モリコメンド 一本釣り  vol. 45

Column

バレーボウイズ “みんなで歌う”ことを掲げた7人。もっとも大きな武器は、一瞬で懐かしい情景に引き込むパワー

バレーボウイズ “みんなで歌う”ことを掲げた7人。もっとも大きな武器は、一瞬で懐かしい情景に引き込むパワー

デビュー作「バレーボウイズ」の1曲目「アイドル」は、“せーの!”という女の子の掛け声で始まる。昭和50年代(1970年代)あたりの歌謡曲、フォークを思い出すようなメロディ、「唇に頬を寄せて/あなたの好きな歌を歌った」という歌詞、メンバー全員による合唱は、ノスタルジーな雰囲気たっぷり。懐かしさと切なさがじんわりと伝わってきて、ちょっと泣きそうになる。

京都出身の“バレーボウイズ”。avex、DUM-DUM LLP、HOT STUFF、lute、ULTRA-VYBEが共同で行ったライブオーディション「TOKYO BIG UP!」でグランプリを獲得し、「FUJI ROCK FESTIVAL」のROOKIE A GO-GOに出演。藤原ヒロシ氏に「今、知っておかないといけないバンド。今、聴いておかないといけない楽曲」と絶賛されるなど、急激に注目を集めている7人組バンドだ。メンバーは全員、京都精華大学の出身。ネギ(V/G)、前田流星(V)が共通の友人のために曲を作ったのがバンド結成のきっかけで、仲間を集めて大学の学園祭に出演。さらにSoundCloudやYouTubeに音源をアップしてみるとイベンターからライブ出演のオファーが来て、各地でライブ活動を展開。瞬く間に知名度を上げている。

メインボーカル4人(コーラスは全員)+ギター3本+ドラム&ベースというユニークな編成、“合唱系ノスタルジック青春歌謡オーケストラ”を掲げるバレーボウイズの最大の特徴は“みんなで一緒に歌う”というスタイル。作詞作曲を手がけるネギはもともと合唱コンクール好き。さらに歌謡曲、フォークソングの要素が加わり“いろんなタイプの人間が声を合わせて一生懸命に歌うバンド”につながっていったようだ。

“音楽の授業で歌わされるのは嫌いだったけど、大勢の人が一生懸命に歌うのを聴くとなぜかグッとくる”という人は意外と多いのではないだろうか。筆者もその一人。40代になってもヒネくれまくりコジらせまくりの私だが、たとえばthe pillowsのライブで「Funny Bunny」を観客が歌っているのを聴くと(“キミの夢が叶うのは/誰かのおかげじゃないぜ”)いつも泣きそうになるし、今年の夏にUNISON SQUARE GARDENが北海道の旭川・東栄高校のために制作した合唱曲「学び舎の春~LAST RUNNERS~」にも強く心を揺さぶられた。ふだんはバラバラで過ごしている人たちが同じ曲を心を合わせて歌うーーそこで生まれる感動は、おそらく時代や流行に関係なく、すべての人に共通しているのだろう。そしてバレーボウイズは“みんなで歌うことの普遍的なパワー”に自覚的なバンドなのだと思う。

バレーボウイズの楽曲のもうひとつの特徴は、郷愁感をたっぷり含んだメロディと歌詞。別れと新しい旅立ちが交差する季節を描いた「きんいろかがやく」、フォークロック風のサウンドと卒業シーズンの風景がひとつになった「卒業」(album ver.)、カントリーのテイストを取り入れたアレンジのなかで素朴で不器用な恋愛感情を歌った「シアワセ」、ギターポップ的な手触りのサウンド、家族が寝静まった頃、ひとりで音楽を聴くことの楽しさを映し出す「真夜中のレコォド」。そこに共通しているのは、一瞬で懐かしい情景に引き込まれるような“懐かしさパワー”こそが、このバンドのもっとも大きな武器なのだ。その背景にあるのはおそらく、70〜80年代の歌謡曲、J−POP。特にチューリップ、(初期の)CHAGE and ASKA、ガロ、赤い鳥などのフォーク系アーティストの影響が色濃く感じられる。さらにオルタナティブな雰囲気のギター、ビートを加ええることで、2017年のポップミュージックへと昇華しているのだ。インディーロック系のテイストと懐かしいメロディを融合させるスタイルは、never young beach、Yogee New Wavesとも共通している。このあたりにもバレーボウイズが急激に注目を集めている理由もありそうだ。また、ローファイな雰囲気の音作り、テクニックを求めるのではなく、リスナーに語りかけるようなボーカルスタイルも、このバンドの魅力だ。

ここ数年はダンスミュージックを軸にしたアーティストが主流となり、ライブも“みんなで一緒に踊る”ことがメインになっていた傾向があるが、EDMブームが落ちついたことに伴い、再び“歌”に注目が集まり始めている。“みんなで歌う”ことを掲げたバレーボウイズが登場し、あれよあれよという間に存在感を強めているのは、決して偶然ではない。そう、バレーボイズの心揺さぶる歌は、時代の潮流ともしっかり重なっているのだと思う。

文 / 森朋之

ライブ情報

『ブルーハワイ』ツアー

2018年1月6日(土) 大阪・十三FANDANGO
共演:台風クラブ

2018年1月7日(日) 名古屋・池下CLUB UPSET
共演:12月初旬決定

2018年1月8日(月祝)  東京・渋谷TSUTAYA o-nest/7thFloor
共演:HOMESHAKE(FromCanada)、Tempalay 他

料金:大阪、名古屋¥2500 東京¥3000

オフィシャルサイトhttp://neegi3.wixsite.com/volleyboys

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