしようと思っていたみたいなんですね。でも、アルバム最後の曲になるっていうところで、ちゃんと次に向かう感じというか。小さな部屋から流れ出て、海に行くようなイメージで終わりにしたいねっていうところで、新たに最後のメロディと歌詞をつけて。

ある種の女性性も恥ずかしくなく書けるようになってきたんだと思います

“あなた”と“私”が抱き合ったまま溶け合っていく夜を連想させます。

うん、そういう部分をかけるようになったのも自分の中で大きくて。ある種の女性性も恥ずかしくなく書けるようになってきたんだと思います。昔はもうちょっとぼやかしたり、にじませて書いてたかもしれないですけど、恥ずかしさも消えたのかもしれないし、割と素直に書けるようになったと思いますね。

さらに、ボーナストラック「空も飛べるはず」を含む全11曲が揃って、ご自身としてはどんな感想を抱きました?

すごくいいアルバムができたと思ってます。スピードとしてはすごく忙しなく作ったんですけど、その一方で充実感もあって。やっぱり、楽曲を制作したり、ライブをしたりっていうのがエネルギーに変わるバンドなんだなって思いましたし、個人的には自分の書きたいことが、昔よりも明確になってきて。例えば、「サタデーナイト」だったら、サバイブするんだっていうこととかを書きたいなと思ったりとか。ちゃんと、現実に生きている人たちに救いの瞬間を与えられるような曲を書きたいなって思えた。それが発見できたのがよかったなと思います。

今とはなっては「これがなし」がなくて、「なんでもできるよね」っていう状態なんですよね

バンドとしてはこれからどんな方向に向かっていきますか? 今作ではエレクトロやダンスロックに加えて、R&Bやファンク、シューゲイザーやドラムンベースもありました。

着実に武器を身につけて、レベルアップできているような感覚はあります。エレクトロのアルバムを出したことによって、できることが増えたので、怖いものがどんどんなくなってるというか。今とはなっては「これがなし」がなくて、「なんでもできるよね」っていう状態なんですよね。そうすると、曲を作る時に規制がなくなる。だから、ジャンルで決めるわけではなくて、できた曲に対して、その世界観を的確に伝えるサウンドっていうのを、これからも探していくんだと思います、ねごとは。

一人一楽器という旧態依然としたバンドの役割も無くなってますし。

もはや、瑞紀のところにもキーボードがあって、佑ちゃんもシンベを持ってて。私もハンドマイクで出れる曲も増えたし、だいぶ、ライブの形も変わってきている。なんでもありな感じになってますね。

2018年はどんな1年になりそうですか?

アルバムのツアーが2月からなんですね。前回のツアーは、アルバムの発売日が初日だったので、あんまり音源を聞いてもらう間も無く始まってしまって。今回はツアーまで時間があるので、ちゃんと聴いてもらった状態でツアーを回れるし、ちゃんと作り込んでできる。まずはこのアルバムをちゃんと伝えられるように、ツアーを周り切りたいなっていうのが1つと。あとは、さっき言ったみたいに制作したり、ライブしたりしてる方が元気なバンドなので、止めないで、曲を作り続けたいなと思ってます。

まだ出し切ってないですか?

もちろん、毎回、自信を持って作ってるんですけど、作り終えると、まだできるなって思うんですよね。それは、ずっとそうだし、いまも変わってない。まだまだできるなっていうワクワクがありますね。

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ライブ情報

【ねごとワンマンツアー2018 SOAK】

2018年2月9日(金)【東京】LIQUIDROOM ebisuからスタート!

スケジュールの詳細はhttp://www.negoto.com/live.html

ねごと

蒼山幸子(Vo.&Key.)、沙田瑞紀(Gt.)、藤咲佑(Ba.)、澤村小夜子(Dr.)。
インディーロック、オルタナティヴロック、フォークロック、シンセポップ、ドリームポップ、エレクトロニカ、ダンスミュージック、様々な音楽ジャンルにインスパイアされ、自由な音楽を奏でる変幻自在実力派エレクトロニック ロック バンド、ねごと。
「儚さ」と「力強さ」を兼ね備えた透明感溢れる歌声を持つ蒼山幸子(Vo.&Key)と、バンドのサウンドクリエイトを全面的に手掛ける沙田瑞紀(Gt.)を中心に、踊るようなベースラインを奏でる藤咲佑(Ba.)と、幾多のアーティストからも客演で呼ばれるほどの実力派ドラマー 澤村小夜子(Dr.)からなる4人組。
10代限定の夏フェス「閃光ライオット」で審査員特別賞を受賞、10代の頃から注目を集め、大型フェスにも多数出演。2016年、中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)をサウンドプロデューサーに迎えた『アシンメトリ e.p.』をリリースし、ねごと流ダンスミュージックという新しい一面を開花させる。その後、2017年2月にはアルバム『ETERNALBEAT』を完成させ、その真価を発揮。アルバムを引っ提げて全国10カ所にて、ワンマンツアー“TOUR 2017 ETERNALBEAT”を開催した。そして、『ETERNALBEAT』をさらに後押しする、中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)サウンドプロデュースによるNew Single『DANCER IN THE HANABIRA』を6月にリリース。さらに、今夏、映画『トリガール!』の主題歌 / 挿入歌を担当することが決定!主題歌は、スピッツの名曲「空も飛べるはず」をカバー、挿入歌はねごとオリジナルの新曲「ALL RIGHT」。8月30日に、Double A Side Single「空も飛べるはず / ALL RIGHT」としてリリース。そして12月13日には、前作「ETERNALBEAT」から、約10カ月というハイペースで5枚目となるフルアルバム「SOAK」(ソーク)をリリース。今年3月にZepp DiverCityで開催された「ねごと ワンマンツアー2017“ETERNALBEAT”」ツアーファイナルも模様を収めたLIVE DVD / BD「“ETERNALBEAT”TOUR 2017」も同日発売する。

オフィシャルサイト
http://www.negoto.com/