Interview

アニメ『結城友奈は勇者である』と独創的な音世界を徹底解説。岡部啓一(MONACA)が紡ぐ、“神秘のサウンド”の正体

アニメ『結城友奈は勇者である』と独創的な音世界を徹底解説。岡部啓一(MONACA)が紡ぐ、“神秘のサウンド”の正体

人々の役に立つことを勇んで行う部活動〈勇者部〉に所属する女子中学生たちの活動を描くTVアニメ『結城友奈は勇者である』(通称:ゆゆゆ)。2014年に第1期シリーズが放送され、回を追うごとに深まる謎と彼女たちを待ち受ける過酷な運命、意外性のあるストーリーが話題となり、最終回を迎えるころには熱狂的な支持を集めた。

そしてこの秋には、待望の続編となる第2期シリーズのTV放送がスタート。まず第1期の前日譚となる『結城友奈は勇者である -鷲尾須美の章-』が劇場先行公開を経てTVでオンエアされ、現在は続編にあたる『結城友奈は勇者である -勇者の章-』が放送中だ。

ここでは、本作の独特な世界観をさらに魅力的なものへと色付けしている、劇伴音楽および主題歌に焦点を絞って紹介。第1期から今回の新作までの音楽を一貫して手掛けているサウンドクリエイター・岡部啓一氏の発言と共に、〈ゆゆゆ〉の音楽的な魅力を掘り下げていく。

取材・文 / 北野 創

『エヴァ』や『まどマギ』とも共通点を持つ〈ゆゆゆ〉の構造

『結城友奈は勇者である』の舞台となっているのは、神世紀300年の四国という架空の世界。主人公の結城友奈(CV:照井春佳)ら〈勇者部〉の面々は平穏な日常を送っていたが、やがて自分たちがバーテックスと呼ばれる人類の敵から〈神樹〉を守るための勇者に選ばれたことを知らされ、戦いの日々に身を置くことになる。TVアニメ第1期では、彼女たちがボロボロになりながらも敵を倒すまでの姿が描かれ、今回放送された『結城友奈は勇者である -鷲尾須美の章-』ではその登場人物のひとり、東郷美森こと鷲尾須美(CV:三森すずこ)らによる2年前の戦いをアニメ化。現在放送中の『結城友奈は勇者である -勇者の章-』は、第1期の先に続く物語となっている。

〈ゆゆゆ〉の、まだ中学生の主人公たちがミステリアスな敵に立ち向かうという構造は、ある意味『新世紀エヴァンゲリオン』や『魔法少女まどか☆マギカ』といった作品とも共通するもの。また、〈ゆゆゆ〉はそれらの名作と同じくマンガやゲームなどの原作を持たないアニメオリジナル作品なので、視聴者が先の展開を予想したり考察しながらリアルタイムで楽しむことができるという点も、人気に火が点いた要因のひとつだろう。

そのように世界観やストーリー展開を含めしっかりと作り込まれた〈ゆゆゆ〉シリーズにおいて、作品のオリジナリティーを高めているのが劇伴音楽の存在だ。アニメ第1期から通して劇伴を担当している岡部啓一は、神前暁や田中秀和といった人気クリエイターが所属する音楽制作プロダクション・MONACAの代表。ナムコでのゲーム音楽制作を経て2004年に同社を立ち上げ、現在はゲーム、アニメ、ドラマの音楽や、アーティストへの楽曲提供など、さまざまな分野で活躍している。〈鉄拳〉シリーズや『太鼓の達人』『アイカツ!』といった人気作の音楽にも関わっているので、きっとその仕事を耳にしたことのある人も多いはずだ。

〈ニーア〉シリーズで世界的評価を得た岡部啓一の仕事

そんな彼のゲーム音楽における代表作のひとつが、2010年にリリースされたアクションRPG『ニーア ゲシュタルト』および『ニーア レプリカント』のサウンドトラック。オーケストラやコーラスをふんだんに採り入れたサウンドは、どこの国の音楽ともつかない神秘的な無国籍感があり、ゲーム自体をプレイしたことのない人にも響くであろうリッチな内容に仕上がっていた。実は〈ゆゆゆ〉のシリーズ構成を担当する脚本家の上江洲誠が本作のサントラを好きだったことがきっかけで、原作チームが〈ニーア〉のような世界観の音を求めるようになり、そこで岡部に劇伴のオファーをしたのだという。

岡部啓一 「僕も最初は〈ニーア〉のサントラみたいに非現実的で無国籍な世界観が求められてると思って打ち合わせさせてもらったんですが、〈ゆゆゆ〉の世界観は日常的な側面と非現実的な側面の両方があることを伺いまして、それであれば日常パートは日常アニメっぽい音楽、樹海化(バーテックスとの戦闘が行われる結界世界)のシーンはミステリアスで神秘的な音楽にしようと思いまして。それと〈ゆゆゆ〉ならではのカラーをつけようと思って、和のテイストとバーテックスの不気味さ、バトルのときの主人公たちの戦うけど可憐な感じを意識して音楽を作りました」

和のテイストは〈ゆゆゆ〉の作中でもたびたび登場するが、こと音楽の部分においては、例えば雅楽をそのまま採り入れたりといったようなことはしておらず、どちらかと言うとやはり無国籍感を感じさせるアプローチを取っている。それは例えば東南アジアのゴングや鉄琴などを用いた音楽や、インドネシアのガムランのような民族音楽の要素が混ざり合ったもので、どこかオリエンタルな神秘性を感じさせるものだ。これらのサウンドが壮大なオーケストレーションや、造語による不思議なコーラスワークと組み合わさることで、他で聴いたことのない個性的な音楽が生まれている。

岡部 「〈ニーア〉はケルト音楽とか比較的ヨーロッパの民族音楽っぽい方向性だったんですが、〈ゆゆゆ〉では日本を中心としたアジアの民族音楽の雰囲気に限定したほうがいいと思ったんです。もちろん僕は日本人なので、どんな楽器や音階を使えば日本っぽい音になるかはわかってるんですけど、それを本物っぽくやるよりかは、例えば一昔前の欧米の人が思う日本の感じというか、中国の文化とかも混ざってフワフワしてる雰囲気のほうがオリジナリティーが出ると思いますし、聴いているほうもおもしろみを感じられるでしょうから」

そういったサウンド・コンセプトはアニメ第1期の段階で完成されており、岡部主導で帆足圭吾、高橋邦幸、石濱翔というMONACA所属のクリエイター4名にて作り上げられた同作のサントラは、牧歌的な日常曲と神聖かつミステリアスな雰囲気を帯びた非日常曲の両方が共存するユニークな内容となった。特に非日常曲におけるこの世のものならざる感じ、バトルシーンで流れる曲の凛々しくも勇ましい音は、アニメ本編を見ていた人ならばすぐに場面を思い出すことができるだろうし、見たことのない人も純粋に音楽としてのクオリティーの高さと独創的なサウンドに想像力を刺激されるはずだ。

続く岡部、帆足、高橋、瀬尾祥太郎の4人による『結城友奈は勇者である -鷲尾須美の章-』のサントラは、前作の延長線上にあるような作りに。基本的なコンセプトは変わることなく、音のバリエーションを増やしたという印象だ。そこは岡部いわく、〈ゆゆゆ〉の世界観はすでにユーザーにもある程度認識してもらってるのでイメージを崩さないように意識したとのことだ。

岡部 「ただ、第1期はハッピーエンドで終わりましたけど、『鷲尾須美の章』は本当に最後まで悲しい感じなので、楽曲も前より悲しい度合いの高いものが多くなってると思います」

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