モリコメンド 一本釣り  vol. 44

Column

リーガルリリー オルタナの遺伝子を継承した彼女たち。鋭利なメッセージ性をどこまでもポップに描写

リーガルリリー オルタナの遺伝子を継承した彼女たち。鋭利なメッセージ性をどこまでもポップに描写

奈良県在住の3ピースバンドAge Factory、今年メジャーデビューを果たしたガールズバンドthe peggies、来年2月に1stフルアルバムをリリースするThe Wisely Brothersなど、現在の日本のロックシーンにはオルタナティブロックの影響を感じさせるニューカマーが次々と登場している。90年代オルタナを代表する金字塔的名作「ネヴァーマインド」(ニルヴァーナ/1991年)のリリースから25年以上が過ぎ、当時のことを知らない、というか、この世に生まれてさえいない90年代後半生まれの“若者たち”——ちなみにサニーデイサービスの傑作「若者たち」のリリースは22年前の1995年です——がオルタナティブ系バンドを再発見し、どこまでも自由に自分たちの音楽性に取り入れ、懐かしさと新しさを内包したサウンドへと導く。そんな刺激的なケミストリーが同時多発的に起きているのだ。ポップでダンサブルなギターロックが主流になって、早数年。ブラックミュージックをルーツにしたバンド(Suchmos、ceroなど)が頭角を現す一方、オルタナを経由したバンドが少しずつ増えているのは90年代が青春だった筆者にとっても嬉しい限りだが、今回紹介する“リーガルリリー”もそのひとつ。昨年10月に発表された1stミニアルバム「the Post」、そして今年7月にリリースされた「the Radio」によって確実に注目度を高めている、たかはしほのか(V/G)、ゆきやま(Dr)の女子ふたり組だ。

たかはし、ゆきやまを中心にリーガルリリー結成されたのは3年前、2014年の夏。その後初代ベーシストが脱退し、白石はるかが加入したのをきっかけに彼女たちはいきなり活動のペースを上げはじめる。翌年5月に1stミニアルバム 「regal lily」を東京3店舗限定でリリースすると、これが即完売。 さらに同年8月にTOKYO FM「SCHOOL OF LOCK!」未確認フェスティバル2015 準グランプリ獲得、2016年5月には海外ツアー「Next Music From Tokyo vol.8」に参加し、カナダ3都市でライブを敢行。 同年10月19日に初の全国流通盤1st ミニアルバム「the Post」を自主レーベル「Biotope records」よりリリース、2017年1月に放送されたテレビ番組「関ジャム完全燃SHOW」で音楽プロデューサーの蔦谷好位置が「2016年のベスト10曲」で彼女たちの「リッケンバッカー」を選出すると“10代とは思えない歌詞の世界観がスゴイ!!”と大きな話題を集めた。

2017年7月5日には2ndミニアルバム「the Radio」リリース。続く東名阪レコ発ツアー全公演、9月30日に開催された渋谷WWW ワンマンライブをソールドアウトさせるなど好調な活動を続けてきたが、白石はるかがバンドを脱退し、たかはし、ゆきやまの2人体制に。わずか3年でまるでジェットコースターのように激しく動いてきたリーガルリリー。“一瞬も目を話せない”というドキュメント性も、彼女たちの魅力かもしれない。

リーガルリリーのメインソングライターたかはしほのかの音楽的な原点は、ずばりニルヴァーナ。母親の影響で小さい頃からニルヴァーナの楽曲に触れていたという彼女は、その音楽的な特徴をナチュラルに受け継いでいる。性急なビート、ノイジーなギターサウンドを交えた緊張感のあるアンサンブル、そして、そのサウンドのなかでポップなメロディを響かせるセンスは、間違いなくニルヴァーナに代表される90年代オルタナの影響だといっていい。おそらく本人は無自覚にやっているのだと思うが。

オルタナの遺伝子を継承したリーガルリリーの楽曲が2017年のシーンで急激に受け入れられている最大の理由は、蔦谷氏も指摘しているように、たかはしが描き出す歌詞の世界にある。たとえば前述した「リッケンバッカー」。鋭利なギターサウンドともに放たれる
「きみはまいにちを中途半場に食べ残す。」というフレーズは、人生を無駄に費やしている多くの人たち(もちろん筆者を含む)の心を強く揺さぶるはず。鋭利なメッセージ性をどこまでもポップに描写できるセンスも素晴らしい。

新作「the Radio」のリードトラック「トランジスタラジオ」も秀逸だ。鋭さを増したギターフレーズ、生々しいグルーヴを感じさせるサウンド、ほんわかした雰囲気と繊細な感情を併せ持ったボーカルがひとつになったこの曲は、既に彼女たちの新しいアンセムとして受け入れられている。この瞬間、この場所でしか鳴らせない音をリアルに体現しているところも、彼女たちの大きな武器だろう。

2017年10月にゆきやまが、そして12月にはたかはしが20歳の誕生日を迎えた。10代をフルスピードで駆け抜けた2人がこれからどんな音楽世界を見せてくれるのか、いまから楽しみでしょうがない。

文 / 森朋之

ライブ情報

リーガルリリーpresents 「ありがとう、JAM」
2017年12月25日(月)  新宿JAM
OPEN 19:00 / START 19:30
出演:リーガルリリー、タグチハナ

リーガルリリー presents「夜のとばり、あけた窓辺」
2018年3月31(土) 恵比寿LIQUIDROOM
OPEN 17:00 / START 18:00

その他のライブの詳細はオフィシャルサイトへ


オフィシャルサイトhttps://www.regallily.com

vol.43
vol.44
vol.45