es執筆陣が独断で選ぶ2017年 BEST MUSIC  vol. 4

Column

面白かった&感動した企画ライブ ベスト3

面白かった&感動した企画ライブ ベスト3

2017年は106本のライブを観た中で、面白かった対バンや、感動したライブ・イベントをピックアップしてみることにする。

文 / 平山雄一

キュウソネコカミ 試練のTAIMAN TOUR 2017
4月19日@Zepp DiverCity(Tokyo)

4月19日、Zepp DiverCity(Tokyo)で観た「キュウソネコカミ 試練のTAIMAN TOUR 2017」の対バン(マン)相手は、グルーブ魂。新旧“ポンコツ”バンドの対決がめちゃくちゃ面白かった。

このツアーは、相手が悪い。札幌では対応力抜群のSPECIAL OTHERS、福岡ではスマートなストレイテナー、名古屋では最強トリオの呼び声高いUNISON SQUARE GARDEN、東京の初日は“人間”ではないMAN WITH A MISSIONと、まともにぶつかったらボロボロにやられる奴らばかり。中でも“グループ魂”は、常識が通じない相手だ。と思っていたら、その通りの展開になった。

最初に登場した“グループ魂”は、上ネタ下ネタ何でもありのステージングで会場を荒らしまくる。これ以上ないほどのグダグダ展開で会場をケムに巻く。その姿はポンコツの極致だった。対してキュウソも“ポンコツ”をテーマにしているだけに、ガチンコ対決となり、年季の違いでグループ魂がやや優勢の展開。だがキュウソは最後に愚直さでオーディエンスのハートをぎゅっとつかんで引き分けに持ち込む名勝負となったのだった。また、このポンコツ対決を、平等に熱く盛り上げた素晴らしいオーディエンスたちも、2017年の“ベスト・オーディエンス賞”の一つに数えたい。

このイベントの直後にリリースしたライブアルバム『キュウソネコカミ-THE LIVE- DMCC REAL ONEMAN TOUR 2016/2017 ボロボロ バキバキ クルットゥー』に自信を得て、ライブのストロング・ポイントを活かしたアルバム『にゅ~うぇいぶ』を12月に発売。2018年の大ブレイクを虎視眈々と狙っている。

キュウソネコカミの作品を聴いてみる

MISIA SUMMER SOUL JAZZ 2017
7月9日@Zepp DiverCity(Tokyo)

7月9日、Zepp DiverCity(Tokyo)で観た「MISIA SUMMER SOUL JAZZ 2017」は、変則的な“対バン”の様相を呈していた。ニューヨークのトランぺッター黒田卓也の率いるメンバーは、アメリカのジャズ・シーンの最先端を走る面々で、そのバンドとMISIAのセッションはある種、“対バン”と言っていいものとなった。 

特にベースのRashaan CarterとドラムスのAdam Jacksonのリズムが素晴らしく、「BELIEVE」や「つつみ込むように…」などの大ヒット曲が最新のグルーヴによって解体&再構築されていく。対してMISIAは、演奏の骨格となるメロディをしっかりトレースしつつ、彼らのグルーヴに大胆に反応する。実験的かつスリリングなエンタテインメントになっていた。

ロバート・グラスパーと共演しているドラマー、クリス・デイブが、宇多田ヒカルの最新シングル「あなた」のミュージック・ビデオに登場して話題を集めているが、MISIAと黒田バンドとの出会いも、今後のJ-POPに多大な刺激を与えることになるだろう。

もともとMISIAはクラブ・カルチャーをメジャーに持ち込んだチャレンジ精神の持ち主で、この“MISIA SUMMER SOUL JAZZ 2017”で示した方向性は、それに匹敵する画期的なトライだった。彼女は2018年にデビュー20周年を迎えるが、その動向から目が離せない。

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ベルウッド・レコード45周年記念コンサート
10月8日@新宿文化センター大ホール

3つ目は、10月8日に東京・新宿文化センター大ホールで行なわれた「ベルウッド・レコード45周年記念コンサート」で、歴史的価値の高いオムニバス・イベントだった。

日本のフォークやロックの黎明期に、“はちみつぱい”や高田渡、大瀧詠一などの名盤を数多くリリースした伝説のレーベル“ベルウッド”のアニバーサリーを祝うコンサートには、ベテランから気鋭のニューカマーまでが駆けつけて、熱のこもったパフォーマンスを披露。このレーベルが世に出したサウンドの歴史的価値だけではなく、それらが今も新鮮な音楽性を保ち続けていることを強く印象付けた。

今で言うセッション・バンドのハシリともいえるユニークなバンド“はちみつぱい”が最初に登場して、幻想的な演奏で時代を引き戻す。ただし、演奏内容が古いわけではない。このまま「FUJI ROCK」に出てもおかしくないクオリティと斬新さを備えていた。そこに長い付き合いのあがた森魚が合流して、45年前にベルウッド・レコードからリリースされた「赤色エレジー」を歌う。あがたはTHE YELLOW MONKEYの吉井和哉がリスペクトを捧げる、カルト・アーティストだ。

レーベルの看板の一人だった高田渡はすでに故人となっているが、彼の息子の高田漣が父親の名曲「コーヒーブルース」などをカバーする。漣はマルチ楽器奏者として細野晴臣から星野源まで共演する腕達者。このあたりも、現在と過去が交錯して興味深かった。

そしてもっとも刺激的だったのが、ハウスバンドの“45th Bellwood BAND”をバックに、ベルウッド・レーベルを敬愛するアーティストがカバー曲を歌ったシーンだった。GLIM SPANKYの松尾レミの「ぷかぷか」(オリジナルは西岡恭蔵)、ドレスコーズの志磨遼平の「空飛ぶくじら」(大瀧詠一)、キセルの「終わりの季節」(細野晴臣)には、若いミュージシャンたちの敬意が込められていて、非常に感動した。

ライブの最後は、出演者全員が揃って、はっぴいえんどの「さよならアメリカさよならニッポン」を歌って幕を閉じた。が、その後にも感動的な場面が待っていた。松尾レミと志磨はあがたの大ファンで、終演後、2ショットを撮らせてもらって感激していた。会場ロビーでは中古のアナログ盤が飛ぶように売れ、今の音楽シーンの“アナザーサイド”を見る思いがしたのだった。

©有賀幹夫

その他、単独ライブでは、7月15日に大宮ソニックシティのレッド・ウォーリアーズの復活ライブや、12月13日のユニコーン30周年記念ライブも楽しかった。ベテラン陣だけでなく、エッジーな才能のニューカマーにも、ライブで出会う事ができた。間もなくメジャー・デビューするパノラマパナマタウン、インディーズ・シーンではKing GnuやShe,in the hazeがオリジナリティ豊かなライブを展開していた。

さて、2018年にはどんなライブが待っているのだろう。これからもライブというシーンの最先端をウォッチングしていきたいと思う。

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