es執筆陣が独断で選ぶ2017年 BEST MUSIC  vol. 5

Column

心に深く爪痕を残したアルバム3枚

心に深く爪痕を残したアルバム3枚

2017年も素晴しい作品やライヴにたくさん出会えた年でした。毎年、その頻度が更新されているような感覚もあり、嬉しい悲鳴を上げています。個性的なアーティストが続々とシーンを賑わす一方で、中堅やベテラン組も渾身のアルバムを作ってくれたりと、いちリスナーとしても充実した1年を過ごせました。

文 / 荒金良介

『Fin』/10-FEET

 まずここで取り上げたいのは京都を拠点に活動する3ピース・バンド、10-FEETです。彼らは地元・京都府宇治市でバンド主催の野外フェス「京都大作戦」を開催し、17年は記念すべき10回目を迎え、不動の人気フェスとして成長を遂げてます。同時に結成20周年というアニバーサリー・イヤーでもあり、そのタイミングで出た8thアルバム『Fin』は間違いなく最高傑作と言える出来映えでした。TAKUMA(Vo/G)は「これが本当に最後と思いながら、1曲1曲を作った」と言ってましたが、別にバンドは解散するわけでもなく、休止するわけでもなく、あくまで後悔を一滴も残さずに全精力を注いでやり切る!というスタンスで臨んだようです。そのメンタリティにより、20年突っ走ってきたバンドがここに来てとんでもない傑作を作り出したことに深い感動を覚えました。最高傑作と位置付けるには様々な要素があります。今作は楽曲のバラエティ感、1曲1曲に込められた感情の密度濃度は、過去作の凌ぐ内容に仕上がっていたからです。メロディック・パンク、ミクスチャー、おバカなハジケっぷり、ここ数作の表題曲で提示した歌もの路線と、デビューからこれまで培ってきたエッセンスを包括しつつ、ネクスト・レベルに突き抜けた楽曲ばかりで驚愕と爆笑の連続という、なんとも10-FEETらしい作風になっていました。特に「ウミガラスとアザラス」は名曲中の名曲で、優しくも雄大な歌メロに癒されます。また、「HONE SKA feat.東京スカパラダイスオーケストラ」はシュールすぎる歌詞と微妙な隙間を設けた曲調にじわじわと笑いが込み上げてきます。とにかく聴いてみてください。

 『THE GUERRiLLA BiSH』/BiSH

続いてはBiSHのメジャー2ndアルバム『THE GUERRiLLA BiSH』です。17年は彼女たちにとって大飛躍した年と言っていいでしょう。7月22日に幕張メッセで単独公演を行い、7千人を収容してソールド・アウトを記録しました。それ以降もMステ出演や、大阪・道頓堀で海賊ゲリラ・ライヴを決行したりと、メディア露出も大幅に増えました。さらに言うと、”楽器を持たないパンクバンド”という彼女たちのキャッチ・フレーズそのままに、今年は04 Limited Sazabys、MY FIRST STORY、Dizzy Sunfistといったパンク/ラウド系と対バンを繰り広げ、パンク系イベントにも積極的に出演し、熱量の高いパフォーマンスで多くの観客を魅了しました。実を言うと、僕もBiSHのライヴを観て、打ちのめされた一人です。メンバー自ら振り付けを担当し、楽曲とステージングの両方で、”聴かせて魅せる”優れたパフォーマンスを発揮しています。アイナ・ジ・エンドのハスキー・ボイスも大きな武器ですが、視覚聴覚で惹き付けるドラマティックなエネルギーはちょっとズバ抜けた存在感に満ちています。今作の楽曲傾向もパンクでヘヴィな側面がより一層強くなり、よりライヴで盛り上がれる楽曲がずらり揃ってます。既にライヴで披露済みの「SHARR」は、ずっとシャウトし続けて終わるというラウド系バンドもビックリの攻撃モード全開の曲調です。バンド/アイドル・シーンという壁さえ粉砕する強烈な個性には今後も要注目です。

『異次元からの咆哮』/ 人間椅子

最後はベテラン・バンド、人間椅子の最新作『異次元からの咆哮』も素晴しい内容でした。メンバーのルーツにある70、80年代のハード・ロックをやり続け、ヘヴィ・メタル界の帝王オジー・オズボーン主催の「Ozzfest Japan 2013」出演で大反響を呼び、今や若者から年配の方まで幅広い客層をゲットしています。バンド自身も「第二のデビュー」と位置付けるほど、勢いが増している状況です。今作は和嶋慎治(Vo/G)、鈴木研一(Vo/B)の出身地でもある青森県弘前市の「弘前ねぷたまつり」をモチーフにしたアルバムのアートワークもビジュアル効果抜群ですが、その中身も決して負けてません。ハード・ロックを基軸にこれまで以上にキャッチャーな楽曲が多いので、これから人間椅子を聴いてみよう、と思う人には最適の入門盤と言えるでしょう。それから彼らのルーツにあるブラック・サバスやキング・クリムゾンなどハード・ロック/プログレッシヴ・ロックの道を辿ってみるのもいいと思います。さらに人間椅子の楽曲を味わい深く楽しめることでしょう。

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