Interview

蒼井優「まさか自分が演じることになるとは」──真摯に信念を貫く憧れのヒロインに挑む舞台『アンチゴーヌ』

蒼井優「まさか自分が演じることになるとは」──真摯に信念を貫く憧れのヒロインに挑む舞台『アンチゴーヌ』

むしろクレオンのほうが実感を持ってわかるようになってきた

ご自身が年齢を重ねたことで、アンチゴーヌに対する気持ちに何か変化はありましたか。

まず、クレオンに対する印象が変わりました。クレオンの孤独さとか、まぁ、私はそんなに孤独というわけではないですけど(笑)、その苦しみとかが少しわかるようになったというか。初めて読んだときには完璧にアンチゴーヌ目線だったんですが、アンチゴーヌに対しては若干憧れに近い想いになってきて、むしろクレオンのほうが実感を持ってわかるようになってきた感じです。日本の国のトップの人の気持ちを想像するようになったりもして。

法を大事にするクレオンと、人間としての正義を大事にしたいというアンチゴーヌ、そのどちらもある意味、正義なのかもしれないですよね。

そうなんですよ。動物としてなら許されることが人間だと許されないことってたくさんあるから。だから「たったひとりでも世界に立ち向かおうとした」とチラシにも書かれていますけど、これが世界なのか社会なのか、どっちなんだろうってことはずっと考えています。だってクレオンだってそこから逃げ出して、動物として生きればいいのかもしれないけれど、それが許されない社会に生まれてしまっているから。でも、同じようにアンチゴーヌも社会に生まれたはずなんだけれど、もっと動物的でいられる人だったから、こういう状況になってしまっているわけなんですけどね。そう考えると、やっぱり人間って面白いなって思います。

翻訳劇だとどうしても難しそうなイメージで捉えられがちですけれど、台本を読むとまったくそんなこともなくて。

そうですよ、『アンチゴーヌ』はめちゃくちゃシンプルで、わかりやすい戯曲でした。登場人物も少ないですし。まっすぐな道を進む途中で、ちょっとだけ揺れ動いているみたいな感じ。そこが面白いんです。太い芯がどーんと通っている作品なので、たぶんボーッと観ているだけでもわかる物語だと思います。って、でも本当にボーッと観られてしまうと、私としては少し哀しかったりするので、そうならないように頑張ります(笑)。今回、十字架の形の舞台の周りの四隅にお客様に入っていただくので、距離もものすごく近いですし。これはテーバイという国のお話なので、もしかしたらその国の市民みたいな感覚になるかもしれないですよね。

お客様も観衆役として共演する気分で観ていただけたら、よりリアルに感じられるかもしれません。

はい。お芝居って、お客さんによって本当に変わりますからね。昔、先輩がそういうことをおっしゃっていたのが、最近すごくわかるようになってきたんですよ。ああ、お客さんとこうやって作り上げていくのが楽しいんだな、って。何とも言えない複雑な感情がいっぱい入り乱れる戯曲ですが、そこは大味にせずにお客様を信用して、届くと信じて演じたいなと思っています。

蒼井さんは映像の仕事もたくさんやられていますが、舞台ならではの面白さとか、魅かれる部分はどういうところでしょうか。

やはり、そうやってお客さんと一緒に作れることと。あと、セリフのやりとりのリズム感とか感情表現は映像のときとは全然違うので、すごく勉強になるなと思っているんです。それと、舞台をやっていると傷つくこともいっぱいあるんですが……。

そうなんですか?

「そんなこと言われるかー?」っていうくらいに、暴力的な言葉で演出家から怒られたりするじゃないですか(笑)。

そうですね、人によっては(笑)。

そういうふうに言われたときは、ものすごく哀しいし、傷つくし。「もうちょっとオブラートに包んでくれてもいいんですよ?」って、いつも思うんですけど(笑)。たぶん、おっしゃった本人は覚えていなかったりするんですよね。だけど、そのむき出しの言葉は、そのあと自分がどこの現場に行ったとしても「今、自分はそうなってないかな?」って改めて振り返られたりするようになるので、逆にその言葉がお守りになるんです。あと、やっぱり物語の頭から最後まで通して演じられることと、日々必ず発見があることも舞台ならではのことですよね。

では最後に、お客様へ向けてお誘いの言葉をいただけますか。

ものすごく骨太な作品になるはずですし、「舞台っていいね!」って思ってもらえるような作品にしたいとも思っています。みなさんに楽しんでいただけるよう、精一杯稽古します!

パルコ・プロデュース 2018『アンチゴーヌ』

【東京公演】2018年1月9日(火)〜1月27日(土)新国立劇場 小劇場〈特設ステージ〉
【松本公演】2018年2月3日(土)〜2月4日(日)まつもと市民芸術館〈特設会場〉
【京都公演】2018年2月9日(金)〜2月12日(祝・月)ロームシアター京都サウスホール〈舞台上特設ステージ〉
【豊橋公演】2018年2月16日(金)〜2月18日(日)穂の国とよはし芸術劇場PLAT〈舞台上特設ステージ〉
【北九州公演】2018年2月24日(土)〜2月26日(月)北九州芸術劇場 大ホール〈舞台上特設ステージ〉

STORY
古代ギリシャ・テーバイの王・オイディプスは、長男エテオークル、次男ポリニス、長女イスメーヌ、次女アンチゴーヌという、4人の子を残した。エテオークルとポリニスは、交替で王位に就くはずであったが、王位争いを仕組まれ、刺し違えてこの世を去る。その後、王位に就いたオイディプスの弟・クレオン(生瀬勝久)は、亡くなった兄弟のうちエテオークルを厚く弔い、国家への反逆者であるとして、ポリニスの遺体を野に曝して埋葬を禁じ、背く者があれば死刑にするよう命じた。
しかし、オイディプスの末娘アンチゴーヌ(蒼井 優)は、乳母の目を盗んで夜中に城を抜け出し、ポリニスの遺体に弔いの土をかけて、捕えられてしまう。
クレオンの前に引き出されるアンチゴーヌ。クレオンは一人息子エモン(渋谷謙人)の婚約者で姪である彼女の命を助けるため、土をかけた事実をもみ消す代わりにポリニスを弔うことを止めさせようとする。
だが、アンチゴーヌは「誰のためでもない。私のため」と言い、兄を弔うことを止めようとしない。そして自分を死刑にするようクレオンに迫る。懊悩の末、クレオンは国の秩序を守るために苦渋の決断を下す──。

作:ジャン・アヌイ
翻訳:岩切正一郎
演出:栗山民也

出演:
蒼井 優 生瀬勝久
梅沢昌代 伊勢佳世 佐藤 誓 渋谷謙人 富岡晃一郎 高橋紀恵 塚瀬香名子

特設ページ

蒼井 優(あおい・ゆう)

1985 年生まれ、福岡県出身。14 歳のときにミュージカル『アニー』でデビュー。以降、女優として映画、舞台、ドラマ、CM など幅広く活躍。2006年公開映画『フラガール』では日本アカデミー賞 最優秀助演女優賞と新人俳優賞ほか多数の賞を受賞。2017年公開映画『彼女がその名を知らない鳥たち』では報知映画賞やヨコハマ映画祭にて主演女優賞を受賞している。近年の主な出演作に【ドラマ】『先に生まれただけの僕』(17/NTV)、『ゆとりですがなにか 純米吟醸純情編』(17/NTV)、『ハロー張りネズミ』(17/TBS)、『美の巨人たち』(ナレーション/EX)【映画】『ミックス。』(17)、『東京喰種』(17)、『家族はつらいよ2』(17)、『オーバー・フェンス』(16)【舞台】『あわれ彼女は娼婦』(16)、『スポケーンの左手』(15)、『三人姉妹』(15)などがある。

オフィシャルサイト

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