ハンサムクリエイター・中道慶謙が『Last Standard』に仕掛けた野望  vol. 2

Interview

『Last Standard』に隠された、ゲームと世界を変えるサイコダイブシステム

『Last Standard』に隠された、ゲームと世界を変えるサイコダイブシステム

「ゲームというものが次のステージに進化するとしたら、僕らの“サイコダイブシステム”によって進化すると思っています」

そう語るのは新進気鋭のゲームクリエイター、中道慶謙氏。ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)のインディーゲームレーベル“UNTIES”(アンティーズ)からリリースが予定されている『Last Standard』で注目を集めている彼は、弱冠22歳にして株式会社I From JapanのCEOという顔を持つ。エンタメステーションではそんな中道氏へのインタビューを全3回に渡って掲載する。1回目の記事に続く本稿では、ゲームクリエイターの道を歩み始めた中道氏の会社設立の意外な経緯や、『Last Standard』というゲームの本質、そして『Last Standard』のコアにして今後のゲームを革新させる存在、“サイコダイブシステム”の正体に迫る。

インタビュー取材・文 / 高城暁・大工廻朝薫(SPB15)


会社名は“I From Japan”

独学でゲーム開発の世界に飛び込み、『Last Standard』を作り始めた中道氏は、やがて大学在学中に株式会社I From Japanを設立することとなる。その経緯は意外なものだった。

株式会社I From Japan設立の経緯を教えてください。

中道 東京ゲームショウに出展するためですね。タイプBのブースで出展したんですが、実はそれが企業しか出展できないブースだと知らないまま準備を進めていたんです。それである日「謄本を出して」と言われて、「ちょっと待ってください、9月1日までに作ります!」と(笑)。 

もっと壮大な野望があるのかと思いましたが、なんとも予想外の理由ですね……! ある意味、ゲームショウのシステムに対して物申すかのような、会社の設立理由です。

中道 まあ、ゲームショウに出られるなら会社ぐらい作りますよ(笑)。 

それがクリエイターというものなんですね……。スタッフは何人在籍されていますか?

中道 6人ですね。全員同い年で、中学や高専の同級生です。全員専門が異なっていて、僕が脳神経担当。もうひとり言語学関係の担当がいて、このふたりがメインとなってサイコダイブシステムを作っています。 

全員が同級生というのは楽しそうでいいですね! スタッフが集まれるような、会社のオフィスも用意されているのでしょうか?

中道 親戚が持ってる築30年ぐらいのアパートがあって、そこの一室を使わせてもらっています。砂壁の普通のアパートです(笑)。アパートができたときからそこに住んでいた人がたまたま抜けて、改装するにもお金がかかるしどうしようか、というタイミングで借りることになりました。

ブログで公開されているオフィス(写真・上)はごく普通のアパートですね。さまざまな専門書や高額な機材、貴重なデータがここに詰め込まれています。セキュリティ面が若干不安になりますが……。

中道 一応、ドアの外にロックのかかるキーボックスを用意して管理しています。一回来てください、びっくりしますんで。 

今後スタッフの増員など、開発規模を拡大していく予定はありますか?

中道 今の『Last Standard』を作り終えたら、サイコダイブシステムを作っている僕と言語学担当の子、ふたりだけが残ると思います。規模を広げる予定はありますが、『Last Standard』の冠でいろいろな人にゲームを作ってもらいたい、という考えかたですね。 

会社として中心になるサイコダイブシステムに関わるのがそのふたりで、『Last Standard』を作るスタッフは中にいてもいいし、外部でも問題ない、というイメージでしょうか?

中道 そうですね。『Last Standard』という概念のもとで何かを作れる人であれば、システムは渡すからあとは好きにやってくれ、という感じですね。

「まだ全然このゲームできてへんよな?」という指摘がUNTIESを選んだきっかけ

インディーゲームのディベロッパーにとって、パブリッシャーはゲームを世に送り出すためのパートナーとなる存在。パブリッシャーと組むことでプロモーション面などさまざまな恩恵を受けられる一方、双方の見据えるビジョンに食い違いがあると、目指す未来にたどり着くことは難しくなる。そんな大事なパブリッシャー選びにおいて中道氏はなぜUNTIESを選択し、『Last Standard』を任せる決断を下すに至ったか、その理由を訪ねた。 

UNTIESと手を結ぶまでの経緯についてお伺いします。ここに至るまでに、他からのお誘いもあったのではないでしょうか?

中道 大きいところからも声をかけていただいたり、ビジネスの話まで進んだところもあったんですが、UNTIESの伊藤雅哉(※)さんとお話をしたら、すごくフィーリングが合ったんです。 

※:SMEのインディーゲームレーベル“UNTIES”の中心メンバーのひとり。関西出身。翻訳会社で海外ゲームのローカライズを担当し、その後Q-Gamesにて『PixelJunk』や『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』に携わる。インディーゲームイベント“BitSummit”に主催側として参加するなど、インディーゲームとの関わりが深い。現在はUNTIESにてゲームパブリッシングに携わるほか、海外ゲームの日本語化とパブリッシャー支援を行う”架け橋ゲームズ”のPRマネージャーも務めている。

UNTIESと組んだ理由はフィーリングにあったと?

中道 『Last Standard』を褒めてくれる声が多かった中で、伊藤さんだけが「まだ全然このゲームできてへんよな?」というところから入って来たんです。 

ゲームとして未完成である点を見抜いたんですね。

中道 実際、そのときはコンセプト出展みたいなもので、サイコダイブシステムのワンアイディアだけを見てほしかったんです。まだ商品じゃない段階ですし、これからいろいろ面白いことができる、と考えながらやっていました。そこを伊藤さんに「根幹のところで目の付けどころがおもしろい」と評価していただいたんです。出会うタイミングが違っていれば恩師になっていたかもしれない、最大の理解者ですね。

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