佐藤剛の「会った、聴いた、読んだ」  vol. 23

Column

「風化しない言葉、劣化しない音楽、終わらない歌」
発表から32年後に初めて聴くことができたザ・ブルーハーツのソノシート音源にふるえる。

「風化しない言葉、劣化しない音楽、終わらない歌」   <br>発表から32年後に初めて聴くことができたザ・ブルーハーツのソノシート音源にふるえる。

ザ・ブルーハーツを結成した直後の1985年12月24日、クリスマスイブに行ったライヴの会場で、入場者全員に配られた「1985」が当時と同じソノシートで再現されたというので、初めて聴いてみることにした。

久しぶりにアナログプレーヤーとアンプをつないで、なんの予断もなく聴いてみたいと思ったのだが、予想した通りに、いや、予想以上に、レコードというもののすごさ、素晴らしさに驚かされてしまった。

まずジャケットから取り出した段階で、シートに印刷されている情報に触れて、目の前ではなく、遠くのほうから伝わってくるなにか、そんなことを感じるところから音楽との出会いが始まっている。
カタチあるものの良さということを、あらためて知らされたように思った。

それから毎分45回転するソノシートをターン・テーブルに載せてセットし、静かにレコード針を下ろしてみる。
そこには1985年という時代の空気が、音楽とともに記録されていた。

薄い溝に刻み込まれていた甲本ヒロトのヴォーカルも、ブルーハーツの演奏とサウンドも骨太で、圧倒的な力強さが感じられる。

1985 国籍不明の
1985 飛行機が飛んだ
風を砕くのは銀色のボディー
謎のイニシャルは誰かの名前
僕達がまだ生まれてなかった
40年前戦争に負けた
そしてこの島は歴史に残った
放射能に汚染された島

レコード(ソノシート)をアナログで再生しているという行為が、音楽を受けとめる力を研ぎ澄ませるのだろうか。
音楽や言葉の奥底からは、熱い思いがしっかり伝わってきた。

この歌が唄われてから30年以上の年月が過ぎているのに、内容はそのまま2017年の現在をストレートに撃ってくる。
聴くものの心を、今でも叩いてくるのだ。

まさに風化しない言葉、劣化しない音楽、終わらない歌である。

1985 求めちゃいけない
1985 甘い口づけは
黒い雨が降る死にかけた街で
何をかけようかジュークボックスで
1985 今、この空は
神様も住めない そして
海まで 山分けにするのか
誰がつくった物でもないのに

1985 クリスマスまでに
サンタクロースのおじいさんの命が危ない
1985 選挙ポスターも
1985 あてにはならない

最後まで聴いても、そこからまた繰り返して、何度でも聴きたくなってしまうのは、2コーラスが終わって16小節の間奏に移り、ドラムとベースだけになったところで、画期的な歌詞がうたわれているからだ。

僕達を縛り付けて 独りぽっちにさせようとした
全ての大人に感謝します
1985年 日本代表 ブルー・ハーツ
1985
1985

正直、これにはふるえてしまった。

そこにはロックンロールの焦燥感や切実さとともに、エスプリ、スピリッツ、ユーモアがある。

もうすぐクリスマスがやって来る。
だが今年はもう、「サンタクロースのおじいさんの命が危ない」というフレーズが、頭から離れそうにない。


著者プロフィール:佐藤剛

1952年岩手県盛岡市生まれ、宮城県仙台市育ち。明治大学卒業後、音楽業界誌『ミュージック・ラボ』の編集と営業に携わる。
シンコー・ミュージックを経て、プロデューサーとして独立。数多くのアーティストの作品やコンサートをてがける。2015年、NPO法人ミュージックソムリエ協会会長に就任。 著書にはノンフィクション『上を向いて歩こう』(岩波書店、小学館文庫)、『黄昏のビギンの物語』(小学館新書)、

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