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安西慎太郎&辻本祐樹主演『ゆく年く・る年冬の陣 師走明治座時代劇祭』開幕。笑いあり感動ありの“時代劇版異種格闘技戦舞台”とは?

安西慎太郎&辻本祐樹主演『ゆく年く・る年冬の陣 師走明治座時代劇祭』開幕。笑いあり感動ありの“時代劇版異種格闘技戦舞台”とは?

2017年12月28日、東京・明治座にて『ゆく年く・る年冬の陣 師走明治座時代劇祭』が開幕した。演劇製作会社る・ひまわりと明治座がタッグを組み、2011年より上演を続けてきた人気舞台シリーズの第7弾。
第一部は、笑い満載かつ少し切なさが残る時代劇。第二部は、歴史上の人物をモチーフにしたアイドルユニットによるショーの2部構成。盛りだくさんの4時間興行の内容を舞台写真とレポート、W座長を務める安西慎太郎と辻本祐樹の初日に向けてのコメントをお伝えする。

取材・文 / 片桐ユウ 撮影 / 中原幸

“時代劇版異種格闘技戦舞台”の言葉に頷くばかり

第一部の時代劇『SANADAMA・る』では、「大坂夏の陣」を仙台藩伊達氏家臣・片倉重長(安西慎太郎)と、隻眼の仙台藩藩主・伊達政宗(辻本祐樹)の視点から描く。

冒頭はキャストが手書き名前のゼッケンを付けた体操服で登場して、ペンライトを使用する際の注意事項や楽しみ方を伝授してくれる。履いているジャージの丈にも個性が現れているので、気になるキャストの姿に注目だ。

お祭り騒ぎを予感させるオープニングから一変して、話は徳川の家紋「三つ葉葵」のセットが壮大に並ぶ駿河城で始まる。徳川家康(滝口幸広)が、本多忠勝(原田優一)、真田信之(内藤大希)、小松姫(井深克彦)と共に木村重成(杉江大志)を責め立てる。豊臣側が再建した京都方広寺大仏殿の鐘銘に、徳川家康が難くせを付けたと言われる、有名な「鐘銘事件(しょうめいじけん)」のやり取りだ。

そこへ割って入ってきたのが、片倉重長と伊達政宗。政宗と家康は表向き笑顔を交わしているが、その下では互いの真意を探り合っている。家康は「大阪城へ行き、淀殿を説得するように」と政宗に命じるのだった。

その場に半蔵(二瓶拓也)や天海(加藤啓)も加わり、役者たちの自由度の高さに年末シリーズの様相が増してくる。さらにキャスト全員が役の衣裳で登場して、安室奈美恵の「CHACE THE CHANCE」を歌い踊り出す。

このシリーズは、時流を掴むキャッチーさと、時代劇特有の重厚感の混ざり具合が絶妙だ。観客は不思議な高揚感に後押しされて、物語に惹き込まれていく。

真意を見せない政宗に苛立ち、主君として敬うことをしない重長。そんな息子のことを、政宗に長年付き従ってきた片倉小十郎景綱(兼崎健太郎)は案じていた。だが政宗は重長に「真田幸村のもとへ潜入せよ」と命じる。政宗が天下を狙っているのだと知り、重長は目の色を変えて大喜びで駆けていく。その後、政宗は従兄弟である伊達成実(木ノ本嶺浩)に、重長のお目付け役を命じ、追って行くように指示するのだった。

政宗を演じる辻本は、爽やかな笑顔で飄々と振る舞ってみせる軽快さと、その奥に隠した熱さや過去を繊細な演技で見せる。政宗が多面性を持つ人物であることで、物語が一層深まっている。重長役の安西は、一直線に突き進みつつも正解を模索する多感な青年を好演。自然に目で追ってしまうカリスマ性が感じられた。年末シリーズの常連である兼崎と木ノ本は、遊べる場面と芝居をどっしりと伝える場面をよく心得ており、抜群の安定感。

重長が向かった先の真田陣営には、上杉景勝(松村雄基)と直江兼続(蒼木陣)がトレーニング指導にやってきていた。ガチな筋トレのシーンはシュールな面白さがあり、今までの時代劇では見たことのない景勝と兼続の人物像も見どころだ。

静かな佇まいの中にも華を感じさせる真田幸村(佐奈宏紀)。その幸村を慕う十勇士には、霧隠才蔵(碕理人)、猿飛佐助(小沼将太)、望月六郎(小原悠輝)、海野六郎(田中涼星)、筧十蔵(滝川広大)、穴山小助(中村龍介)、三好青海入道(宮下雄也)、三好伊三入道(佐藤貴史)、由利鎌之助(白又敦)といった、2.5次元舞台を中心に活躍してきた若手俳優と、経験豊富なキャリアを持つ俳優が集う。ここでも絶妙な化学反応が起こっており、己の色を持ち合った新鮮な“真田十勇士”カラーが生み出されていた。

一方の豊臣側、淀殿(紫吹淳)と豊臣秀頼(永田崇人)、大野治長(林剛史)らの場面は、語られずとも関係性がしっかり伝わってくる。張り詰めすぎず、それでいて物語を導く強い力にハッとさせられた。

冒頭の「CHACE THE CHANCE」だけでなく、真田昌幸(大山真志)が登場する宴の場面をはじめ、歌とダンスもふんだんに織り込まれている。多くのミュージカルに出演しているキャストの歌声も存分に堪能できる。また、持ち味や身体能力、ツッコミに定評のあるキャストなど、それぞれに見せ場があり、このシリーズで謳われる“時代劇版異種格闘技戦舞台”の言葉に頷くばかりだ。

絢爛豪華かつバラエティ豊かな衣裳、気分を高揚させる音楽、そして圧倒的な殺陣など、スタッフワークも冴えわたっている。大掛かりな舞台装置は明治座ならでは。中央に高低差のあるセットが立ち、それが盆回りによって向きを変えて場面転換していく。暗転を使わず、観客の集中力を途切れさせない。第一部の芝居は30分の休憩を挟むが、最後まで見届けずにはおれない、魅力溢れる物語となっている。

第二部は、韓国で大人気の「プロデュース101」のパロディ風。「プロデュース1615」と題し、出演キャストたちが組んだ、各芸能プロダクション選りすぐりのアイドルユニットが登場する。「マーライオンZ」「真弾青少年団」「優一の國」「MAN WITH A KABUTO」など、個性豊かなアイドルたちが歌い踊る。このシリーズでも座長を務めた三上真史が司会を担当するほか、日替わり審査員も登場する。

さらに休憩時間には、座長プロデュースの幕間折詰弁当や軽食、出店されているお店のチェックなど、明治座特有の空気感も楽しめるだろう。12月31日(日)20:00の回はカウントダウン公演。総勢27人が送る、笑って泣いてのお祭り舞台で2017年を締め括ってみては?


<開幕コメント>

【安西慎太郎】
まずは明治座に辻本さんと共に座長として立たせていただけることを心より感謝しています。とにかくお客様に楽しんでいただける作品を届けられるよう、キャスト、スタッフ一丸となり作品づくりをしてきました。あとはお客様に観ていただくのみ。楽しみにしていてください。

【辻本祐樹】
皆様、年末のお忙しい中お運びくださり誠にありがとうございます。
僕は、2013年から、る・ひまわりさんのこの祭シリーズに出演させていただき、大久保利通、源頼朝、羽柴秀吉、母礼と、その都度素敵な役を頂戴してきました。
そしてこのたび、念願!の明治座さんでの座長公演、しかも独眼竜の異名を持つ伊達政宗役、本当に嬉しく思っています。
お客様の期待に応えられるよう皆で全力で稽古に励みました。楽しく、最後には何か心に残るような作品になっていると思います。どうぞ気楽にお楽しみください。

※辻本祐樹の「辻」は、一点しんにょうが正式表記となります。

ゆく年く・る年冬の陣 師走明治座時代劇祭

【東京公演】2017年12月28日(木)~12月31日(日)明治座
【大阪公演】2018年1月13日(土)梅田芸術劇場メインホール

構成・演出:板垣恭一
脚本:赤澤ムック

出演:
安西慎太郎(W主演) 辻本祐樹(W主演)
佐奈宏紀 永田崇人 杉江大志 小沼将太 碕理人 白又敦
田中涼星 蒼木陣 滝川広大 小原悠輝 佐藤貴史 宮下雄也 井深克彦 中村龍介 二瓶拓也 加藤啓
滝口幸広 林剛史 兼崎健太郎/
内藤大希 木ノ本嶺浩/
大山真志 原田優一
松村雄基/
紫吹淳

「る年祭」オフィシャルサイト