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古川雄大&内川蓮生らが多彩なキャラクターたちの個性を輝かせるミュージカル「黒執事」-Tango on the Campania-。ドラマチックな“豪華客船編”の幕が開く

古川雄大&内川蓮生らが多彩なキャラクターたちの個性を輝かせるミュージカル「黒執事」-Tango on the Campania-。ドラマチックな“豪華客船編”の幕が開く

ミュージカル「黒執事」-Tango on the Campania-が12月31日よりTBS赤坂ACTシアターにて開幕。“生執事”の愛称でファンからも絶大な人気を寄せる本シリーズ。原作でも屈指の人気エピソードである“豪華客船編”がいよいよ描かれるとあって、開幕前から盛り上がりは最高潮だ。果たしてこの壮大なスケールを舞台上でどう再現するのか。つくり手たちの偉大なる挑戦を刮目して見届けよう。

取材・文・撮影 / 横川良明

華やかな処女航海に隠された、死神をもおののく血塗りの惨劇

女王の密命を受け、「死者蘇生」の謎を解明すべく、豪華客船「カンパニア号」に乗り込んだシエル・ファントムハイヴ(内川蓮生)と執事のセバスチャン・ミカエリス(古川雄大)。華やかな出航シーンから一転、恐るべき陰謀と戦慄のドラマが幕を開ける──。

原作ファンも多い作品だけに、すでにストーリーは把握ずみという読者もいるだろうが、中にはプレゼントの箱を開けるような気持ちで開幕を待っている人も多いはず。そのため、詳細なストーリーにはここではいっさい触れない。そのぶん、なぜミュージカル「黒執事」はこれほど多くの観客に愛されるのか。ありあまる魅力を、本作の見どころと合わせてレポートしたい。

原作の『黒執事』といえば、美麗なタッチの絵柄と、時にすっと心臓が凍るようなダークなストーリーが魅力のひとつ。その華やかでゴシックな世界観は、舞台にうってつけと言えるだろう。今回もそのゴージャスな舞台美術と衣裳は、それだけで眼福感がある。ふんわりと裾の広がったドレスがくるくる回る光景は、憧れの舞踏会そのもの。演劇本来の魅力との相性の良さが、本作の根幹を支えている。

さらに、この起伏に富んだストーリーを一層ドラマチックに盛り上げる楽曲陣がたまらない。どの曲も非常にスタンダードな構成でありながら、趣向に富んでいて、自然と耳に残る。幕間の休憩に、終演後に、思わず鼻歌で歌ってしまうこと必至。しかも、セバスチャン役の古川雄大はもちろんのこと、グレル・サトクリフ役の植原卓也、ドルイット子爵役の佐々木喜英など歌えるキャストが揃っているのも高ポイントだ。どのシーンもクライマックスに変えてしまう力強い歌声で、観る者に高揚感をもたらす。

そして、アンサンブルを使った絢爛たるステージングも本シリーズの特色だ。特に今回は20人ものアンサンブルが、それぞれの場面に彩りを加える。あるシーンでは中世貴族の麗しさを、あるシーンでは迫りくる不気味な恐怖を、身体ひとつで表現する。正確な技術に裏打ちされたダンスシーンは圧巻のひと言だ。この20人なくしてミュージカル「黒執事」はなし得ないと断言したくなるほど、八面六臂の活躍を見せる。映像ならまだしも、舞台でこの迫力をどう再現するのだろうと訝しむようなスペクタクルなシーンの多い本作だが、それを可能に変えたのは、間違いなくこのアンサンブルによる演出だ。そのよく統率されたしなやかな動きは、観ているだけで満ち足りた想いが湧いてくることだろう。

全シーンが見せ場。心のマルチアングルですべての演技をお見逃しなく

ここでふと改めて“演劇”の魅力とは何かという根源的な問いについて考えてみたい。そのひとつに“映像”と違ってカット割りがない、というのは万人が頷くところだろう。プロセニアムアーチの内側なら、どこを切り取るのも観客ひとりひとりの自由。だから何度観ても新鮮な発見があるし、自分で物語を編集できる面白さがある。

このミュージカル「黒執事」-Tango on the Campania-を観ながら、改めてそんなことを考えた。と言うのも、舞台上に立つキャラクターが、みな誰もがイキイキと呼吸をしているのだ。もともと『黒執事』に登場するのは、強烈な個性のキャラクターばかり。ドルイット子爵はある意味変態だし、グレル・サトクリフなんて出てくるなり一気に主役の座を奪うような存在感だ。ロナルド・ノックス(味方良介)のイマドキチャラ男キャラは痛快だし、フレッド・アバーライン(髙木俊)とシャープ・ハンクス(寺山武志)の丁々発止のやりとりなんて、このまま漫才コンテストに出場させてあげたいくらい。

そんな名物キャラクターたちが、セリフがない間も、舞台の隅々で喋り、動き、歌い、踊っている。しかも、その一挙手一投足が、大袈裟ではなくちょっとした指先の表情まで、そのまんまのキャラクターでいてくれるのだから、何だか感動さえ覚えてしまう。これぞ、2.5次元の妙だろう。コマとコマの間にこぼれ落ちた微妙な仕草から、ムービーカメラでは拾いきれない微妙なやりとりまで舞台に乗せてくれるのだから、心が躍らないわけがない。

その最たる例が、やはりセバスチャン・ミカエリスだ。ドルイット子爵とのダンスシーンでは、ちょっとファニーな振付をセバスチャンらしく完全真顔で披露。そのギャップ感が微笑ましくて仕方ない。

バトルシーンでも、つねにシエル第一。敵と敵の間を俊敏に切り抜け、シエルを守ったかと思いきや、執事らしくご主人様の衣類の乱れを整えることも忘れない。そんなうっかりすると見落としてしまうような細かいやりとりを至る場面に散りばめてくれているので、ついつい目が離せなくなってしまう。

その鮮やかなハイキックは、舞台に咲く大輪の花。しかも、あるシーンではスローでハイキックをするという見た目以上に至難な技を披露してくれる。舞台俳優の身体能力の高さを堪能できる、さり気ない見せ場だ。本作で3度目となるセバスチャン役だが、古川雄大は完全に自分の手中に収めた感がある。

もちろんシエルも負けてはいない。特に今回は、エリザベス・ミッドフォード(岡崎百々子)が登場することで、日頃の生意気でワガママな“クソガキ”だけではない、少年から男に移ろうような頼もしい一面を見せ、観客をドキリとさせる。様々な危機的状況のなかで見せるシエルの男らしさに胸の高鳴りが止まらない。内川の汚れを知らないイノセンスはもちろん、岡崎もこれが初ミュージカルとは思えない堂々とした演技で魅力的。2人の淡い小さな恋のメロディは、スプラッタなシーンの多い本作に爽やかな風を吹き込んだ。

本作は、これまで謎に包まれていたあるキャラクターの真実が明らかになるなど、シリーズにおいても重要な位置付けとなる作品。また、完璧で万能な執事・セバスチャンが絶体絶命の危機に陥るなど、ストーリーも一層波乱に満ちている。まさに、本作を観ずして“生執事”を語るなかれといった仕上がりだ。ソールドアウトのステージも多いが、まだ入手できる地域の方は急いでチケットを確保したい。そして残念ながら未入手の方も、当日券戦争に参戦する価値は十分。

ミュージカル「黒執事」-Tango on the Campania-は、2017年12月31日から2018年1月14日までTBS赤坂ACTシアターにて上演。その後、豪華客船「カンパニア号」は兵庫、愛知、石川、福岡を巡る。2月12日の大千穐楽公演はライブビューイング、LIVE配信が決定。この出航の汽笛を決して聞き逃してはならない。

ミュージカル『「黒執事」-Tango on the Campania-』

【東京公演】2017年12月31日(日)~2018年1月14日(日)TBS赤坂ACTシアター
【兵庫公演】2018年1月19日(金)~1月22日(月)神戸国際会館こくさいホール
【愛知公演】2018年1月26日(金)~1月28日(日)江南市民文化会館
【石川公演】2018年2月3日(土)・2月4日(日)本多の森ホール
【福岡公演】2018年2月10日(土)~2月12日(月・休)久留米シティプラザ ザ・グランドホール

原作:枢やな(掲載 月刊「Gファンタジー」スクウェア・エニックス刊)
脚本:Two hats Ltd.
演出:児玉明子

出演:
古川雄大 内川蓮生
植原卓也 味方良介 原嶋元久 岡崎百々子 髙木俊 寺山武志
内海啓貴 秋園美緒 那須幸蔵 河合龍之介/和泉宗兵/佐々木喜英 ほか

オフィシャルサイトhttp://www.namashitsuji.jp

『ミュージカル「黒執事」-Tango on the Campania-』大千穐楽公演、ライブビューイング&LIVE配信

〈ライブビューイング〉
【日時】2018年2月12日(月・休)12:00開演
【会場】全国各地の映画館 ※開場時間は映画館によって異なります。
【チケット料金】3,600円(税込・全席指定)

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〈LIVE配信〉
【対象公演】2018年2月12日(月・休)12:00開演
【配信時間】2018年2月12日(月・休)11:30~(予定)
【予約販売期間】2017年12月18日(月)10:00~2018年2月12日(月・休)13:00
【ディレイ配信視聴期間】2月14日(水)18:00~2月17日(土)23:59
【配信形式】LIVE配信+ディレイ配信
【視聴デバイス】PC・スマートフォン(iOS/Android対応)
【販売価格】3,600円(税込)

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©2017 枢やな/ミュージカル「黒執事」プロジェクト