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舞台『文豪ストレイドッグス』開幕。鳥越裕貴が初座長を務めるカンパニーの素晴らしさが凝縮された濃厚なパフォマンス体験

舞台『文豪ストレイドッグス』開幕。鳥越裕貴が初座長を務めるカンパニーの素晴らしさが凝縮された濃厚なパフォマンス体験

近代文学を代表する名だたる文豪たちがキャラクター化し、それぞれの作品にちなんだ異能力を使いながら、異能者たちとのバトルアクションが繰り広げられる漫画『文豪ストレイドッグス』。コミックは累計500万部を突破し、さらに2018年春にはアニメーション映画も公開予定で、注目は高まるばかり。そしてファン待望の舞台が、12月22日からKAAT 神奈川芸術劇場にて上演がスタートした。
主演は、舞台『弱虫ペダル』、ミュージカル『刀剣乱舞』などの話題作に出演し、本作で初主演を務める鳥越裕貴。共演は、2.5次元作品にはミュージカル『テニスの王子様』以来の出演となる多和田秀弥をはじめ、輝馬、橋本祥平、植田圭輔などの俳優たちが脇を固める。演出は、今最も演劇界で勢いのある中屋敷法仁。劇団「柿喰う客」の代表で、舞台『黒子のバスケ』(脚本・演出)やハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』(脚本)を手がけた彼が、イケメン文豪たちの異能力アクションバトルをどのように演出するのかに期待が高まる。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 冨田望

誰かに必要とされる、誰かを守る──自らが生きる意味を問うスリリングな舞台

舞台装置はシンプルだ。日焼けた原稿用紙を模した大きな戸板が数枚ほど動き周り、中央奥には階段があり2階建てになっている。異能者たちの能力を激しく移り変わる映像にして壁に映し、キャストとアンサンブルはそれに合わせるように素早く動き回りながら演技をする。最先端技術と人力が100パーセントシンクロしなければ成立しないスリリングな舞台で、それを見事に実現してみせたカンパニーの力量の凄まじさが伺えた。

客席が暗転する前に、探偵集団・武装探偵社の江戸川乱歩(長江崚行)が観客を巻き込み笑いをとる。暗転後、孤児院を追い出され、ヨコハマを放浪する少年・中島 敦(鳥越裕貴)が現れる。そして敦は、鶴見川で入水していた自殺マニアの太宰 治(多和田秀弥)を助けることに。その出会いをきっかけに、敦は、太宰とヨコハマに出没するという“人食い虎”の捜索を手伝うハメになる。太宰と共に虎の出現を倉庫で待つ敦に対し、太宰は敦こそが虎の正体だと告げる。敦は無意識のうちに異能「月下獣」で虎に変身しており、それゆえに孤児院を追い出されていたのだ。

壁一面に満月と思しき月が映ると、敦は自分の能力を制御できず、「月下獣」と化し、太宰に襲いかかる。しかし、太宰は相手の能力を無効化する異能「人間失格」を発動して敦を気絶させ、自分が所属する武装探偵社に連れて帰る。

そこに集まっていたのは、太宰、江戸川のほかに鋭いツッコミ役の国木田独歩(輝馬)、シスコンっぽい谷崎潤一郎(桑野晃輔)と妹・谷崎ナオミ(齋藤明里)、元気いっぱいの宮沢賢治(堀之内 仁)、熱情と狂気を孕んだ与謝野晶子(今村美歩)という、一癖も二癖もある異能力を持つ仲間たちばかり。

一方、ヨコハマの港を縄張りにする兇悪なマフィア・ポートマフィアの構成員である芥川龍之介(橋本祥平)も、人虎・敦を狙っていた。そのアジトにも、武装探偵社に劣らぬ個性的な面々がいる。檸檬爆弾を操る梶井基次郎(正木航平)、謎めいた美少女・泉鏡花(桑江咲菜)、二丁拳銃も勇ましい樋口一葉(平田裕香)、体術では誰にも引けを取らない中原中也(植田圭輔)だ。

彼らは衝突を繰り返す。そんななか太宰は大胆不敵にもマフィアのアジトに潜入、どういうわけかあっけなく捕まってしまう。と同じ頃、太宰が行方不明になっていることを敦は不審に思いつつも、晶子とともに街に買い物に出かけるのだが、そこで待っていたのは、敦を追う梶井や泉の姿だった。異能者同士のバトルがここから加熱していく──。

演出の中屋敷法仁は、ジャジーな昭和モダンな音楽に合わせたマイムやダンス、歌を丁寧に織り交ぜ、キャストやアンサンブルを巧みに演出しながら、異能者たちの世界・ヨコハマをリアルに表現していく。演劇的な手法を使いつつも原作の世界観を損なわない舞台に舌を巻く。

そして、演出家・中屋敷の魅力を炸裂させながら、原作に忠実でいて、舞台に生き生きと躍動するキャラクターを作り上げ、武装探偵社とポートマフィアの対立を浮かび上がらせながら、そこから垣間見える太宰とポートマフィアの因縁や、敦の成長を緻密に綴った脚本の御笠ノ忠次に溜飲が下がる。

初主演の鳥越裕貴の演技もアクロバティックな動きもダンスも、目をみはるほど研ぎ澄まされていた。さらに俳優たちが皆、シャープに時にはルーズにと、キャラクターを奥行き感を持って魅力的にみせ、物語の面白味を構築する一端を担い、観客を飽きさせない。

今作は、敦の抱える心の闇、つまり人に必要とされないことへの悲しみ、それでいて生きることを選ばなければならないつらさ、誰かを守ることができるのかがテーマではないだろうか。人間の存在理由を心音のように舞台の根底から客席に叩きつける迫力ある約2時間の得難い演劇体験だった。

公演は12月22日(金)〜24日(日)までKAAT 神奈川芸術劇場(ホール)、その後、2018年1月12日(金)〜13日(土)大阪・森ノ宮ピロティホール、再び東京に戻り、1月31日(水)〜2月4日(日)までAiiA 2.5 TheaterTokyoへと続く。千穐楽には全国の映画館でライブビューイングも予定している。

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