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メディア化作品が人気の中、完結作品も目立った2017年コミック界。2018年注目のコミックは…

メディア化作品が人気の中、完結作品も目立った2017年コミック界。2018年注目のコミックは…

2017年コミックシーンで印象的だったこととは

電子書籍・電子コミックストア【Reader Store】の2017年コミックベストセラーランキングが発表されました。

2017年は『いぬやしき』『7SEEDS』などの人気作の完結が印象的です。なかでも個人的にもっとも印象的だったのは『それでも町は廻っている』の最終巻が刊行されたこと。翻訳コミックの傑作『ヒットマン』も既刊1,2巻に加えて今年3,4,5巻が刊行され完結しました。
また、萩尾望都による少女漫画史いやマンガ史に輝く傑作シリーズ『ポーの一族』の20年ぶりとなる新作が刊行され、宝塚での舞台化が発表。『ちーちゃんはちょっと足りない』で2014年もっとも評価されたマンガ家のひとりになった阿部共実のひさしぶりの新作『月曜日の友達』の連載が開始され、第1巻が刊行されたのも今年です。

では、以下にランキングで印象的だった作品についてそれぞれふれていきましょう。

Reader Store 年間ベストセラーランキング

【コミック1位~20位】
01位『キングダム 48』 原泰久/ 週刊ヤングジャンプ
02位『進撃の巨人 attack on titan 24巻』 諫山創 / 別冊少年マガジン
03位『機動戦士ガンダム THE ORIGIN(24)』 安彦良和, 矢立肇 ほか2名 / 角川コミックス・エース
04位『宇宙兄弟 32巻』 小山宙哉 / モーニング
05位『3月のライオン 13巻』 羽海野チカ / ヤングアニマル
06位『東京喰種トーキョーグール:re 13 』 石田スイ / 週刊ヤングジャンプ
07位『ダンジョン飯 5巻 』 九井諒子 / HARTA COMIX
08位『ONE PIECE モノクロ版 87 』 尾田栄一郎 / 週刊少年ジャンプ
09位『鋼の錬金術師27巻 』 荒川弘 / 月刊少年ガンガン
10位『監獄学園 27巻』 平本アキラ / ヤングマガジン
11位『終末のハーレム セミカラー版 4』 LINK, 宵野コタロー / 少年ジャンプ+
12位『弱虫ペダル 52』 渡辺航 / 週刊少年チャンピオン
13位『七つの大罪 28巻』 鈴木央 / 週刊少年マガジン
14位『僕のヒーローアカデミア 16』 堀越耕平 / 週刊少年ジャンプ
15位『HUNTER×HUNTER モノクロ版 34』 冨樫義博 / 週刊少年ジャンプ
16位『GIANT KILLING 45巻』 ツジトモ, 綱本将也 / モーニング
17位『魔法使いの嫁 8巻』 ヤマザキコレ / 月刊コミックブレイド
18位『幼女戦記(7)』 東條チカ, カルロ・ゼン, 篠月しのぶ / 角川コミックス・エース
19位『ちはやふる 36巻』 末次由紀 / BE・LOVE
20位『食戟のソーマ 27』 附田祐斗, 佐伯俊, 森崎友紀 / 週刊少年ジャンプ

以下、TOP100詳細はこちら 

※ソニーの電子書籍・電子コミックストア【Reader Store】調べ


ランキングから振り返る2017年人気のコミック

今年2017年の第1位は、45,46,47,48巻が刊行された『キングダム』。
まったくの無名から身を起こし、いまや五千人の隊を率いる信。かたや長きにわたる政争を勝ち抜き、とうとう秦国内の権力を掌握した政。紀元前の中国大陸を舞台に繰り広げられる壮大な戦乱絵巻は、いま起承転結で言えばおそらく「承」の頃。50巻を目前にまだ「承」?と思われるかもしれませんが、ここまでダレることなく積み重ねられてきたさまざまな戦いは、信と政、そして彼らと共に戦う英雄たちが背負う重さを描くためには必要だったに違いありません。いよいよ幕を切って落とされた中華統一のための戦い。信たち秦軍が最初に攻め入るのは、当時を代表する知将李牧が率いる趙国。本作の魅力は脇役たちの物語もしっかりと描きこむところですが、暗君ぶりのすさまじい趙王に仕えなきゃならない李牧が敵ながら切ない。ライバルとなる王賁、蒙恬とともに将軍を目指す信のこれからの活躍がまだまだ楽しみです。

キングダム 48
原泰久(著者)
週刊ヤングジャンプ
集英社

第2位にランクインしたのは『進撃の巨人』。エレンたちが死闘の末に守りぬいた「壁の中の世界」は、実は外の世界から逃れてきた人々が逃げ込んだ国であったこと、外の世界では巨人を兵器として使い戦争に明け暮れる国々が存在していたことが明らかに。2017年刊行の22,23,24巻では、外の世界とりわけエレンたちを超大型巨人などで襲撃した「マーレ国」の事情も描かれるようになります。これまで主人公として描かれてきたエレンたちを離れ、視点はマーレで虐げられつつも戦功のために奮闘するガビたちへと移ります。壁の内側の人々とは別の、外の世界の事情が描かれることで、謎に包まれていた本作の全貌がとうとう読者の前にもはっきりと現れてきたわけですが、この物語がこれからどう転がっていくのか、まったく予測できません。来年も目が離せませんね。

進撃の巨人 attack on titan 24巻
諫山創(著)
別冊少年マガジン
講談社

そのほか、ベストテンで注目したいのは第7位にランクインした『ダンジョン飯』。20位以内には『幼女戦記』もランクイン。大人の男性が子供の体に「なる」という点で共通する、57位の『無邪気の楽園』と好対照をなしています。『幼女戦記』の主人公が転生する前の人生はエリートコースのサラリーマンで、『無邪気の楽園』の主人公はニートだったという違いはあれど、どちらもそれぞれに転生後の人生を堪能しているのが興味深いですね。20位以降にも『亜人』、『メイドインアビス』、『ベルセルク』、『亜人ちゃんは語りたい』などの作品もランクイン。いずれも要チェックです。『幼女戦記』『亜人』『メイドインアビス』『ベルセルク』はいずれも映像化作品も話題になっているのは皆さんすでにご存知でしょう。

幼女戦記(7)
東條チカ(漫画)
カルロ・ゼン(原作)
篠月しのぶ(キャラクター原案)
角川コミックス・エース
KADOKAWA / 角川書店

2018年に注目する作品は…

また、『封神演義』で有名な藤崎竜による再コミカライズで大いに話題になった『銀河英雄伝説』も依然として人気。原作に忠実に、かつ読みやすくなっていて好評です。『銀英伝』も2018年にあらためてアニメ化するというニュースがファンたちのあいだで大いに話題になりました。

43位の『ヴィンランド・サーガ』は、11世紀の北欧で戦いに生きたヴァイキングたちの物語。主人公トルフィンは父の真の仇が誰なのかを知ることになりますが、あくまで殺し合いを回避するための苦闘を続けます。トルフィンの好敵手ガルムも登場し「殺し合いより楽しいことはなんにもないね」という本作のテーマに繋がる重要なセリフを呟きます(惚け顔で)。

ドラマ化され、ちょっとした社会現象をも引き起こした『逃げるは恥だが役に立つ』もランクイン。ドラマ終了後に、原作の方も完結しました。ドラマ版とはまた違った原作の魅力を、この機会にチェックしてみてはいかがでしょうか。
ドラマ化といえば『東京タラレバ娘』も完結。アラサー女子に限らず、また恋愛に悩む人たちに限らない、あらゆる不器用者たちの日々を肯定するラストに多くの読者が慰められ勇気付けられました。

『キングダム』よりもさらに100年ほど遡った時代、遠く西方マケドニアの戦いを描く『ヒストリエ』は59位にランクイン。2年ぶり待望の新刊。主人公エウメニデスの身辺はまたしても大きく動きだしています。

今年、木村拓哉主演で実写映画化された『無限の住人』も89位にランクイン。実写映画化による話題性もあると思いますが、現在連載中の『波よ聞いてくれ』『ベアゲルター』が好調であり、また今年は連作短編集『幻想ギネコクラシー』が刊行されたことも関係しているかもしれません。

個人的にもっとも嬉しかったのは『もやしもん』がランクインしていたこと。これは今年10月から11月に開催された千葉県立現代産業科学館の「ちばの発酵」展や、ワイヤード誌でのドミニク・チェン氏との対談の影響もあるでしょうが、やはり今年から念願の電子書籍版がリリースされたことが決定的でしょう。『純潔のマリア』、そして『週刊石川雅之』まで電子化されています。

ソフトメタルヴァンパイア 1巻
遠藤浩輝(著)
アフタヌーン
講談社

2018年、注目している作品は遠藤浩輝『ソフトメタルヴァンパイア』。社会はハードSFの『EDEN』、一転して身体表現にストイックに迫った『オールラウンダー廻』と、作品世界を大きく転換させながら骨太なエンターテインメントを描いてきた作者による吸血鬼と物理学をモチーフにした新作です。

来年も面白い作品がきっとたくさん発表されるでしょうから、いまからとても楽しみですね。

文 / 永田希