Interview

YUKIの新作は、彼女のリアルを封じ込めたメッセージソング。今だから歌える、思春期みたいな蒼さに包まれた作品について語ってもらった。

YUKIの新作は、彼女のリアルを封じ込めたメッセージソング。今だから歌える、思春期みたいな蒼さに包まれた作品について語ってもらった。

まるで思春期みたいな蒼さに包まれている。だけどそこにあるメッセージは、人生の経験に裏打ちされた確かな指標だ。YUKIのニューシングル「フラッグを立てろ」は、彼女がこれまで発表してきた作品のなかにおいては珍しく、いわゆる“メッセージソング”としてのたたずまいを見せる。前シングル「さよならバイスタンダー」に続き、テレビアニメ「3月のライオン」第2シリーズのオープニングテーマとしてオンエアされ、発売前から話題になっていた1曲だが、このシンプルなバンドサウンドと高ぶるメロディに、今のYUKIのリアルがぎゅっと封じ込められている。聴けばきっと、おのずと心がはやるはずだ。

取材・文 / 斉藤ユカ

13歳、14歳、15歳の頃に好きだなと思ったもののほとんどを、私は今も好きでいるんです

今作「フラッグを立てろ」を聴いて率直に感じたのは、15歳のときに聴きたかったな、ということなんです。大げさなものでは決してないけれど、でも確かに背中を押されるような、勇気づけられるような、そんな気がするから。

その感覚、すごくわかります。きっと私の根っこの部分で、好きなものがずっと変わらないからだと思うんですよね。大人になっていく過程で出会って大好きになった音楽ももちろんたくさんありますけど、13歳、14歳、15歳の頃に好きだなと思ったもののほとんどを、私は今も好きでいるんです。どんなに時間が経っても同じ人間だから、そうそう変われるものではないんでしょうね。

3月に発表した最新アルバム「まばたき」に収録されている「私は誰だ」を聴いたときも、実は同じことを思っていたんですよ。

私も大好きな曲です。ライブでは、テンポが速すぎて時々ついていけなくなりそうなこともあったんですけど(笑)、「まばたき」を作っていたときはそういう感覚を求めていたんですよね。バンドを始めた高校時代の頃のような、フレッシュな感じを味わいたかったし、久しぶりに自分が主人公の“私ソング”を歌いたくて。実際そこに無理がなかったから、曲がきちんと届いたのかなと思います。

そういう意味では、今作はまさにアルバムで描いた道の先にしっかりと立っている作品ですね。

そうですね。今回は「3月のライオン」の物語を踏まえた上で歌詞を書いているので、私のパーソナルなところを前面に出しているわけではないんですけど、それでもやっぱり今の気分はおのずと出てきますよね。それに、最初からパワーのある曲だったんだと思います。候補曲がいくつかあった中で、いちばんキラキラしていて、いちばん耳に残って、ずっと頭から離れなかった曲なんです。気づけば口ずさんでいましたね。

強いて言うなら「さしあたりこの行く末は どうやら喜劇になりそうだ」という一文が気に入っています

なるほど、理屈じゃないところで輝いていた曲。

そう思います。この曲に限ったことではないんですけど、私の曲たちが例えばラジオから流れてきたとき、いいメロディだな、いい歌詞だなって、1か所でも聴いてくれる人の心に引っかかるものがあれば、それでいいんじゃないかなと思うんですよね。というか、それさえあればいいかなって(笑)。

私は「おどけたふりしてたら いつのまにか笑いながら泣いてた」という歌詞にぐっとつかまれました(笑)。

そうなんですね(笑)。私は強いて言うなら「さしあたりこの行く末は どうやら喜劇になりそうだ」という一文が気に入っています。実はこの部分、レコーディングでリズムに合わせて歌おうとしたら、なんだか微妙に揺らいでいる感じがしたんですけど、それが逆に面白いなと思えたのでそのまま収録しました。もう二度と歌えないバージョンかもしれないので、実はこの部分が聴きどころかもしれないですね(笑)。

イントロのギターからすでにみずみずしい世界観が展開されていて、ちょっと泣きそうになります。

私もこのギターの音はすごく好きです。なんていうか、歩いているイメージがあるんですよね。今回の「3月のライオン」第2シリーズは、いわゆるいじめにあってしまう女の子のお話も描かれているんです。ふらふらしているけど、でも確かにずっと歩いている感じがして。四つ打ちのキックの音がまるで歩くリズムのようで、そこに合わせるように歌詞を書いていったら、自分で歩き出せ!というニュアンスの歌になりました。結局は自分なんだ、自分でしかないんだって。それは今までも歌ってきたことなんですけど、この曲ではそれがはっきりと輪郭を持ったような感じがします。

自分自身がやってきたことに印をつけたいんだ、ということを表現したかったんです

だいたいタイトルがパンキッシュですもんね。

命令形ですからね(笑)。タイトルは最後まで決まらなくて、「フラッグを立てる(仮)」で制作を進めていたんですけど、最終的に「フラッグを立てろ」にしてみたら、なんだかしっくりきたんです。旗を立てる人のイメージは、「3月のライオン」の映像を見たときにもう浮かんでいて、そこから歌詞が繋がっていきました。その旗はボロボロなんだけど、それでも自分自身がやってきたことに印をつけたいんだ、ということを表現したかったんです。

こんなにストレートなアプローチの曲、これまであまりなかったのでは?

そうかもしれないですね。まっすぐ。何も奇をてらっていないというか。レコード会社のスタッフも「YUKI的に新しい曲ですね」と言ってくれたんですけど、考えてみれば、確かにこういう曲調は今までになかったかもしれないです。レコーディングをしていたときがちょうどツアー中で、テンションが高かったことも多少は影響しているのかもしれません(笑)。

ちなみに、カップリング「yes」は、サンプリングを多用したゆるやかなグルーヴが印象的な楽曲ですが、歌詞に“自由のフラッグを立てて”というセンテンスがありますね。

それが、まったくの偶然というか、あくまで自然の成り行きだったんです。「フラッグを立てろ」を作ってから「yes」に取り掛かったんですけど、この曲は高い声ではない歌を入れたいなというところから始まったんですね。歌詞も例によって、メロディから呼ばれる言葉を拾って書いていきました。

てっきり「フラッグを立てろ」に呼応しての「yes」なんだと思っていました。音楽的には対極にある2曲だけれど、いわゆるアンサーソングなんだろうな、と。

言われてみれば…本当ですね(笑)。面白い解釈ですね。でもこうして、第三者がその人なりの解釈をして楽しんでくれているというのは、まさに音楽の自由ですよね。自分が思いもしなかったことがどんどん広がっていくのが、私としてはとても楽しいんです。実際は“誰もがyesと叫びたいわ”という一文が出てきたときに、yesという言葉の音感がとてもいいなと思ってタイトルにしたんです。

今になってようやくNOもYESもわかるようになってきたので、だからこそYESと言いたいですね

YESって、大人になってこそきちんと言える言葉ではないですか?

そうですね。すごくわかります。なぜなら、私はずっとNOを言うカッコよさを、10代から20代で追及してきたところがあるので(笑)。ただ、今思えば、NOと叫ぶ私をYESと受け入れてくれる人もたくさんいたんです。今になってようやくNOもYESもわかるようになってきたので、だからこそYESと言いたいですね。すべてを肯定するのはきれいごとのようですけど、でも信じて歌うことによって、少なくとも私自身は変わりますし、そしてそれが身近な人を通じてみんなに伝わっていけば、ほんの少しくらいは世界を変えていけるんじゃないかなって。「yes」の歌詞を書きながら、そんなことを考えました。

今の私があの頃の自分を歌うとこうなんだって、函館で歌っていて気がついたんです

かつてNOを掲げた自分さえもYESと受け入れられた、ということでもありますね。

実は最近、まさにそう感じた出来事がありました。今年、ツアー(YUKI concert tour “Blink Blink”2017)のファイナルを函館アリーナでやらせてもらったんですけど、そこで私、それまでずっと抱えてきた“恥ずかしい”という感情ときちんと向き合えたんです。函館で暮らしていた頃の自分のことが私は本当に恥ずかしくて、だけど、今の私があの頃の自分を歌うとこうなんだって、函館で歌っていて気がついたんです。ああ私は大丈夫になったんだ、って。あの頃の自分を受け入れられたんだ、って。10代の自分は今思ってもちょっとしょっぱいけど、でもそれほど悪くないんじゃないかなって、ステージで歌っていて思えたんですよね。函館でのライブは、以前からマネージャーに15周年は地元でやったらどうかと提案されていて、それはいいかもねと普通に受け入れていたことだったんです。でも実際にやってみたらピタッときて、自分でも驚きました(笑)。

では、10代の呪縛みたいなものから解き放たれたんですか。

そうかもしれないです。中学・高校時代だけではなくて、もっと小さな頃から自分が嫌だなと思っていたこと、あの感覚すら受け入れられたんです。それこそ、きちんとYESと言えたというか。

「フラッグを立てろ」も「yes」も、今の私だから書けた歌詞だろうなと思います

なるほど、しかるべきして辿り着いた今作なんですね。「フラッグを立てろ」も、仮に20代のときに同じテーマで書けばNOのニュアンスが強かったかもしれませんが、今はYESというポジティブさに溢れていますから。

確かにそこは大きな違いだと思います。そもそも20代のときの私は、きっとこんなにシンプルな世界観を描ききれなかったと思いますし、「フラッグを立てろ」も「yes」も、今の私だから書けた歌詞だろうなと思います。そういう意味では、「まばたき」を作ったときからみても、さらに前に進めているのかな、と。早くライブで歌いたいですね。私のなかでは、ライブをやることで作品が本当の意味で完成するという感覚がずっとあるんです。ステージでそれを感じるのが、今からとても楽しみです。

その他のYUKIの作品はこちらへ


【2018年1月31日、シングルコレクション/ライブビデオ同時発売決定】

・シングルコレクション「すてきな15才」

10周年時にリリースされたシングルコレクション『POWERS OF TEN』以降、2012年からの5年間で発表された『プレイボール』から最新シングル『フラッグを立てろ』までのシングル曲11曲に加え、未発表曲も収録してリリース。

[完全生産限定盤] (CD+DVD+付属品)ESCL 4970-2 ¥9,250+税
[初回生産限定盤](CD+DVD)ESCL 4973-4 ¥3,500+税
[通常盤] (CD Only)ESCL 4975 ¥3,000+税

・ライブビデオ「YUKI concert tour“Blink Blink” 2017.07.09 大阪城ホール」

最新アルバム『まばたき』のリリースとソロデビュー15周年を記念して開催した『YUKI concert tour“Blink Blink”2017』。その全8カ所13公演の中から、7月9日大阪城ホール公演の模様を完全映像化。

[Blu-ray初回生産限定盤](Blu-Ray+CD×2)ESXL 135-7 ¥9,000+税
[Blu-ray通常盤](Blu-Ray)ESXL 138 ¥7,000+税
[DVD初回生産限定盤](DVD×2+CD×2)ESBL 2510-3 ¥8,000+税
[DVD通常盤](DVD×2) ESBL 2514-5 ¥6,000+税

YUKI

1993年、JUDY AND MARYのヴォーカリストとしてデビュー。
2001年、JUDY AND MARYを解散後、2002年2月にシングル「the end of shite」でソロ活動を開始。先鋭的なサウンドや前衛的なビジュアルで独自の世界観を確立し、2011年までに、音楽チャートで1位を獲得したアルバム4枚を含む、6枚のオリジナルアルバムをリリース。
2012年5月、ソロ活動10周年を記念して開催した東京ドーム公演では、バンドとソロの両方で東京ドーム公演を行った女性ヴォーカリストとして“史上初”という記録を作り、約5万人を動員。その後も日本武道館2daysを含む全国ツアー「YUKI TOUR“BEATS OF TEN”」(22公演)を行い、同年12月31日、第63回NHK紅白歌合戦にもソロとして初出場。独特の歌声、表現、存在感は、あらゆる方面から多くの注目を集め、今後も音楽活動とそれに伴うライブ、アートワークの全てから目が離せない。

オフィシャルサイトhttp://www.yukiweb.net/