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メディア化多数と活況を呈するライトノベル界。2017年の状況を振り返り、2018年へ備えよ!

メディア化多数と活況を呈するライトノベル界。2017年の状況を振り返り、2018年へ備えよ!

電子書籍ストア「Reader Store」は、7周年を記念して2017年間ベストセラーランキングを発表した。

Reader Store 年間ベストセラーランキング

【ラノベ1位~20位】
01位『魔法科高校の劣等生(23) 孤立編』
佐島勤, 石田可奈 / 電撃文庫
02位『この素晴らしい世界に祝福を! 12 女騎士のララバイ【電子特別版】』
暁なつめ, 三嶋くろね / 角川スニーカー文庫
03位『ソードアート・オンライン20 ムーン・クレイドル』
川原礫, abec / 電撃文庫
04位『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか12』
大森藤ノ, ヤスダスズヒト / GA文庫
05位『本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第三部「領主の養女V」』
香月美夜, 椎名優 / TOブックス
06位『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 16』
理不尽な孫の手, シロタカ / MFブックス
07位『転生したらスライムだった件11』
伏瀬, みっつばー / GCノベルズ
08位『Re:ゼロから始める異世界生活 14』
長月達平, 大塚真一郎 / MF文庫J
09位『冴えない彼女の育てかた13』
丸戸史明, 深崎暮人 / 富士見ファンタジア文庫
10位『ナイツ&マジック 8』
天酒之瓢, 黒銀 / ヒーロー文庫
11位『異世界はスマートフォンとともに。10』
冬原パトラ, 兎塚エイジ / HJ NOVELS
12位『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア9』
大森藤ノ, はいむらきよたか, ヤスダスズヒト / GA文庫
13位『二度目の人生を異世界で17』
まいん, かぼちゃ / HJ NOVELS
14位『私、能力は平均値でって言ったよね! 6』
FUNA, 亜方逸樹 / アーススターノベル
15位『盾の勇者の成り上がり 18』
アネコ ユサギ, 弥南せいら / MFブックス
16位『ようこそ実力至上主義の教室へ 7』
衣笠彰梧, トモセシュンサク / MF文庫J
17位『フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~ 15』
埴輪星人, ricci / MFブックス
18位『エロマンガ先生(9) 紗霧の新婚生活』
伏見つかさ, かんざきひろ / 電撃文庫
19位『灰と幻想のグリムガル level.11 あの時それぞれの道で夢を見た』
十文字青, 白井鋭利 / オーバーラップ文庫
20位『ノーゲーム・ノーライフ プラクティカルウォーゲーム』
榎宮祐, 榎宮祐 / MF文庫J

以下、TOP100詳細はこちら

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2017年のライトノベルは『ナイツ&マジック』や『異世界はスマートフォンとともに。』をはじめとした異世界へと転生/転移した主人公の活躍を描いた物語がアニメとして放映され、昨年の『Re:ゼロから始める異世界生活』の流れに続き、あらためて異世界を舞台とした作品に注目が集まった一年となった。2018年も『デスマーチからはじまる異世界狂騒曲』や『ありふれた職業で世界最強』など、異世界を舞台としたライトノベルを原作とするTVアニメの放送が続々と予定されている。異世界を描く物語は2018年も間違いなく大きな話題のひとつになるだろう。

「ラノベ・シリーズジャンル」のベストセラーランキングでも『ナイツ&マジック』が10位、『異世界はスマートフォンとともに。』が11位となったほか、異世界を舞台にした作品がランキングの上位に名前を連ねている。2017年の人気シリーズ、そして2018年に飛躍の可能性を秘めたシリーズなど、発表されたランキングを振り返りながら見ていきたい。

ナイツ&マジック 8
天酒之瓢(著)
黒銀(イラスト)
ヒーロー文庫
主婦の友社

上位は今後の展開も楽しみな人気シリーズが並ぶ

ランキングの第1位に輝いたのは『魔法科高校の劣等生』、第2位には『この素晴らしい世界に祝福を!』、第3位には『ソードアート・オンライン』が続いた。いずれの作品もアニメやゲームを齧っている方なら一度は耳にしたことがあるタイトルだ。2017年に至っては、『魔法科高校の劣等生』と『ソードアート・オンライン』の劇場アニメが公開され、いずれも大ヒットを記録したことは記憶に新しい。アニメ新企画が進行中の『この素晴らしい世界に祝福を!』もまだまだ見逃せない作品のひとつと言えるだろう。いまやライトノベルを代表する作品に成長した『ソードアート・オンライン』も、依然として幅広い層の人気を獲得し続けており、2018年以降も目の離せない展開が続く。シリーズ屈指の大長編エピソード《アリシゼーション編》のTVアニメ化の発表、ファン待望となる新章《ユナイタル・リング編》の始動、ハリウッドでのドラマ制作をはじめ、人気は更なる拡大の一途を辿ることは間違いない。既に大きな人気を獲得している作品も、来年以降の展開に余念がないと言える。

魔法科高校の劣等生(23) 孤立編
佐島勤(著者)
石田可奈(イラスト)
電撃文庫
KADOKAWA / アスキー・メディアワークス

異世界を舞台にした作品の人気は依然として高い

そして、ランキングにおける「異世界系作品」の存在はやはり無視できない結果となっている。冒頭でも触れたように、異世界を舞台とした作品が数多くTOP100に名を連ねた。特に注目すべきはTOP10に食い込んだ3作品だろう。本好きの主人公が識字率も低く書物もほとんど存在しない異世界で、本作りに大奮闘する『本好きの下剋上』シリーズ。後悔ばかりの人生を送ってきた主人公が、転生した剣と魔法の異世界で第二の人生と真剣に向き合う『無職転生~異世界行ったら本気だす~』。スライムへと転生した主人公が仲間と共に最強の存在へと上り詰めていく『転生したらスライムだった件』。いずれの作品も異世界における「挑戦」や「目的」、「成功体験」をテーマとして高い人気を獲得しており、熱狂的なファンも多い。TOP10こそ逃しているものの『二度目の人生を異世界で』や『私、能力は平均値でって言ったよね!』なども同様にファンは多く、いつアニメ化の文字が躍ってもおかしくない作品ばかりとなっている。

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第三部「領主の養女V」
香月美夜(著)
椎名優(イラスト)
TOブックス

自由やのんびりとした生活を求める作品の傾向も強まる

また、2017年のライトノベルでは「自由で気ままな生活」や「スローライフ」といったキーワードを目にする機会が格段に増えた。前述した異世界を舞台とした作品でも多く、ランキング45位の『アラフォー賢者の異世界生活日記』、56位の『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』、63位の『とんでもスキルで異世界放浪メシ』などはキーワードの傾向を汲んだ作品と言える。異世界を舞台とした作品では、与えられた大きな役割や使命に挑み「目的」や「欲求」を強く有する作品が多かった。一方で「自由な生活」や「スローライフ」を謳う作品は、己に与えられた力を自身が不便なく、自由にのんびりと暮らすための手段として用い、何者にも縛られない生き方をテーマのひとつとしている傾向が強い。先に挙げた作品をはじめ、ランキング中盤で存在感を強めるこれらの作品は、今後ライトノベルで更なる人気を獲得する可能性は十分にある。また、こういった背景のひとつには、主人公のおっさん化も広く許容されるようになり、普通のおっさんが得られる幸福のひとつの形として、読者を魅了している可能性も十分にあるのだろうと感じている。

アラフォー賢者の異世界生活日記 4
寿安清(著者)
ジョンディー(イラスト)
MFブックス
KADOKAWA / メディアファクトリー

ランキング全体を通して見るとアニメ化作品が話題性の面からも人気は高い。一方で、これからアニメとして放送される『りゅうおうのおしごと!』をはじめ、数年に渡って綴られた物語の結末が描かれた『ゼロの使い魔』や『アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者』など、注目すべきシリーズは本当にたくさんある。トレンドの先取りを狙うもよし、完結した作品を追いかけるもよし。2018年に向けて、まずは気になった作品を1冊手に取ってもらいたい。

文 / 鈴木寿