es執筆陣が独断で選ぶ2017年 BEST MUSIC  vol. 6

Column

アーティストが発した言葉の輝きが眩しかった、新鋭3組

アーティストが発した言葉の輝きが眩しかった、新鋭3組

2017年もたくさんのアーティストに出会い、インタビューさせていただきました。大ベテランからベテラン、中堅、デビューしたての新人、デビュー前の新人、インディーズアーティストetc…とにかくあらゆるジャンルの音楽、アーティストに接する事ができた。インタビューをして気づくのは、当たり前かもしれないが、どのアーティストも、人の心をザワザワさせる“何か”を持っているという事。表現者、しかも音楽で感動を伝えるという職業を生業にすると決めたのだから、“何か”がなければその土俵には上がれないわけで。そういう意味では選ばれし者が、毎年デビューを果たしているわけだが、今回は総括企画らしく、17年にインタビューさせてもらったアーティストの中でも、18年の音楽シーンに、大きなうねりを起こしてくれそうな新鋭3組を、ピックアップしてみたいと思う。期待の新人、ブレイク候補、色々な言い方があるが、CD、ライヴはもちろん、インタビューの時に感じたそのアーティストが発した言葉の輝きが眩しかった、新鋭3組を挙げてみます。

文 / 田中久勝

King Gnu(キング・ヌー)

まずはKing Gnu(キング・ヌー)。今年の夏は「フジロックフェスティバル2017」を始め、大型ロックフェスに出演し、ライヴシーンではすでにその名を轟かせている4ピースバンドだ。今年3月まではSrv.Vinci(サーヴァ・ヴィンチ)と名乗り、「SXSW (サウスバイサウスウエスト)JAPAN NIGHT」にも出演し、その後全米7ヵ所(ニューヨーク、シカゴ、シアトル、ポートランド、サンディエゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコ)でツアーを行い、地元の音楽好きからの評価も高かった。常田大希を中心に、感性を構成する音楽性も、キャラクターも違う4人が、それぞれの個性を剥き出しにして、ぶつかり生まれる音楽は、アカデミックさとアナーキーさが混在している。しかし10月25日に発売した1stアルバム『Tokyo Rendez-Vous』は「歌ものアルバムが作りたかった」といい、オルタナティブでありつつ、メロディは美しく、歌謡曲が持つ大衆性と豊潤な音楽性を感じさせてくれる。その絶妙なバランス感覚は出色だ。自分達の音楽を “トーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイル”と説明している。和洋折衷、なんでもありの東京という街に住み、東京発の新しい音楽を作り上げた。そして「他のバンドは洋楽を目指しているように見える。でも俺達は邦楽をやっている。ライヴの時、みんなで大合唱できる曲を作る」という常田の言葉が印象的だった。

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坂口有望(あみ)

大阪在住の現役高校生シンガー・ソングライター坂口有望(あみ)も、楽しみな逸材。身長148cmと小柄で、かわいらしいルックスだが、「ビッグになるための通り道がメジャーデビュー」という強い思いからくる、負けず嫌いで肝が据わっている強さがライヴでも伝わってきた。インタビュー時の言葉の端々からもそれは感じる事ができた。彼女が影響を受けているテイラー・スウィフトも、デビュー当時はティーンの毎日と、その心情を描いた曲、実体験を歌にして世界的な人気になったが、坂口が書く曲も、瑞々しさの中に捻りを加えた視線、言葉にできないホンネを言葉にした等身大のポップスだ。「歌詞カードを読んで、初めて“こんなことを歌っていたんや”って発見できて、鳥肌が立つみたいな方が好き。だからど直球じゃなくてカーブで描くことが多いです」と詞にこだわり、まさにひと筋縄ではいかないポップスを作りあげる。だからこそ気になるのだ。「私は音楽しかできひんから、音楽という道を選んだだけで、他の道が私には考えられなかった」といい、その潔さと決断力は見事。そんな彼女の目に映る、その時その時の日常は、どんな色で、どんな匂いで、どう感情が揺れるのか、いつまでも坂口有望の“等身大”を歌にし続けて欲しい。

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湯木慧(ゆき・あきら)

湯木慧(ゆき・あきら)は19歳の女性シンガー・ソングライターで、今人気急上昇中だ。彼女は音楽を作る際には、色と絵が一緒に浮かんできて、それを同時に表現したいという、まさにアーティストだ。これまでも歌いながらの即興ライヴペインティング行ったり、自ら編集・制作したリリック映像をセルフVJするなど、表現するという事への、いい意味でのその“貪欲”さは眩しいほどだ。ライヴでは、情感ほとばしる歌と、ゆるいMC、かわいらしいルックスとのギャップがあまりに強烈で、そのメリハリに惹きつけられる。2018年3月23日には渋谷duo music exchangeで、自己最大規模のワンマンライヴ「水中花」を、初の特別バンドセットで行う事が決定しているが、彼女の溢れる才能に圧倒されるはずだ。アコギをかき鳴らし思いを伝える彼女も強烈なインパクトがあるが、彼女の歌が、バンドと彼女が作り出すグルーヴとひとつになった時、どんな衝撃を感じさせてくれるのか、楽しみだ。

Lenny code fiction

3組といったが、もうひと組だけどうしてもここに挙げておきたい。4ピースバンドLenny code fictionだ。こんなに短期間でバンドって変わるものなんだ、という新鮮な驚きを感じさせてくれたからだ。自らを追い込むように“覚醒”と名付けたツアー「Lenny code fiction LIVE TOUR 2017 “AWAKENING”」を9月からスタートさせ、12月24日に恵比寿リキッドルームでファイナルを終えたばかりだが、文字通り“覚醒”し、来年への期待を感じさせてくれた。「余計なものを捨てる勇気が持てた事が成長」とボーカルの片桐航が語っているように、“モヤモヤ”が続いていたバンド、それぞれの意識を改革し、もう一度バンドと向き合い、方向性を見出した。それは曲にもライヴでのパフォーマンスにもすぐに表れ、本人達も、お客さんも、手応えを感じている。それを確かめる場所が今回のツアーだった。「自分達がカッコイイと思ったものを貫き通す」、そう語ってくれたメンバーの瞳の輝きはどこまでも力強かった。

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