Interview

尊敬する中井貴一との共演を果たした満島真之介。新春ドラマ「娘の結婚」にて、新たな地平を見る。

尊敬する中井貴一との共演を果たした満島真之介。新春ドラマ「娘の結婚」にて、新たな地平を見る。

良質で味わいのあるドラマを放送することで定評の、テレビ東京系・新春ドラマスペシャル。2018年は「東京バンドワゴン」シリーズで知られる小路幸也原作の「娘の結婚」を1月8日(月・祝)に放送する。
男手ひとつで愛情深く育てた娘を嫁がせる父親の胸中を中心に、織りなされる人間模様をきめ細やかに描いていく。その劇中、主人公である中井貴一と波瑠の父娘に絡んでくるのが、婚約者の古市真。このキャラクターを演じた満島真之介に、撮影で感じたことをつぶさに語ってもらった。

取材・文 / 平田真人 撮影 / 荻原大志

素晴らしい作品、絶妙なタイミングで貴一さんと出会えました

このところエキセントリックな役柄が続いていた印象がありますが、「娘の結婚」で演じている古市真という役柄はプレーンな人物のように思えました。

確かにプレーンに映りますね。ただ、人それぞれに感情の振れ幅は広いはずだとも思っています。
ちょっと役の話から逸れてしまうかもしれませんが、最近は誰もが感情を抑えて表に出さずにいれば安全かなと、自主的に規制しているようにも感じているんです。そうやって鬱積したフラストレーションを、人との会話ではないところでぶつけていくという…悲しいかな、そうなってしまっているという社会のイメージが僕の中には明確にあるんですね。子どもの時のように、物事に対して素直に反応することが難しくなっている時代になってきているな、と。だからこそ、僕自身も常にプレーンでありたいですし…いや、プレーンというよりも何のしがらみも概念もない、そのままの自分を信じ、一緒にいる人を信じることで繋がり合うことが理想的だなと思っています。
今回、古市真という役を演じた「娘の結婚」という作品がまさしくそういう環境だったんです。お義父さん役の(中井)貴一さんがいらっしゃって、婚約者の波瑠ちゃんがいて、この2人の家族の中に僕が入っていくという、役を通じてとても素敵な関係性を体験することができました。この3人が集まったからこその空気感が生まれたんじゃないかなと、あらためて感じています。

いま、名前を挙げていただきましたが、中井貴一さんとの共演はいかがでしたか?

本当に素敵な男──敢えて〝オトコ〟と言わせていただきますけど、貴一さんのような男の先輩がいらっしゃることによって、未来に対して希望がわきました。生きざまが滲み出ると言いますか、貴一さんならではの色味や空気が、その場をアロマのように包んでくださるんです。それほどの大きな器でいらっしゃる方と出会えたことは、これからさまざまなことを背負っていく僕らの世代にとっては、とてもいい刺激と安心に繋がるんですね。
自分が小さなころから、ずっとご活躍されている姿を見てきましたが、目指すべきひとつの指標を示してくださったような気がします。芯の強さやユーモア、どことなく残る少年っぽさのバランスが絶妙でいらっしゃるなと映画やテレビドラマを通じて感じていて、「いつか共演できたら素敵だろうな、もし叶うなら、どういった作品でご一緒できるのだろう…」と、ぼんやり考える中で、「それぞれの〝自分〟が見える日常と地続きの世界観を描く作品でお会いしたいな」と妄想していたら、まさにこの『娘の結婚』という作品でめぐりあえました。とても幸せなかたちでご一緒できたことは大きな喜びです。

それほど、満島さんにとって大きな出会いであったと。

飾らないのに滲み出る貴一さんの優しさ、ユーモア、品の良さ。その人柄に惹きつけられるんです。実際、アクセサリーなどはほとんど身につけず、それこそプレーンな状態で現場にいらっしゃいました。常に心を開いた状態であり続ける美しさが伝わってくるんですよね。その深みは昨日今日で生まれるものではなく、ご自身としっかり向き合って格闘なさってきたからこそ培われたのだろう、と。なので、貴一さんのセリフひと言を耳にしただけで、ジワッと心に染みてきたんです。その反応は確実に僕の芝居に素直に反映されていると思います。お正月にご家族そろって過ごしている方々にお届けできる喜びを、現場にいる時点から感じることのできた作品でした。

新春ドラマスペシャル 「娘の結婚」より ©テレビ東京

家族の存在をしみじみ感じたり、あらためて考えるきっかけの一つになり得るドラマとも言えそうですね。

ドラマを視聴するにも地上波のテレビのみならず媒体が増えたことで、選択肢も幅広くなってきていますよね。見る側が時間に左右されず、能動的に選ぶことができるようになってきている。一方で、従来のように生活の一部として存在し続けるテレビというものもあるわけです。パッと電源を入れた時に放送されている番組と出合う、たまたまそのチャンネルに合わせたことで見えなかったものが見えた──偶然のような必然性からもたらされる喜びをはらんでいるのが、テレビという媒体の特性だと僕は思っているんです。と同時に、そこにテレビの未来があるんじゃないかなと。それゆえ、こういったホームドラマをお正月という時期に制作したテレビ東京さんの心意気や姿勢には感動しますし、これからの希望を感じさせてもらっています。
もし、ザッピングしているうちに何気なくチャンネルが合ったとしても、いつしか視聴者の心の芯にキュッと楔を打ち込むパワーのある作品になっていると自負しています。

確かに、「娘の結婚」で描かれているのは普遍的なテーマだなと感じました。

平成生まれの僕からすると、ホームドラマは子どものころに放送されていたな…という印象があるくらいなんです。あの頃はドラマを見ているというよりも「ほかの家庭を見る」という疑似体験に近かったんだなと、あとから気づいたんですよね。それによって自分の家族と家庭をおのずと客観視できるわけで、実はすごく大切なことだったんだなと今になって実感しています。
実際によそのお宅へお邪魔する時は、やっぱりその家の人たちもどこか構えているというか、本来の家庭の姿とは違う〝よそ行き〟の装いになることが多いと思うんです。でも、ホームドラマは、物語という虚構ではあるけれども、さまざまな家族や家庭のカタチをそのまま映し出してくれる。時代が変わろうとも普遍的な親と子の関係性だったり、人の目を見て話すことの大切さなど様々なことをそこから感じとることができるんです。一方で、舞台となる時代の空気というものも自然と切りとっているのもホームドラマならではの面白さ。環境や関係性は違えど、誰しもが持つ家族への想いや繋がりをシンプルに描いていくことによって、みなさんの心に素直に届くのではないかと期待しています。