山口洋のSeize the Day/今を生きる  vol. 24

Column

仲井戸“CHABO”麗市 (後編)/永遠の放課後の少年、そして忘れられない言葉

仲井戸“CHABO”麗市 (後編)/永遠の放課後の少年、そして忘れられない言葉

ロックンロールという細く曲がりくねった長い道。
到達点のないその道を、迷わず挫けず歩み続けるのは簡単なことじゃない。 その先を照らす光と確かな道標がなければ。
山口洋が心を込めて書き下ろす仲井戸“CHABO”麗市との出会いと現在、後編。


2017年12月25日、木枯らしが舞う六本木。EX THEATERでの仲井戸“CHABO”麗市さんのソロステージ。「唄う・奏でる・読む」で僕が受け取ったもの。

大きなステージにたったひとり。バックライトをあびて、そこには永遠の放課後の少年が立っていた。やんちゃで、優しくて、社会への疎外感とやるせない想いを抱え、何かがぎくしゃくしていて、まっとうに恋に悩み、音楽に救われて、新宿の街を彷徨う放課後の少年。

少年は音楽から手渡されたものを、人生をかけて今、僕らに手渡そうとしてくれる。君にしてやれること、やれないこと。この偉大な人を動かす力がほんの少しだけわかった気がした。

ジョンとヨーコが歌う「Happy Xmas(War is Over)」が大音量で流れ、僕は会場から街に出る。来たときと街の表情が違って見えるのは、確かな愛を受け取ったからだろう。音楽の力。人の力。誰とも喋りたくないから、僕はひとりで余韻とともに街を彷徨ってみる。時はすでに23時すぎ。少年はたったひとりで3時間半もステージに立っていた。まったくなんという人なんだろう、アゲイン。

日付が変わり、僕はまたひとつ歳を重ねる。この日のコンサートは敬愛するCHABOさんからの最高のプレゼントだった。

「いったいなにができるだろう? ともだちとして」。

忘れられない一節。はじめて一緒に旅をさせてもらったMY LIFE IS MY MESSAGE TOURでのこと。CHABOさんはある曲をカヴァーして、サビを日本語でこう歌ってくれた。すっとこころに入ってきて、離れなくなる。この一節は今や僕の行動原理でもあるのだ。

Photo by Mariko Miura

「いったいなにができるだろう? ともだちとして」。

世間の風に振り回されて、どうしていいのかわからなくなったとき。その一節を口ずさんでみる。僕は我にかえり、自分を取りもどす。いつだってそんな人間でありたいと思っていたはずだ、と。たいせつなことはいつもシンプルで、難しいけれど、人の落下を止められるのは愛だけなんだと、その一節はいつも僕に教えてくれる。

2011年3月11日。あなたにとっても、僕にとっても、この国にとっても、世界にとっても、おそらくCHABOさんにとっても。大きなクロスロードだったことだろう。

これまでの生き方は正しかったのか? 夢中になって身を捧げてきたロックンロールに果たして意味はあるのだろうか? 誰もが「生きる」ことの根底を揺さぶられたはずだ。

あの原発で作られた電気を使っていたのは他ならぬ僕だった。だから、MY LIFE IS MY MESSAGEというプロジェクトを、声をかけてくれた連中と始めた。予想通りの険しい道。無責任、無関心、理不尽、風化、妥協、迎合、裏切り、エトセトラ。そこには社会の闇が凝縮されていた。

CHABOさんはきっと熟考の上、僕らに力を注いでくれることを決断してくれたんだと思う。風のようにやってきて、持ちきれないほどのたくさんの愛を注いでくれた。

Photo by Mariko Miura

「いったいなにができるだろう? ともだちとして」。

手渡されたたくさんの宝、言葉、メロディー、グルーヴ、先達への想い、そして数通の手紙、宇宙的な優しさ。この世に音楽がある意味。まずは誰かを先に思いやること。今生の別れかもしれないと思って日々、人と接すること。エトセトラ、エトセトラ。

CHABOさんから僕が手渡されたように、僕はそれを誰かに手渡したい。それがロックンロールの意味かもしれないと、この頃思う。チャック・ベリーから連綿と続く、細くて曲がりくねった長い道。僕は永遠の放課後の少年の後ろ姿を追いかけている。

愛と敬意と深い感謝とともに。

仲井戸“CHABO”麗市(なかいど・チャボ・れいち):1950年、東京都・新宿生まれ。中学2年でザ・ビートルズ、エレキギターと出会う。1970年、加奈崎芳太郎と出会い、“古井戸”結成。同時期、忌野清志郎と出会い、“RCサクセション”のメンバーとして活動。1979年に古井戸解散。1980年、RCサクセション9thシングル「雨上がりの夜空に」発売、1981年より、その後恒例となる日本武道館コンサートを始める。
1985年『THE仲井戸麗市BOOK』でソロデビュー。1986年よりRCとして夏の日比谷野外音楽堂に立つ一方、仲井戸バンドとしてツアーを開始する。1990年、RCが無期限休養状態に入ると同時に本格的なソロ活動をスタート。1991年、The Street Slidersのギタリスト、土屋公平と“麗蘭”を結成。現在に至るまでソロ活動と並行して活発に活動している。
泉谷しげる、矢野顕子、坂本龍一、梅津和時、三宅伸治、竹中直人、村上“ポンタ”秀一、宮沢和史、寺岡呼人、夏木マリ、斉藤ノブ、和田唱、浜崎貴司、奥田民生、斉藤和義、中村達也、石橋凌、藤井一彦ら多くのミュージシャンと親交が厚く、様々なコラボやセッションを行ったり、リスペクトを受けてライヴにゲスト出演したりしている。
2012年11月3日、福島県相馬市復興プロジェクト “MY LIFE IS MY MESSAGE”に参加。以降、毎年このプロジェクトに関わっている。
2015年、デビュー45周年を機に『CHABO』を発表。2017年10月9日にはアルバム制作メンバーである早川岳晴、河村カースケ智康、Dr.kyOn、片山広明、梅津和時とともに日比谷野音で67歳バースデーライヴを行った。
2018年2月24日にはロックアパレルブランド「Amplifier」から、おおくぼひさこ撮影の仲井戸麗市 フォトT-shirt 発売決定。

仲井戸“CHABO”麗市オフィシャルサイト

ロックアパレルブランド「Amplifier」から、おおくぼひさこ撮影の仲井戸麗市 フォトT-shirt 発売

メディコム・トイ直営店舗、及びオンラインストア各店、アパレル系セレクトショップにて2018年2月24日発売。

「Amplifier」オフィシャルサイト

リリース情報

「雨あがりの夜空に」

HR7S070 ¥1,500(税別)
Mastard Records CHABO BAND、梅津和時、片山広明で1980年発表の名曲をセルフカヴァー。7インチレコード。

ライヴ情報

麗蘭・磔磔 Vol.25“Come On! Let’s go!”
2017年12月30日(土)京都・磔磔(SOLD OUT)

ROCKIN’ON PRESENTS COUNTDOWN JAPAN 17/18
麗蘭出演日:2017年12月31日(日)15:35~ MOON STAGE
会 場:幕張メッセ 国際展示場1~11ホール、イベントホール

麗蘭“Come On! Let’s go!”
2018年1月27日(土)大阪・Billboard Live OSAKA
2018年1月29日(月)東京・Billboard Live TOKYO

ライヴ詳細はこちら

著書プロフィール:山口洋(HEATWAVE)

Photo by Mariko Miura

1963年福岡県生まれ。1979年に結成したHEATWAVEのフロントマン。1990年、アルバム『柱』でメジャーデビュー。1995年発表のアルバム『1995』には、阪神・淡路大震災後に作られた「満月の夕」が収録され、多くのミュージシャン、幅広い世代に歌い継がれている。アイルランドの重鎮、ドーナル・ラニー、元モット・ザ・フープルのモーガン・フィッシャーら海外のミュージシャンとの親交も厚い。2003年より渡辺圭一(bass)
、細海魚(keyboard)、池畑潤二(drums)と新生HEATWAVEの活動を開始。2017年5月には14作目にあたるアルバム『CARPE DIEM』をリリース。12月26日にはHEATWAVEの全楽曲から23曲を厳選した初の2枚組セルフカヴァーアルバム『Your Songs』を発売したばかり。東日本大震災後に立ち上げた福島県相馬市を応援するプロジェクト“MY LIFE IS MY MESSAGE”を、仲井戸“CHABO”麗市、矢井田瞳らと続けている。

オフィシャルサイト

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