Interview

『おおきく振りかぶって』初舞台化。脚本・演出の成井豊と、バッテリーを組む西銘駿&猪野広樹が抜群のチームワークトーク!

『おおきく振りかぶって』初舞台化。脚本・演出の成井豊と、バッテリーを組む西銘駿&猪野広樹が抜群のチームワークトーク!

累計発行部数が1000万部を超え、第10回手塚治虫文化賞新生賞、第31回講談社漫画賞(一般部門)を受賞した大人気高校野球漫画『おおきく振りかぶって』(著者:ひぐちアサ)が、キャラメルボックスの成井豊の脚本・演出で初舞台化される(2月2日~2月12日サンシャイン劇場にて)。
スポーツを題材にした漫画やアニメは、何かしらの才能(例えば、ずば抜けた身体能力や高い技術力)を持った主人公が大活躍し、勝利を重ねていく展開が多いが、この“おお振り”の主人公はあることが原因で気弱で卑屈な性格になってしまったピッチャーで、無名の野球部に入部した主人公やチームメイトたちが様々な困難を乗り越えながら、その過程でそれぞれが何を掴み、いかにして人は他者との関係性によって変わっていくことができるのかを描いた物語だ。
今作の脚本・演出を手がけるキャラメルボックスの成井豊、気弱で卑屈な性格のピッチャー・三橋廉役の西銘駿、三橋とバッテリーを組むキャッチャー・阿部隆也役の猪野広樹に、舞台『おおきく振りかぶって』に対する想いと意気込みを聞いた。

取材・文 / 松浦靖恵 撮影 / 山野浩司
スタイリスト(猪野)/ 吉田ナオキ
衣装協力(猪野)/ ILL IT、OBLIVIO

ほかにはなかなかないスポーツ漫画。野球をやっていた僕としては共感できる部分が多かった

原作マンガ『おおきく振りかぶって』を読まれて、成井さんはこの物語はひと言で言えば“弱者の物語”であり、そこが自分の琴線に触れたとコメントされています。成井さんが弱者に惹かれるのはなぜなのでしょう?

成井豊 それは自分が弱者だからです。だからこそ共感するんです。この物語は弱者が不幸になる話ではないですし、弱者が弱者であること、自分が天才ではないということをちゃんと受け入れながらも地道に努力をして、それがちゃんと報われていく。それって特別な才能を持たない者にとって励ましになると思うんですよ。努力は無駄なものではなく、ひとつひとつの努力はきっと役に立つんだ、将来的に報われるんだということを、この作品はストレートに面白く訴えてくれるので、僕は非常に好きですね。今お話したことが、僕が『おおきく振りかぶって』を自分の手で舞台化したいと思った最大の理由です。

成井豊

成井さんご自身は野球経験がおありになるんですか?

成井 リトルリーグや野球部に在籍したことはないです。小学校4年から6年まで同級生とチームを組んで草野球をやっていたくらいですし、野球はもっぱら観るほうです。

西銘駿 どこの球団ファンなんですか?

成井 高校生まではジャイアンツ(巨人)だったけど、僕が高3のときに江川事件が起きて、西武ライオンズに変えました。

西銘駿

西銘さんと猪野さんは原作を読まれてどのような感想を持ちましたか?

西銘 成井さんもおっしゃっていましたけど、何か特別に長けているものを持っている人たちばかりが集まったわけではない野球部を舞台にしているので、ほかにはなかなかないスポーツ漫画だと思いました。努力や仲間たちのバックアップがあって成長していく物語のなかに、ピッチャーとキャッチャーの心情や試合をするなかでの球児たちの気持ちの変化などが細かな心理描写で描かれていたり、身体能力を上げるためのトレーニング方法や野球には何が大切なのかも描かれているので、野球をやっていた僕としては共感できる部分が多かったです。

成井 ポジションはどこだったの?

西銘 セカンドです。原作を読んで、ピッチャーってこんなことを思っていたんだな、みんなを背負いながら投げていたんだなって思いましたね。野球をやっていた中学時代に『おおきく振りかぶって』を読んでいたら、もっとピッチャーに対する優しさや支え方が違ったんじゃないかなって(笑)。

猪野広樹 学生時代の僕は野球をやっていなかったこともあって、部活で野球をやっている子たちを見て、なんでこんなに毎日みんなで校庭を走っているんだろうと思っていたんです(笑)。それこそピッチャーはひとりで戦っていると思っていたので、当時は野球に対して個人競技というイメージを持っていたんだと思います。でも原作を読み進めていくうちに、外野手や内野手は投手の背中を見ながら「打たれても俺たちが守る」という気持ちを持っていることやお互いを支え合っているんだなということを知ることができました。チームワークで勝負するのが野球なんだ、そのチームワーク感を顕著に表現しようとしていたのが『おおきく振りかぶって』なんだなと思いました。

猪野広樹

原作がある舞台の脚本・演出をするうえで、成井さんが譲れない部分は?

成井 原作を大切にするという一点が譲れないですね。自分がどうアレンジするかというその腕を見せる気はさらさらない。僕があくまでもやりたいのは、この原作の素晴らしさをお客さんに伝えることなので、そこだけは譲れないです。

原作漫画はいくつもの見せ場がある長い物語ですが、成井さんはどの場面を切り取って、どのように構成していこうと?

成井 限られた上演時間内で物語のすべてを具体化することはできないので、取捨選択はしますけど、物語の一部分だけをフィーチャーするということをいっさい行わないように作ります。「あの場面がないんだ」「あのセリフを言わないんだ」ということがひとつでも起きると、お客さんは残念に思うはずですし、なによりもこの物語に感動した自分がそんなことをしたくないんです。この舞台を観終わったあと、「どこを切ったの!?」「どこも変わっていないじゃん!」って、お客さんに言わせたい(笑)。これまでも自分が原作ものをやるときは、たいていそう言われるんですけどね(笑)。

西銘さんと猪野さんは先ほどから成井さんのお話を真剣な眼差しで聞き入っていますね。

猪野 成井さんの言葉のひとつひとつが身に沁みています。

西銘 僕も同じ想いです。僕は必死に演じるだけですけど、成井さんはもちろん、みなさんの期待に応えたいと改めて思いました。

お2人は成井さんと一緒にお芝居ができると聞いたときはどんな気持ちでしたか?

西銘 成井さんの舞台は役者として成長できる場所、たくさんのことが吸収できる場所なので、「成長したい!」と思いました。あと、周りのみなさんが喜んでくれたことがとても嬉しかったです。

猪野 僕はキャラメルボックスさんが大好きなので、僕にとって神様のような方とご一緒できることをとても幸せに思いました。あと、僕はちゃんと野球をやったことがないので、役を演じる前にまずルールを覚えるところからのスタートだなって思いました(笑)。