es執筆陣が独断で選ぶ2017年 BEST MUSIC  vol. 3

Column

胸を熱くさせた音楽活動20年超えのアーティスト3組

胸を熱くさせた音楽活動20年超えのアーティスト3組

そろそろ2010年代の総括も視野に入ってきた2017年。安室奈美恵の突然の引退表明が90年代育ちをざわつかせたが、CDが最も売れていたあの時代に音楽を享受していた世代もすでにアラ40からアラ50。R&B、ヒップホップ、渋谷系にラウドロックなど多様化したジャンルを自由に横断しながら音楽を愉しんできた彼らが、この20年のシーンをボトムで支えてきたのは間違いない。

2017年のわたしのTOP3は、図らずも90年代にデビューし、いまもキャリアを更新し続けているアーティストになった。また、90年代組に影響を与えた細野晴臣、佐野元春の新作の瑞々しさとロマンチシズム、その頃に産声を上げたSuchmos、スカートの快進撃も印象深かった。

音楽を愉しむフォーマットの変化で、未知の音楽と出会える機会が増えたこれからは、新旧、ジャンル、時代を超えたリスナーのプレイリストが出来てゆく。そこから、生まれてくる新しい音楽が愉しみでもある。

文 / 佐野郷子

クレイジーケンバンド

2017年、結成20 周年を迎えたクレイジーケンバンド(CKB)は、その中でも希有な成功例。元クールスR.C.の横山剣率いるCKBは、新人といえば若者という相場を打ち破り、30代後半にデビュー、“狂剣患者”と呼ばれるシンパを獲得。シンパの一人でもあった宮藤官九郎脚本のTVドラマの主題歌『タイガー&ドラゴン』でブレイクを果たし、歌謡曲、R&R、ソウルなどが混然一体となったエンタテインメント性溢れる楽曲で幅広い支持を集めてきた。17年8月にはベストアルバム『CRAZY KEN BAND ALL TIME BEST “愛の世界”』をリリース、9月には結成20周年を記念して地元横浜の赤レンガ野外特設ステージで大規模なスペシャルライブ「20TH ATTACK! CKB [攻]」を開催。縁あってツアー・ブックの編集を仰せつかり、あらためてその唯一無二の魅力を思い知ることになったが、cero、Suchmos、VIDEOTAPEMUSICといった今をときめく才能にもリスペクトされ、先日の中野サンプラザ公演にはサプライズ・ゲストとして岡村靖幸が名曲「昼下がり」を熱唱するなど、CKB♥を実感した20周年イヤーだった。

クレイジーケンバンドの作品を聴いてみる

Cornelius

11年ぶりにリリースしたアルバム『Mellow Waves』が静かな、しかし鮮烈な衝撃を与えたCorneliusは長いスパンを経て新たな扉を開け、新旧のファンを唸らせた。アルバムに先駆けて7インチでリリースされた坂本慎太郎作詞の「あなたがいるなら」で聴かせた美しいラブソングに胸を熱くし、緻密に作り込まれた音像の完成度に驚かされたのと同時に、彼の音楽から既視感と未来が交差するような古今の名盤と同質の普遍性を見出すことができたのはリスナーとしても収穫だった。名盤と呼ばれ、長く愛聴される作品は、未知の知覚に分け入る特別な何かが潜んでいるが、これはその中に確実に入る。フリッパーズ・ギターから20数年の時を経て、2017年は奇しくもその二人が久しぶりの新作をリリース。現在の彼らの充実と成熟を噛みしめる年でもあった。映像とプレイが見事にシンクロするライブでも比類なき素晴らしいステージを見せてくれたCorneliusは、3月から全米ツアーへ旅立つ。

Corneliusの作品を聴いてみる

サニーデイ・サービス

2016年8月にリリースした『DANCE TO YOU』が好評を博したサニーデイ・サービスは、その勢いを駆ってストリーミング配信のみで17年6月に予告なしにアルバム『Popcorn Ballads』をリリース。日本では前例がないものの、ストリーミングで音楽を聴くことが当たり前になりつつある時代に新作をぶつけてきた、その潔さはレーベルを主宰する曽我部恵一らしい選択とも言える。しかも、その音楽が前作の延長という類いではないところが面白く、刺激的だった。12月25日にフィジカルリリースされたCD・アナログは、大半の曲にリアレンジやリミックスが施され、CRZKNY、泉まくらが参加。「戦時下の恋人たちをテーマとした」というが、ロカビリーからサイケデリック、ファンキー・チューンもあればクリスマスソングもと、種々雑多とも言える2枚組全25曲。12月に開催された東阪のライブでも『DANCE TO YOU』と『Popcorn Ballads』を軸としたセットリストでグイグイ攻める。そんな結成25年のバンドの姿が何とも力強く、眩しく見えた。

サニーデイ・サービスの作品を聴いてみる

vol.2
vol.3
vol.4