Interview

アニメ『血界戦線&BEYOND』の無国籍サウンドはこうして創られた。〈ヘルサレムズ・ロット〉が持つ“世界中の音楽を内包してくれる魅力”とは?

アニメ『血界戦線&BEYOND』の無国籍サウンドはこうして創られた。〈ヘルサレムズ・ロット〉が持つ“世界中の音楽を内包してくれる魅力”とは?

2017年秋期もさまざまなタイプのアニメがテレビを賑わしたが、そのなかでも特に音楽好きの心に残った作品が『血界戦線 & BEYOND』だ。『トライガン』などのヒット作で知られる漫画家・内藤泰弘による人気コミック『血界戦線』を原作とする本作。超人秘密結社の構成員たちが活躍するダイナミックなアクション作品なのだが、その映像を彩る劇伴音楽が実にスタイリッシュな魅力を放っているのだ。ここでは、同作の劇伴を手掛けた音楽家・岩崎太整への取材で得た発言を交えながら、『血界戦線 & BEYOND』の音楽の独自性について紹介していく。

取材・文 / 北野 創


一癖ある超人的ヒーローたちが、異世界と繋がる街を守る!

まずは『血界戦線』という作品について説明しよう。今作の舞台となるのは、かつてニューヨークと呼ばれていた街〈ヘルサレムズ・ロット〉。3年前に〈大崩落〉と呼ばれる災害によって崩壊し、異世界と繋がることで人ならざる者たちが跋扈する〈地球上で最も剣呑な街〉へと変貌した場所だ。その現世と異界が交差する街の均衡を守るために暗躍しているのが、本作の主役を担う〈秘密結社ライブラ〉の面々。彼らはそれぞれ超人的な特殊能力を保有しており、その力を駆使して日々巻き起こる騒動に立ち向かっている。いずれも一癖ある人材ばかりだが、イメージとしてはアメコミ作品のヒーローに近い存在と言えるだろう。原作コミックでは彼らの活躍する姿が、基本1話完結のスタイルで描かれていく。

2015年にTVアニメ『血界戦線』が放送され、原作の設定に準拠しつつオリジナルのストーリーを根幹に組み込むことで連続性のある物語を展開。アニメ独自の世界観を表現して好評を博した。それに続く今回の新シリーズ『血界戦線 & BEYOND』では原作と同様に基本1話完結型となっており、物語の内容にも極力手を加えずアニメ化している。各話ごとに異なる雰囲気があり、アクションやバトル描写がメインの回があればコメディータッチの回もあったりと、さまざまなテイストのエピソードを楽しめるのが特徴となっている。

音楽的にも物語的にも何をやっても内包してくれる魅力がある

そのように物語のバラエティーに富んだ性質を音楽的な表現にも直結してみせたのが、今回の岩崎の劇伴仕事だ。『SR サイタマノラッパー』シリーズや『モテキ』などの映画/ドラマ音楽を手掛け、最近ではDAOKOやサイプレス上野とロベルト吉野らに楽曲提供するなど、ジャンルを問わず幅広く活躍する彼。アニメ音楽の仕事は前シリーズ『血界戦線』が初めてだったが、ビッグバンド・ジャズを中心に多彩なサウンドを混在させた無国籍感のあるスコアで作品世界を粋に演出してみせた。続けての登板となる『血界戦線 & BEYOND』ではその音の多様性がさらに進化/深化しているのだが、それはヘルサレムズ・ロットと1話完結型のスタイルがもたらしたものなのだという。

岩崎太整「僕はヘルサレムズ・ロットという街が好きで、前作から〈音楽で街を描く〉というのが自分の中のテーマとしてあったんです。あの街はニューヨークがモデルになってますけど、音楽的にも物語的にも何をやっても内包してくれる魅力があって、それが僕としてはすごく楽しいんですよ。実際ごちゃ混ぜの街なので、世界中のどんな音楽であっても〈これがヘルサレムズ・ロットの音楽です〉と言ってしまえば成立するというか(笑)。それと今回は自分の中で決めたルールとして、1話ごとに1曲テーマ曲を作ろうと思ったんです。自分のなかで物語と歌詞を合わせたり、場面に合わせて歌詞やテンポを合わせる作り方をやってみたくて。だから曲調はかなりバラバラなんですけど、そこは『血界戦線』のお話自体もバラバラな内容だからいいかなと思って」

昨年から少しずつ制作に着手していったという今回の劇伴において、目玉となるのはやはり各話ごとに用意されたテーマ曲だろう。岩崎が原作コミックやアニメの脚本を読みながら構想を練ったというこれらの楽曲には、世界各国のさまざまなアーティストが参加。しかも岩崎みずから海外に渡り、NY、ボストン、サンフランシスコ、パリ、バーゼル、カサブランカ、マラケシュ、フランクフルトなどを約2カ月弱かけて巡り、結果的に地球を反時計回りに一周したというのだからスケールが大きい……と思いきやこんな話も。

岩崎「海外でもずーっと曲を作ってたんですよね。僕は普段パソコンと鍵盤で曲を作るんですけど、最近は文明が発達したので、日本の作業場にあるメインのパソコンを世界中どこからでもリモートコントロールで動かせるんですよ。だからマンハッタンのホテルにこもったりしながら、これどこにいても変わらないなあと思って作業してました(笑)。本当に作曲旅みたいな感じでしたね」