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Mr.Children “Live”こそが、予定調和を越えた“Documentary”。最新映像作品の意味を紐解く

Mr.Children “Live”こそが、予定調和を越えた“Documentary”。最新映像作品の意味を紐解く

この“Live & Documentary ”には、“ここまで公開しちゃっていいの?”と、そう思える部分もある。逆に言えば、“ここまで公開した”からこそ、「Mr.Childrenは、やはりMr.Childrenだった」という確信へつながる。このバンドが25年経っても新鮮なのは、馴れ合うことなくやってきたからなのだろう。オーディエンスに対して、そして、メンバー同士においても…。

Mr.Children 25th Anniversary の第3弾、『Live & Documentary DVD / Blu-ray 「Mr.Children、ヒカリノアトリエで虹の絵を描く」』は、嬉しいクリスマス・プレゼントだ。期間的には「Mr.Children Hall Tour 2016 虹」(春 & 秋)から始まり、年を跨ぎ、「Mr.Children Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ」までを捉えたものであり、このあと、バンド史上最大規模となったドーム&スタジアム・ツアー「Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25」(以下、「Thanksgiving 25」)へと続いていく。

もし“ホップ・ステップ・ジャンプ”に例えるなら、そもそもこういう主旨のHall Tour を考えたこと自体が“ホップ”であり、実行したことが“ステップ”、そしてドーム&スタジアムが“ジャンプ”ということだろう。

Hall Tourの意義はなんだったのか? 「Thanksgiving 25」のツアー・パンフの取材の時、桜井和寿はこんな風に話してくれた。「ミュ−ジシャン・シップに則って、より“音に寄り添った形”でやってみようという、新しい試みだった」。でも、別にそれって、前からそうだったんじゃなかったのかと、そう思う人もいるだろう。

しかし、彼らのようなポップやロックを演奏するバンドの場合、オーディエンスと“一体となる”ことも大きな目的であり、もちろんそれを、どのバンドよりも密にやり遂げてきたのがMr.Childrenである。

その一方で、桜井の言う“音に寄り添った形”というのは、バンドがいて、オーディエンスがいて、その真ん中に「音楽がある」という、そんなイメージだと思うのだ。それに特化できる環境という意味で、中規模ホールのキャパを回るツアーが組まれたのだ。

その際、象徴的と思われるのが、極限まで演出を排して始まった、オープニングの「お伽話」である。セットリストの起点をここに置いたことが重要だ。歌の内容も含め、いきなり楽しい気分にはならず、ある意味、“踏み絵”的でもある。でも、ここからステージと客席に意思の疎通が芽生え、やがて深まっていく…。そんなメニューが繰り返されていくツアーだったのだ。

映像には、どう記録されたのだろう。一般的に“Live & Documentary ”といえば、その内容はステージ中心で、そこにバック・ステ−ジの様子を加えたものを想像する。でも見終わっての感想は、ちょっと違う。今回は、“Live”こそが予定調和を越えた“Documentary”という印象なのだ。

なぜかというと、そもそも「ヒカリノアトリエで虹の絵を描く」という8人編成が、実験的と言えたからだ。Mr.Childrenのメンバー4人の他に、キ−ボ−ドのSUNNY、サックス&フルートの山本拓夫、トランペットのicchie、アコーディオンの小春(チャラン・ポ・ランタン)、という面々だが、最初は僕自身、キーボードとアコーディオンは(もちろん「くるみ」のようなアコーディオンがアレンジ上必要な場合は要るんだろうけど)同じ鍵盤同士だし、ハッキリ言って持ち場的に“被る”んじゃないかと思ったわけである。

でも、リハーサル場面の映像含め、徐々にこの8人が、音の混合物から化合物へと進化していく有様こそが、まさに見どころなのであり、だからここに記録された“Live”こそが、予定調和を越えた“Documentary”と言えるわけなのだった。

印象に残るシーンについて書く。桜井がメンバーに、“ダイナミクス”という言葉を伝えている場面である。そもそもこのHall Tourで、4人のなかから改めて掘り起こされた表現の領域が、まさにそれだったのだろう。

例えばドラムの鈴木英哉である。スタジアムなら渾身の力で演奏するところ、ホールなら客席も近く、半分くらいの力でも演奏が成立する。余力はダイナミクス、つまり、表現に抑揚を加える部分に回せたのだ。

これ、前出の「Thanksgiving 25」のツアー・パンフの取材の時、桜井が話してくれたことでもあった。鈴木以外のメンバ−も、概ね、同じことが言えただろう。

バンドとしてのダイナミクスをより強化し、音の表現を彫りの深いものにして、ドーム&スタジアムという、様々な面で“増幅”が必要な場所へ臨んだ…、という、こんな流れだったのではなかろうか。

ことさら強調するわけじゃないが、桜井の喉の不調で、公演を中断、延期する場面も収められている。その時、田原が客席に向かって訴えた言葉というのが、トレーラー映像にも含まれていたため、ファンの間で話題となったようである。

映画の予告編などもそうだけど、より多くの人達を“観たい”気持ちにさせるため、こうしたものは作られる。ただ、トレーラー映像を踏まえ、『Live & Documentary DVD / Blu-ray 「Mr.Children、ヒカリノアトリエで虹の絵を描く」』の134分間を観た場合、最後にどんな印象が残るかというと、結局やはり、最後に心に残るのは、彼らの歌、音楽だ。

特に「終わりなき旅」は圧巻だ。25年間の実績や賛辞…、それらをいったん振り払い、最小限の身支度で更なる地平へ挑んでく覚悟が伝わる。聴き手の我々をも、そんな気分に巻き込んでいく。

かのニーチェはこう言ったという。世の中には、貴方以外の誰も歩めない唯一の道があり、しかしそれがどこに辿り着くかを問うてはならない。ひたすら進め、と。この歌が教えてくれるのも、同じことなのだろう。

文 / 小貫信昭

Mr.Children

1992年ミニアルバム「EVERYTHING」でデビュー。1994年シングル「innocent world」で第36回日本レコード大賞、2004年シングル「Sign」で第46回日本レコード大賞を受賞。「Tomorrow never knows」「名もなき詩」「終わりなき旅」「しるし」「足音 〜Be Strong」など数々の大ヒット・シングルを世に送り出す。これまでに37枚のシングル、18枚のオリジナルアルバム、4枚のベストアルバムをリリース。2017年7月26日にNew Single「himawari」をリリース。3月からの全国ツアー「Mr.Children Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ」に続き行われた、6月からの「Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25」も無事終了した。

オフィシャルサイトhttp://www.mrchildren.jp