Interview

“3D CGでガシガシ動きまくるマジンガーZ”をつくる楽しさ、そして難しさ。『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』メカデザインの舞台裏

“3D CGでガシガシ動きまくるマジンガーZ”をつくる楽しさ、そして難しさ。『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』メカデザインの舞台裏

TVアニメが放送されてから46年もの月日が流れた今も、ロボットアニメの歴史の中でも特別な存在であり続けるマジンガーZ。そのマジンガーZが、CG技術を駆使した新作映画『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』で現代に蘇る。“スーパーロボット”の代名詞ともいえるマジンガーZが最新作ではいったいどのようなデザインに生まれ変わったのか? どんな映像で表現されるのか? 本作でメカニックデザインを手がけた柳瀬敬之への取材から、デザインだけではない、昨今のメカニックデザイナーの多岐に渡る仕事の実像が見えてきた。

文 / 加藤和弘(クリエンタ) 構成 / 柳 雄大


「人間が巨大ロボットに乗って操縦する」というロマン

『マジンガーZ』は、1972年の10月より週刊少年ジャンプにて漫画連載が、同年12月よりTVアニメ放送がスタート。超エネルギー・光子力を動力にして動く巨大ロボット=マジンガーZを操る主人公・兜甲児が人類の支配を目論む悪の科学者Dr.ヘルの野望を打ち砕くという物語である。当初より少年たちの心を鷲づかみにして瞬く間に人気作品となったが、その魅力はやはり人間が巨大ロボットに乗って操縦するというロマンにあるだろう。ましてや、そのロボットは自らよりも巨大な機械獣に立ち向かい、ロケットパンチやブレストファイヤーといった迫力ある攻撃方法で倒してしまうのだ。事実、この『マジンガーZ』はその後のロボットアニメや映画に大きな影響を及ぼした。

『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』は、『マジンガーZ』の物語に連なる新作劇場アニメ作品である。TVアニメでDr.ヘルの人類支配という野望を阻止した甲児たち。多くの犠牲を払ったが、ようやく平和を手に入れ、人類は平和を謳歌していた。そんなある日、富士山の地中から巨大遺跡が発掘される。その遺跡は人類の科学を遙かに凌駕していた。時を同じくして、世界中の光子力研究所がかつて滅ぼしたはずの機械獣に襲撃されるという事件が起こる。その襲撃事件の首謀者はなんと、かつて倒したはずのDr.ヘルだった。Dr.ヘルは古代遺跡の力に目を付け、新たな恐怖を人類にもたらそうとするのだった。

マジンガーZ

本作でメカニックデザインを手がけたのは、アニメ『攻殻機動隊 ARISE』『ファイアボール チャーミング』やゲーム『スーパーロボット大戦』シリーズなどで知られ、“スーパーロボット”の対極的な“リアルロボット”に定評がある柳瀬敬之。自身でCGモデルを作ることで生まれる説得力のあるデザインに加え、可動域を考えられたパーツ分割は、映像になった際の魅力はもちろんだが、玩具やフィギュアなどの立体物になった時にも真価を発揮する。今後も活躍が期待されるメカニックデザイナーだ。

超有名作品ならではのデザインの難しさと、CGによる“アニメ的”表現

柳瀬は本作においてどのようなメカニックデザインを心がけたのか? そこにはやはり『マジンガーZ』というあまりにも有名な作品ゆえの産みの苦しみもあったようだが、本人なりの解釈も随所に盛り込んでおり、それがさまざまなデザインに昇華されていた。

柳瀬敬之「過去にはこれまで色々なマジンガーZがデザインされているので、それとは違ったものを提示しないといけないという部分は、すごいプレッシャーにはなりましたね。自分が得意なリアル系のデザインも当初は描いてみましたが、そういった方向性のデザインもすでに世に出ていたということもあり……。かなりの数のデザインを描いて、現在の最終形にたどり着いています。TVシリーズの最初で、兜甲児が学ランを着ていたから学ランっぽいイメージがあってもいいかなと思い、マジンガーの首の辺りに詰襟のようなパーツを付けたデザイン案もありましたね。色々なコンセプトを考えさせてもらって、ダイナミック企画さんや東映さんからの意見、さらに本作の志水淳児監督の意見も加わることで最終的な形になっていったという感じです」

また本作のマジンガーZは当初より3D CGで描かれることが決まっており、CGでどのような表現ができるかが鍵を握っていた。これには東映アニメーションの技術はもちろん、本作でCGを担当したオレンジ(※1)の技術力があってこそ、CG表現でマジンガーZらしいアクションを再現できたという。

※1 オレンジ
アニメに特化したCGスタジオ。CGを担当した作品は『コードギアス 亡国のアキト』や『攻殻機動隊ARISE』のほか多数で、3D CGと作画を見事に融合させた映像で知られる。2017年には初の元請け作品として『宝石の国』を制作したことでも話題に。

柳瀬「デザインが固まってからも(自身のデザインでは)線がかなり多かったので、線を少なくしてほしいというリクエストはいただきました。当初はもしかしたらリアル系の表現になるかも……と思って、色んな所が動くようにパネルラインというかパーツ分割を入れていて、元のデザインでは腹筋がもっとシックスパックみたいにバキバキに割れていたんですが(笑) 結果的にはCGでもガンガンアニメっぽく表現することが決まったので、それならよりアニメっぽく見えるように線を減らしましょうということになったんです。パーツの分割線などを目立たなくすることで、ロング(引き)のカットで見たときに、昔のマジンガーZと大きく印象が変わらないバランスになっています」

柳瀬「しかし単純な線でぐいぐいダイナミックに動かすと、劇場のような大画面の場合、どうしても違和感が出てしまうだろうなと思ってはいたんです。なのでパーツ分割は今風というかCGの表現に合わせて、例えば腕を動かした際に身体にめり込んだりしないように、可動ありきのデザインというのを心がけました。

結果的に、CGを使いながらセルっぽいアニメとして見せる表現としては相当高いクオリティになっていると思いますよ。オレンジさんのロボットアクションの上手さは素晴らしいです。東映アニメーションさんがこれまで『プリキュア』シリーズで培ってきた技術とうまく合わさって素晴らしい表現になっているんじゃないかと。ちなみにボスボロットは当初作画になるんじゃないかと言っていたんですが、ほとんどCGで表現しちゃいましたからね。モデルを変形させたりしながら、うまく表現していますよね。エフェクトもほとんどCGを使っていて、もちろん作画のエフェクトもあるんですが、あれだけ動くと、もうそこの境目はわからないです(笑)」

ボスボロット

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