Interview

『勝手にふるえてろ』渡辺大知&北村匠海、同じ立場の二人が共鳴し合った音楽と芝居の捉え方

『勝手にふるえてろ』渡辺大知&北村匠海、同じ立場の二人が共鳴し合った音楽と芝居の捉え方

芥川賞作家・綿矢りさの小説『勝手にふるえてろ』が、松岡茉優の主演で実写化される。妄想世界の王子様〈イチ〉と、突然告白された会社の同期〈ニ〉の間で揺れる、ひねくれていて自分勝手、さらに夢見がちなヒロイン〈ヨシカ〉とのトライアングルは、誰もが感じたことのある胸の中の青く、痛い経験を刺激するラブコメディに仕上がっている。本作で〈イチ〉を演じ、若手実力派として次々と出演映画が公開される北村匠海(DISH//)と、〈ニ〉を演じた個性派・渡辺大知(黒猫チェルシー)の対談が実現。ミュージシャンとして活動しながら俳優としてもキャリアを重ねる二人が、率直な思いを語り合う興味深い内容となった。

取材・文 / 吉田可奈 撮影 / 三橋優美子

〈イチ〉は体操服姿さえカッコいい!? 映画監督に挑戦してみたい北村「渡辺さんはすべてにおいてすごい」

本作で初共演となったお二人ですが、お互いの印象を教えてください。

渡辺 北村くんの、喋らずとも語る〈イチ〉感が素晴らしいなと思いました。セリフが多いわけではないのに、存在感が素晴らしいんです。劇中で、〈イチ〉が体操服を着ているシーンがあるんですが、それさえカッコいいんですよ! 普通、体操服って絶対にカッコ悪くなるじゃないですか。

北村 いやいや、結構恥ずかしかったですよ(笑)。

渡辺 はっきり言って、それがジェラシーでした(笑)。

北村 あはは(笑)。僕自身は、渡辺くんのバンド・黒猫チェルシーを知っていましたし、バンドのボーカルというポジションでいながら純粋にお芝居をしていることが、僕と同じ立場だったので、お会いすることがすごく楽しみだったんです。それに、僕自身、映画監督に挑戦してみたくて、来年できたらやってみたいと思っているんです。渡辺くんはすでに映画監督も経験されているので(2015年公開の映画『モーターズ』)、クリエイターとしても興味がすごくあったんですよね。その監督経験もあるからか、撮影中は脚本には書かれていないこともやっていて、役者という枠を飛び越えて、演者以上の感覚を持っている方だなと感じました。先輩の渡辺さんはすべてにおいて「すごい」と思いました。

渡辺 わぁ……、そう言ってもらえると嬉しい! でも、北村くんは20才で年下だけど、芸歴で言ったらゴリゴリ先輩だからね!?

北村 あはは(笑)。

お二人の共演シーンは少なかったですよね。

北村 はい。撮影としては1日だけでしたね。

渡辺 エレベーターのシーンだよね。

北村 あのシーンで、〈ニ〉が奇跡的に自動ドアの隙間をすり抜けるんですよ。その姿が忘れられなくて!

渡辺 一発OKだったよね(笑)。あの後の会話のシーンは何度か撮り直したんですが、自動ドアのすり抜けには自信がありました!

音楽と映画、どちらか一つだと「自分が成立しない」(渡辺)、「バランスが崩れるんです」(北村)

お二人とも、ミュージシャンをしながら俳優活動もされていますが、改めて話したいこともあるのではないでしょうか。

渡辺 そうですね。でも、撮影中は一緒の現場になることが多くはなかったので、この取材でようやく北村くんと話ができたんです。音楽や映画の話ができたら楽しいだろうなと思ってはいたんですが、実はまだ探り探りなんですよ(笑)。

北村 僕はずっと「音楽とお芝居をどう捉えているのか」を聞きたかったんです。

渡辺 いきなり深いな(笑)!

北村 あはは(笑)。僕自身、あまり同じ境遇の人と出会ったことがないので、すごく興味深いんです。僕は、役者のお仕事は真っ白い状態で、監督に色を付けてもらうお仕事だと思っているんです。だから、自分は常に真っ白でいたいんですよね。もっと言えば、“北村匠海”の個性をいかに殺せるかが“役者”であり、“北村匠海”のブランドを磨いて表現するのが“音楽”だと捉えているので、同じ表現でありながら、全く違う感覚なんですよ。

渡辺 すごくよくわかるよ。僕の場合は、顔や目など表面に見えているものではなく、見えない体の中にある“匂い”を出したいと思っているんです。それが、音楽や映画ならできるんじゃないかと思って、音楽も芝居も一緒にやっているんです。もっと言えば、その二つを一緒にやることで、バランスを取っているんですよ。

北村 そのバランス感、僕もすごくよくわかります。

渡辺 どちらか一つじゃ、自分が成立しないんだよね。両方をやっていて面白いのが、北村くんの言ったように、役者の時は「いかに自分を殺せるか」を考えるし、「自分は消えてなくなればいい」って思うんだけど、完成した映画を観ると、そう思っているときの方が自分が出ちゃっているんですよ。それに、音楽を作っていて「俺を見ろ!」という気持ちでやればやるほど、僕じゃなくなる感覚があるんです。つまり、すべてが表裏一体で、自分と自分じゃないものは紙一重なんですよね。だから、相手にどう感じてほしいかなんて、自分が決めることじゃないって思ったんです。自分のオリジナリティは、僕を見て何かを感じた人からもらう言葉で決まること。だから、ずっと“自分探し”は続いていくんだと思うんです。それを僕は、音楽と映像のお仕事をする中で探していきたいんです。

北村 すっごくよくわかる! 周囲の人には、「音楽と俳優、両方やっていてすごいね」って言われるんですが、僕からしたら、どちらかが欠けたらバランスが崩れるんです。役者だけでも面白みがなくなるし、両方やっているからこそ、自分に新しいものがどんどん生まれてくるんです。

渡辺 僕は一度、ものすごく悩んだ末に、2年ほど役者の仕事を断っていた時期があったんです。でも、結局はバランスが崩れて曲が全く書けなくなったんです。そのときに、役者と音楽、2つを両立しようとするからダメなんだってわかったんです。僕にとって、芝居と音楽は2つで1つ。バンドだけをやっている方が良いと言う人もいると思うんですが、それが自分に当てはまるとは限らない。自分のやり方を自分らしくやることがカッコいいんじゃないかなって思うようになったんです。

役者の活動が音楽に、音楽が役者の活動に反映されているんですね。

北村 はい。この映画でも、朝まで待ってみた朝日がすごく綺麗だったり、色や匂いなどはこれから鳴らす音楽に生きていくんだろうなと思いました。

渡辺 僕は初めてこの作品で、出演する映画の主題歌(「ベイビーユー」)を担当させていただいたんですが、これも〈ニ〉を演じたからこそ書けた曲だと思うんです。

〈ニ〉の気持ちになって書けたということでしょうか。

渡辺 最初は、〈ニ〉の気持ちで書こうとしたんです。でも、それではどこかが“嘘”になってしまう気がしたんですよね。そんなときに、完成した映画を観たら、純粋に僕、渡辺大知自身が感動したんです。そのときに溢れた気持ちをラブレターにしたためて、この映画にプレゼントするような気持ちで書きました。

北村 僕が最初にこの曲を聴いたときに、「〈ニ〉だな」って思ったんですよ。しっかりと映画の世界観も表現されていたし、〈ニ〉の気持ちが描かれていたので、すごく素敵だと思ったし、「悔しい!」と思いました。

渡辺 わ~、嬉しい! そう感じてもらえたら本望ですね。