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back number 清水依与吏1万字インタビュー後編 ソングライティングの明日、“自意識の壁”を乗り越えて

back number 清水依与吏1万字インタビュー後編 ソングライティングの明日、“自意識の壁”を乗り越えて

back numberの清水依与吏インタビュー。さて後編は、12月20日リリースの最新シングル「瞬き」から、さらに話をひろげ、カップリング曲「ゆめなのであれば」と「ARTIST」のことを中心にしつつも、最近の曲作りについて、これからの指標、などなどを伺った。

取材・文 / 小貫信昭 撮影(ライブ) / 佐藤祐介

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back number 清水依与吏1万字インタビュー前編 最新ライブ映像と新曲「瞬き」を語り尽くす

back number 清水依与吏1万字インタビュー前編 最新ライブ映像と新曲「瞬き」を語り尽くす

2017.12.20


「ゆめなのであれば」は、結局いちばん最後の「このまま手を離さなければ ここにいてくれるかい」が言いたかったんだと思います(笑)。

さて後編です。まず、カップリングの「ゆめなのであれば」ですが、成り立ちから教えてください。

レコーディングの順番としては、3番目に録りました。いちばん最後だし、だからある意味、このCDの中の“バランスをとろうとしている人”でもあるんです。「瞬き」と「ARTIST」だけでは、「言ってないことがあるんじゃないの?」って、そう思ったんでしょうね。

この曲ですが、夢から醒めて「なんだ、夢か〜」と現実に戻るんじゃなく、むしろ夢を見ている時間への執着心というか、あんまり聴いたことない着地の仕方をする歌ですよね。

そうかもしれません。でもこれ、完全に胴体着陸してます。手じゃなく胸から直接行って、肋骨あたりが折れてますから(笑)。でも、ありませんか? 夢の中でこう、「あー、これ夢だな〜」って思って、好き勝手する、みたいな。僕はよくあるんですよ。それでいて、「もし現実だったらマズいなあ」、みたいなことも思っているという…。よくあるんですよ。実際に夢の中では、こんなに事細かに冷静に考えられないとは思うんですけど。

歌詞だけ読むと、ややコミカルでもありますけど。

何だろうなぁ…。なるべく切実に聞こえないように聞こえないようにしてるところはありました。でも、切実に会いたい人も出てきてくれて、その人が、「夢の中だけは自分のことだけを見てくれる」みたいな、そういうとこも「1行だけ入れよう」って思って、書きました。だからこの歌って、結局いちばん最後の「このまま手を離さなければ ここにいてくれるかい」が言いたかったんだと思います(笑)。決して「胸触りたい」っていうのを言いたいわけではない、と、信じてます。あははは。

まぁ聴いてると、「胸触りたい」って歌詞がインパクト強いですけどねぇ(笑)。

すげぇ入ってきますよねー。でもなんか、これは家で聴いてて、けっこう涙が出ちゃうんですよ。なんかね、最後の「ここにいてくれるかい」っていうところが、グッと来ちゃうんですよね。

新曲とかを聴いて、お酒など飲みながら、「あ、いいな」って、かなり恍惚なというか、悦な瞬間、「幸せだな」って思う瞬間、ありますね。

家で自分の作った歌を聴いて、涙が出てくることって、けっこうあるんですか?

恥ずかしながら、よくありますねえ(笑)。 そんな時、自分のことを“ミュージックナルシスト”と呼んでるんですけど。なんだろう、新曲とかを聴いて、お酒など飲みながら、「あ、いいな」って、かなり恍惚なというか、悦な瞬間、「幸せだな」って思う瞬間、ありますね。あと、仲のいい友だちとか、飲み仲間とかに聴かせたりして…。

それは悦に、じゃなく、感想を求めるんですか?

けっこう“辛口”な飲み仲間なんで、気に入らなければ「気に入らない」って言うんです。こっちは「ええぇ〜?」みたいな。だから、デモの段階でちょっと聴かせたりとかもしてるんですけど。

その友達って、様々な個性、感性の人達がいるんですかね。

様々に、僕よりもあそこの部分は確実に“敏感だな”とか“優れてるな”って人たちで構成されてるんで、「あー、そこ気付かなかったな」とか思えることが多いですね。もちろん、メンバー、マネージャー含め、「あ、この曲にこういう反応をするんだ」っていうのはね、自分のこと、けして勉強家とは思わないんですけど、そういう意見からはちょいちょいと、感覚を学んでいくのは好きな気がしますけどね。

辛口な仲間でも、褒めるときは褒めるんですよね?

聴かせてみて、「あー、いいね、ちょっとやられたね」、みたいな感じになる時は、すごく嬉しかったりして、もう、悦に入ってますけど。なので、Win−Winの関係ですよね。Win−Winの使い方、これで合ってるのか分からないんだけど(笑)。

3曲っていう限られた中でもきちんと手を抜かず、“今の俺たち、この感じです”っていうものになってないと、気持ち悪いんですよね。

さっき、「瞬き」と「ARTIST」の2曲じゃ、“言ってないことあるんじゃない?”って話してくれましたけど、シングルはカップリングも含め、ひとつのものとして言いたいことを全部言う主義なんですか?

そうだと思いますね。まあ、“説明したがり”なんだろうなあ、というのもありますけど。「今のback numberっていうのはこうなんだよ」っていうのを、その時、その時でね。シングルは、特にやってると思います。アルバムはもう、否が応でもそれが出るじゃないですか? 曲数も多いし。だけど3曲っていう限られた中でもきちんと手を抜かず、“今の俺たち、この感じです”っていうものになってないと、気持ち悪いんですよね。なんで、なんだか分からないですけど、この3曲が集まったときに、「ああ! お酒が美味しぃ〜」、みたいなことになるっていうか(笑)。新曲聴いて、その勢いで昔の曲とか聴いて、もう、どうやって作ったかは忘れてるんで、ヒトの曲みたいな感覚で聴くんですけど、「こいつ、センスあるわ!」とか言いながら。

“ミュ−ジックナルシスト”、また出ました(笑)。

昔の曲、「若いのにセンスあるわぁ」みたいなことを、まあふざけてですけど、そういう、一連のプレイも忘れずにね。あくまでプレイですけど。

3曲目の「ARTIST」のこともお願いします。

これは今年の頭くらいに合宿に入りまして、メンバー3人で作りました。なんか久しぶりにダラダラと、「ベースのフレーズから作ろうぜ」とか「こういうギター、カッコいいよね」とか言いながら。(小島)和也が「“♪ドゥディドゥディ”みたいなオクターブ奏法をやりたい!」とか言ったんで、「だったらやってみようか?」みたいに作っていって、なんかもうちょっとこう、曲として作っていた時は、不思議な感じというか、そんなものだったのが、歌詞を付けたら、思ってたのとはちょっと違うもんになっちゃったりもしましたが。

違うもの、というと?

清水依与吏っていう人が日本語で歌うと、思ったよりも“コトバが聞えてきてスピードが落ちる”というか…。実は、聞えてき過ぎちゃう感覚はちょっと前からあって、なのでこの曲は、「ギリギリのところで聞き取れない言葉とかもちょっと混ぜた方がいいんじゃないかな?」って思って、やってみてもいるんです。もちろん歌詞を読めばわかるんだけど、聴くだけだと「え? 今、何て言ったの?」ぐらいの感じでもいいのかな、と…。歌い方も、もうちょっとフニャフニャしようと思ってたけど、う〜ん、そこはまぁ、根が真面目なのもあって、滑舌よく歌っちゃうっているという…。

ありったけのフニャフニャを邪魔する、根が真面目ゆえの自意識が…。

そうです。“自意識の壁”がなければ。

デモを“ホニャララ英語”とかで作ったりはしないんですか?

デモは“♪ラララ”で作ったり、“♪ニャムマミバホォォ〜”みたいなので作って、“ホニャララ英語”ではほとんど作らないです。うん。そうですねえ。これはもう、その段階では“ラ”がいちばんカッコ良かったですね、この曲は、全部“ラ”で歌ってる時がいちばんカッコ良かったです。でも歌詞をつけて清水依与吏が歌ったら、意味を持っちゃうんですよね、ボーカルが。意味じゃなくて、コトバがメロディに溶けていく歌い方をする人もいるし、羨ましいと思うし、どうやったら自分の声でも、そういうふうになれるのかを模索してるんですよ。まだこの曲では、出来なかったですね。歌詞が飛んで来ちゃう歌になっちゃってるので。

かなりデカいチャレンジなんですね。

今までも、やってきたはやってきたんですけど、もう何回か、チャレンジしたいなぁと思ってます。まあ全曲でやることではなく、「こういう曲は、もっとこうしたい」という、曲の個性を大事にしたい、ということですけど。いちばん大事にされるべきは曲だと思うし、だからそれを歌う清水依与吏の個性には、もうちょっと幅を持たせて欲しい、もっと曲に“似合って”もらいたいですよね。

今は、新しいバンドを始めたみたいな気分で、すごく楽しいです。

さて、そろそろこのインタビューも終盤ですが、今後のことを。ベスト・セレクションのツアーが終わって、新曲が出て、新たな航海の始まりでしょうか?

今は、これまでの作品のことを忘れられているし、他人事に思えているので、新しいバンドを始めたみたいな気分で、すごく楽しいです。「こういうこともやりたい、ああいうこともやりたい」っていう気持ちに濁りがないし、「あの人がこれをやっているからこうだろう」みたいなことも気にせずやれてます。まずは作品を創ることに集中して、特化してやっていこう、と。その結果、いいものができれば、それ以上のことはないなと今は思ってます。

LIVE Blu-ray & DVD「All Our Yesterdays Tour 2017 at SAITAMA SUPER ARENA」のドキュメンタリー部分で、“〈人間〉と〈音楽〉の間の迷いとか多すぎるので“ノーフィルター”でこれからは…”といった主旨の発言をしていたシーンがあって、実に印象に残ったのですが、理想はやはり、“ノーフィルター”で音楽に向かう、ということでしょうか?

あー、言ってましたねえ、そんなこと(笑)。さっきも“自意識の壁”とか言いましたが、その壁はやはり厚いんですよね。でも、それこそ自分のことじゃなければ…、例えばヒトからの相談事なら、シンプルに答えを出せたりとかするんでね。自分のことになると、急に臆病になったりとか、緊張し過ぎてしまったりとか、本来のパフォーマンスが出来ないみたいなことが多い。まぁなんだろう…。カラオケとか行って、ほかの人の歌を歌ってるときのほうが「歌上手ぇじゃないか」って思うみたいな感覚ですかねぇ。だからなんか、今は“自意識の壁”と名付けて、それを取り壊す作業をずーっとしてますね。元来、臆病なんですけど、でも「今までの俺だったら、やんなかったな」っていうところに、スーッと手を伸ばしてみたりとか、なんかそういうことが、少しは出来始めているのでね。そのあたりは暫定的ではあるんですけど、答えは出ていて…。壁は完全には壊れないかもしれないですけど。

完全になくなっちゃうと「この人、誰?」ってなっちゃいますよね。

と、思うんですけど(笑)。 でもまあ、ある程度、やり過ぎるぐらいじゃないと変化は生まれないかなとも思うし、今はそうですね、そんなことを意識してますね。

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清水依与吏(Vo・G)、小島和也(B・Cho)、栗原寿(Dr)の3人組。
2004年、群馬にて清水依与吏を中心に結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、2007年現在のメンバーとなる。2009年2月1stミニアルバム『逃した魚』リリース。2010年6月1stアルバム『あとのまつり』リリース。2011年4月メジャーデビューシングル『はなびら』リリース。同年10月2ndアルバム『スーパースター』をリリースし、“スーパーツアー2011”開催。2012年11月3rdアルバム『blues』リリース。2013年9月初の日本武道館公演「live at 日本武道館-stay with us-」開催。2014年3月4thアルバム『ラブストーリー』リリース。2015年12月5thアルバム『シャンデリア』リリース。2016年1月から6カ月をかけて全国のホール&アリーナ全国32か所39公演をまわるツアー「back number tour 2016 “ミラーボールとシャンデリア”」を開催。同年12月、初のベスト・アルバム『アンコール』をリリース。2017年2月から全国アリーナツアー“All Our Yesterdays Tour 2017”を開催。

オフィシャルサイトhttp://backnumber.info/