LIVE SHUTTLE  vol. 227

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ユニコーン デビュー30周年で見せた変わらぬ“音楽で遊ぶ”5人の姿。言葉以上に感謝を込めたステージをじっくり振り返る。

ユニコーン デビュー30周年で見せた変わらぬ“音楽で遊ぶ”5人の姿。言葉以上に感謝を込めたステージをじっくり振り返る。

ユニコーンツアー2017 「UC30 若返る勤労」
2017年12月13日 Zepp Tokyo

UNICORNのデビュー30周年を記念する“UC30 若返る勤労”ツアーのちょうど真ん中、10本中5本目のZepp Tokyoのライブを観た。

コンスタントなアルバム作りとツアーという、バンド活動の基本要素をすべて満たした再結成は、日本のバンド史上初の快挙。それを成し遂げたUNICORNは、同世代のバンドに大きな刺激を与え、若い世代に夢を抱かせる存在となった。そんなUNICORNがデビューしたのは、30年前の1987年。JUN SKY WALKER(S)やTHE BOOMなどと共にバンドブームを盛り上げ、今に連なるJ-ROCKの源となった。

一度は解散したものの、UNICORNのメンバーは誰ひとり音楽を止めることはなく、再びシーンに戻ってきて、以前と変わらない、あるいは解散前以上に精力的な活動をしている。それだけに彼らは、果たしてどんな曲から“30周年ライブ”をスタートさせるのだろうか。

つなぎを着た5人がステージに入って来る。バックに流れているのは、街の喧噪のノイズのようだ。人々のざわめきや、調子のいいブラスバンドの演奏が聴こえてくる。「もしや?」と思った途端、始まったのは、ゆったりとしたミディアム・ロックの「雪が降る町」だった。堂々たる風格を漂わせる“30周年サウンド”に包まれていると、ハンパない年末感が押し寄せる。今年、自分に起こった出来事が次々と脳裏に浮かんで、感慨がジワジワと押し寄せる。「ああ、このバンドが好きでよかったな」という思いが、僕の心によぎった。

UNICORNは、なぜこの曲をオープニングに選んだのだろう。僕の感じたままを書けば、彼らは“30周年”という抽象的な時間ではなく、もしファンが12月にUNICORNのライブを観るとしたら、どの曲を聴きたいだろうかと考えたのではないか。自分たちのアニバーサリーよりも、“12月のファンたち”の気持ちを尊重したのではないか。さすがUNICORNと言いたくなる1曲目だった。

が、エンディングのコーダで、そんな感慨を奥田民生のひと言が吹き飛ばす。「今日はどうもありがとうございました! よいお年を~」と叫んだから、会場は大爆笑。確かに「雪が降る町」は年末ソングだが、1曲目で“最後の挨拶”とは。これでライブのペースは、すっかりUNICORNのものとなった。

序盤は3曲がワンセットになって進む。次のシークエンスのハイライトは「Hystery-Mystery」だった。ファースト・アルバム『BOOM』の1曲目に置かれているこの曲で、UNICORNに初めて出会った人も多いはずだ。しかも「Hystery-Mystery」は、再結成後、ライブで一度も演奏されて来なかった。なので、イントロが流れた瞬間、オーディエンスから悲鳴のような歓声が上がる。アニバーサリー・ライブだからこそ、セットリストに入ったのかもしれない。この嬉しいサプライズに、みんな大喜びだ。

そして良く聴くと、川西幸一の叩くドラムが“80年代の音”になっている。当時はスネアドラムに“ゲートエコー”というエフェクトをかけるのが大流行していた。当然、「Hystery-Mystery」もゲートエコーを使ってレコーディングされていたから、オリジナル・バージョンをライブで完全再現しているわけだ。

このツアーの初日、12月6日にUNICORNは、これまでの全アルバムとオリジナルアルバムには収録されていないシングル曲や配信曲、メンバーそれぞれの50祭テーマソングを、リーダーのABEDONがリマスタリングして、ボックスセット『UC30 若返る勤労』としてリリースした。リマスターに当たってABEDONは、バンドの音楽的キャリア全てに向き合い直したと語っていた。その実感を、このツアーでファンたちに伝える手段として「Hystery-Mystery」を選んだのは、とても意味のあることだ。しかも“30年前のサウンド”を再現してみせるのは、バンドにとっても、オーディエンスにとっても、互いの記憶の深い部分を揺さぶることになる。続く「サービス」はセカンド・アルバム『PANICK ATTACK』からの曲で、ボーカルには懐かしいリバーヴがかかっていた。このシークエンスは、“振り返りセクション”と言っていいのかもしれない。

ここでちょっとゆったり目のMCが入る。進行を任された川西が「手島さん、今年を漢字一字で振り返ってください」と“お題”を振ると、手島の答は「今年もステージに立てたから、喜ぶの“喜”ですかね」。奥田は「俺はYouTubeをずっとやってたから、“管(チューブ)”だな」。奥田は一人レコーディングをYouTubeで公開して、楽曲を配信リリースするプロジェクト“カンタンカンタビレ”を今年立ち上げている。EBIは「今年は1年が速かったから“速”」。ABEDONは「ずっとマスタリングやってたから、マスターの“主”にしときます」。最後は川西が「名前に入ってる“幸”にします~」とゆるーく締めたのだった。

“振り返り”の次のセクションは、それまでメインボーカルを取ってきた奥田とABEDON以外のメンバーが歌う、“全員が歌うUNICORNセクション”と言えるだろう。まずは川西が今年の漢字“幸”の入った「ロック幸せ」を歌えば、ドラム担当の奥田がハッピーなグルーヴを繰り出す。EBIは特製マイクスタンドを自在に使い、「夢見た男」でエンターテイナーぶりを発揮。その間、ベースはABEDONが担当する。手島は再結成の成功を決定づけた傑作アルバム『シャンブル』から「オッサンマーチ」を歌い、エンディングでは自分の名前を叫んで大暴れ。みんなが歌う、みんなが演奏するという、30年来のUNICORN独自のスタイルを見せつけたのだった。

音楽性とキャラクターのバラエティを見せた後は、ロックバンドとしての本領を発揮する。ステージが照明で真っ赤に染まる中、ABEDONのピアノ弾き語りで始まる「R&R IS NO DEAD」は、これも『シャンブル』からの名曲だ。信じるロックを鳴らす決意を示すリリックが、Zepp Tokyoにこだまする。気合いの入ったパフォーマンスだった。

続く「鳥の特急便」では、奥田が♪迷える君が欲しがる 荷物を抱え空飛ぶバード♪と力強く歌う。5人がハードな音を積み重ね、重量感たっぷりのサウンドを構築してみせる。ユーモラスな場面と、シリアスなメッセージを交互に送ることで、会場の“地熱”がぐんぐん上がっていく。いよいよライブは佳境に差しかかる。

終盤、解散前の人気曲「ヒゲとボイン」と、再結成後の人気曲「SAMURAI 5」を続けるあたりにも、セットリストに込めた思いを感じることができた。特に「SAMURAI 5」で、ABEDONは歌って、走って、大きなフラッグを振り回しての大活躍。“若返る勤労”そのもののステージングに、オーディエンスたちは大きな拍手を贈る。

次の曲は、奥田とABEDONのツインギターで始まる「すばらしい日々」なのだが、ギターを抱えたABEDONが息を切らせて「ちょっと待ってくれヨ! チカラがオジサン?(笑)」と楽しそうにぼやく。2本のギターによる美しいイントロが始まると、会場は一気に大団円の雰囲気に包まれた。「すばらしい日々」が、この日の1曲目の「雪が降る町」と妙にシンクロして、改めて世の中は12月だという季節感が湧いてくる。せわしない暮しの中で、ふとひと息つく感じ。UNICORNの歌の持つ不思議な魅力に、会場がひたっていく。ライブの終盤なのに、実に丁寧な歌と演奏に、UNICORNの30年間に思いが及んだのだった。

本編ラストは、「車も電話もないけれど」だった。この歌は、ぶっ飛んだ時代設定なのに、1991年に発表されて以来、歌詞がずっと“今”であり続ける名曲だ。奥田はハンドマイクで会場中を見渡しながら活き活きと歌い、エンディングでは指揮者となって、バンドとオーディエンスの盛り上がりをコントロールする。Zepp Tokyoにいる全員が一体となって、笑いながらライブは一度幕を閉じた。 

本編ではあまり長いMCはなかったが、その分、アンコールのMCが長かった。超盛り上がるナンバー「WAO!」の途中で、ABEDONの仕切りで“イントロ当てクイズ”がスタート。奥田がDJコントローラーを使って、UNICORNナンバーを1秒くらい流し、川西、手島、EBIが曲名を当てるというゲームだ。

自分たちの曲なのに、これがなかなか当たらない。途中で奥田がサックスを持ち出して、今度は奥田の吹くメロディで曲を当てるクイズに突入。これもなかなか当たらない。爆笑につぐ爆笑の後、奥田のサックスのリードで川西の歌う「ブルース」が始まった。哀愁をたたえた建設労働者の歌が、やけに師走を思わせて、この日の気分にピッタリだった。

こうした緩急自在なライブの流れは、UNICORNがずっと大事にしてきた“音楽で遊ぶ”というテーマに合致する。アンコールは、このメンバーで、このお客さんと、今後もずっと音楽で遊び続けたいという5人の宣言のように感じられた。

ひとしきりなごんだ後、最後の曲はまたしても『シャンブル』からの「サラウンド」だった。活動再開後のUNICORNの大きな武器となった“ミディアム・テンポのロック”を代表するナンバーが、朗々と響く。奥田、EBI、ABEDONによるボーカル・ハーモニーも最高だ。

結局、この日のライブで「みなさん、30周年、ありがとう」という言葉は聞かれなかった。しかし、ライブの随所で、UNICORNの「ありがとう」が聞こえた気がした。30周年とは言っても、そのうち16年間の空白があった。だからUNICORNは言葉にしなかったのかもしれない。だが、彼らは言葉以上の感謝を表していた。それがツアー“UC30 若返る勤労”のすべてだった。

文 / 平山雄一

ユニコーンツアー2017 「UC30 若返る勤労」
2017年12月13日 Zepp Tokyo

SET LIST
01. 雪が降る町
02. はいYES!
03. パープルピープル
04. ハヴァナイスデー
05. Hystery-Mystery
06. サービス
07. ロック幸せ
08. 夢見た男
09. オッサンマーチ
10. R&R IS NO DEAD
11. 鳥の特急便
12. 薔薇と憂鬱
13. ヒゲとボイン
14. SAMURAI 5
15. すばらしい日々
16. 車も電話もないけれど
<アンコール>
17. WAO!~ブルース~WAO!
18. サラウンド

UNICORN

ABEDON(阿部義晴)(key)、奥田民生(vo、g)、川西幸一(ds)、EBI(堀内一史)(b)、手島いさむ(g)。1986年、広島で結成。1987年10月アルバム『BOOM』デビュー。バンドブームを牽引し、「大迷惑」「働く男」「すばらしい日々」など次々とヒット曲を生み出す。それぞれのソロ活動を経て、1993年解散発表。2009年に再始動を発表し、以降も楽曲制作、ライブと精力的に活動を続ける。12月24日の大阪公演を持って、デビュー30周年を記念したツアー『ユニコーンツアー2017「UC30 若返る勤労」』も無事終了した。

オフィシャルサイトhttp://www.unicorn.jp/

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