LIVE SHUTTLE  vol. 230

Report

HEATWAVE バンドの歴史とオーディエンスの想いが交錯するライブ空間。究極のバンドサウンドが生むR&Rの魔法

HEATWAVE バンドの歴史とオーディエンスの想いが交錯するライブ空間。究極のバンドサウンドが生むR&Rの魔法

HEATWAVE初のセルフカヴァーアルバム『Your Songs』を携えて行われたツアーが、2017年12月22日、shibuya duo MUSIC EXCHANGEでファイナルを迎えた。アルバムタイトルどおり、オーディエンスひとりひとりに寄り添い励ましてきた珠玉の曲が並ぶセットリスト。デビュー曲から最新曲まで一本の道に貫かれたHEATWAVEの歴史が、今現在の究極のバンドサウンドとして鮮やかに響き渡った。4人の化学反応によって生まれたとてつもないグルーヴが、どこまでも広がる宇宙に連れて行ってくれた一夜の様子を。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 三浦麻旅子

みんなの心の中で燃える火を、大事にしてください!

今回のツアーのテーマは、HEATWAVE初のセルフカヴァーアルバム『Your Songs』だ。愛知、福岡、京都を周って、この日、東京でファイナルを迎える。

『Your Songs』は2枚組で、〈ディスク1〉はリスナーを奮い立たせるように、対して〈ディスク2〉はリスナーに穏やかな気持ちになってもらうように作ったと、山口洋はインタビューで語っていた。山口は、セルフカヴァーをとても楽しんでいた。かつて発表されたテイクの中には、バンドの置かれた不遇な状況に左右されたものもあった。それらを現在のメンバーで録り直すことができて、納得のいくレコーディングになったと言う。

だが、僕はそのことより、「人生で初めて自分の表現欲で作ったのではなく、聴く人のために作ったアルバムだね」という山口の言葉に注目した。山口はこれまでずっと、いい意味で“自分のために”アルバムを作ってきた。表面的なブームに流されず、頑固なまでに自分の信じた音楽をまっとうしてきた。だからこそリスナーの心に残る名曲を、数多く世に送り出すことができた。その山口が初めて“聴く人のために”作ったと言うのだ。だとすれば山口は、今回のツアーで、オーディエンスのために歌うことになるのだろうか。

渡辺圭一(bass)、細海魚(keyboard)、池畑潤二(drums)からやや遅れてステージに登場した山口が、ゆっくり会場を見渡してから「新しい風」のイントロをアコースティックギターで弾き始める。『Your Songs』の〈ディスク1〉の1曲目に収められている曲だ。山口のボーカルは自信に満ち溢れ、「新しい風が渋谷のほうから吹いてくる」と歌詞を替えて歌ってみせると、客席から大きな歓声が上がる。 山口のボーカルを背後で支える池畑のドラムが素晴らしい。キック、スネア、タムタムという最小限のドラムセットをフルに使って、山口と同じレベルで歌っている。特にハイハット(注:ドラマーの脇にある開閉するシンバル)のデリケートなタッチがいい。細海のスリリングなオルガンソロのあと、山口はコール&レスポンスをオーディエンスに仕掛け、「元気がないな」と叱咤する。まだ1曲目なのに、いきなりハイテンションの幕開けだ。

愛用のエレキギター“グレッチ”に持ち替えて、2曲目は「NO FEAR」。これも『Your Songs』の〈ディスク1〉からの曲だ。アレンジはアルバムと同じく、抑えたドラムからセッション風にスタートする。歌い始める前に山口が「みんな、バカになれ~! ストレスは全部、(細海)サカナが受け取るから。サカナはこう見えて強い!!」と言うと、笑いが起こる。細海魚は山口の右腕として、レコーディングでもライブでも大活躍。その絶対的な信頼感からくる乱暴なMCに、オーディエンスもサカナも思わず笑顔になる。

続けて山口は「この曲の有名なリフを、静かに弾いても盛り上がってくれるみんなが、大好きだよ」と叫んで、オーディエンスに対しても信頼感を露わにする。山口にしては珍しい、手放しの愛情表現だ。あるいは、不器用な山口の精一杯の感謝の言葉だ。もしかすると、これが山口の言う「聴く人のために作った」という姿勢の表われなのかもしれない。ツアーファイナルらしく、明るく開放的なオープニングとなった。

「今日は新旧取り混ぜてやるけど、大丈夫? 次はデビューした翌1991年に書いた歌。湾岸戦争のまっただ中の頃、小高い愛宕神社から、街を眺めながら書いた。それぞれの心の中にある灯りを大事にしてください」と言って、やはり〈ディスク1〉から「灯り」。新作ではエレキでイントロを弾いていたが、この日はアコギで奏でる。それでもこの歌の魅力である、強さと広がりがしっかりと表現されていて、終わると会場からはひときわ大きな拍手が巻き起こった。

「次は数少ないラブソングをやるね。あるファンが、この曲を結婚式で流したって聞いて『Your Songs』に入れた。それを聞かなきゃボツだったんだけどね。バンドでやるのは23年ぶりです」と少し照れてみせる。〈ディスク2〉に入っている「NORTHERN LIGHTS」には、“恋”や“口づけ”など、HEATWAVEではあまり使われない言葉が出てくる。山口は、この歌に想いを託したファンのために『Your Songs』に収録した。作品は作者の手を離れた瞬間に、受け手のものになるという“表現の約束”を、山口はフェアに守る。それにしても“ボツ”とまで言わなくてもいいとは思うのだが、それが山口の優しさだったりする。この日はこのあとも、こうした“不器用なシーン”が次々に飛び出した。

中盤には最新オリジナルアルバム『CARPE DIEM』から「BLIND PILOT」を歌う。もちろんこの歌は『Your Songs』には入っていないが、『Your Songs』の曲とまったく違和感がない。それはどちらも“最新型のHEATWAVE”だからで、このバンドが変わらない本質で貫かれていることを図らずも証明していたのが面白かった。

「『Your Songs』の〈ディスク2〉は、聴いていると4曲目で絶対寝るよ(笑)。それじゃあ〈ディスク2〉の1曲目をやるね」と「ハピネス」が始まる。それまでは〈ディスク1〉を中心にライブが進んできたが、ここでギアチェンジというわけだ。奮い立たせる歌もいいが、しみじみと聴くHEATWAVEもまた格別だ。実際、山口の言うように、ここからの3曲は安らかな気持ちになり、目を閉じて聴きたくなった。

1995年に佐野元春がプロデュースした「オリオンへの道」から、終盤へ突入する。この曲は『CARPE DIEM』でセルフカヴァーされていた。もしかしたらこの再録が、『Your Songs』制作の大きなヒントになっているのかもしれない。「オリオンへの道」は「汗を流し 胸を焦がし 何度でも 僕はやりなおす」と歌う。山口はこの歌詞のまま生き、この歌詞のまま『Your Songs』をレコーディングしたのだろう。「人間のいちばんいいところは、失敗しても何度でもやり直せること」という山口のMCが心に沁みる。

「俺はヤンキーとパンクを合わせた“パンキー”なガキだった。38年前のある日、『バンドをやれ』っていう声が聞こえた」。当時、山口に多大な影響を与えていたのは、ジョー・ストラマー(注:ザ・クラッシュのボーカル)だった。「フジロックでジョーと同じステージに立ったとき、彼は言った。『いいか、お前の心の中で燃えてる火を、絶対に絶やすんじゃないぞ』。なんと今日は、そのジョーの命日。もう15年が経った」とHEATWAVEを始めた少年時代のことを、山口は熱く語る。

「その頃、チケット代500円を払って、すごいバンドを観た。ザ・ルースターズ!! そのバンドにいた池畑潤二のドラムを、みんな、聴きたいだろ!?」と叫ぶ。フロアから大歓声が上がるなか、池畑がすさまじい勢いでドラムを叩き始める。キックドラムが、心臓を直撃する。ラストチューンは「STILL BURNING」だ。燃え上がるような演奏の途中で、山口が怒鳴る。「みんなの心の中で燃える火を、大事にしてください! 伝えたいのは、それだけです。くたばるまでやるよ。応援してください。来てくれてありがとう!」。さらに演奏のボルテージが上がる。この時点で、自分のために歌うのか、それともリスナーのために歌うのかという山口の命題は完全に吹き飛んでしまい、バンドとオーディエンスが平等に交歓するという、最もシンプルかつ美しい光景だけがそこにあった。

アンコールには山口と渡辺が登場。「デビュー曲を2人でやるね」と言って始まった「僕は僕のうたを歌おう」は、それまでとはまったく雰囲気が違っていて、僕は面食らった。ライブの本編では、キャリアを充分に積んだバンドマンたちの演奏を楽しませてもらったのだが、今、目の前にいる2人はまるで少年のように初々しい。ステージ中央で寄り添うように歌い、演奏する姿が、僕には「バンドをやれ」という天の声を聞いた頃の山口と渡辺に重なってみえた。ベースのみをバックにソロを弾く山口。ギターがフィードバックを起こす。ロックの原初の姿がそこにあった。

池畑と細海を招き入れた山口が「今日はありがとう。このツアーはゲストを入れるっていうアイデアもあったけど、みんなで話し合って、4人でやり切ろうっていうことになった。いいバンドだよね」と言って、「明日のために靴を磨こう」と「満月の夕」を歌う。さらにダブルアンコールでは「BRAND NEW DAY / WAY」を歌って、ライブは終わった。

鮮やかな場面がいくつもあるライブだった。HEATWAVEの歴史と、オーディエンスのものとなった数々の歌=『Your Songs』が彩る、心地よいファイナルだった。山口はHEATWAVEという名の、“ミュージシャンとその歌を必要とする人々”のために全霊を込めて歌い切ったのだった。

HEATWAVE new album tour 2017 “Your Songs” 2017.12.22@shibuya duo MUSIC EXCHANGE SET LIST

M01. 新しい風
M02. NO FEAR
M03. STREET WISE

M04. 灯り
M05. NORTHERN LIGHTS
M06. TOKYO CITY HIERARCHY
M07. MR.SONGWRITER
M08. BLIND PILOT
M09. ハピネス
M10. 遠い声
M11. SWEET REVOLUTION (NO.2017)
M12. オリオンへの道
M13. STILL BURNING

EN01. 僕は僕のうたを歌おう
EN02. 明日のために靴を磨こう
EN03. 満月の夕
EN04. BRAND NEW DAY / WAY

HEATWAVEセルフカヴァーアルバム『Your Songs』リリース記念 山口洋トークショー&サイン会

2018年1月17日(水)HMV&BOOKS SHIBUYA

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HEATWAVE

山口洋(vocal、guitar)、渡辺圭一(bass)、細海魚(keyboard)、池畑潤二(drums)。1979年、福岡にて山口洋を中心に結成。以来アルバム14枚、ミニアルバム、ベスト盤、BOXセット3タイトル、ライヴ盤5タイトルを発表。1995年発表のアルバム『1995』には、阪神・淡路大震災後に作られた「満月の夕」が収録され、多くのミュージシャン、幅広い世代に歌い継がれている。2003年より、現在のメンバーで新生HEATWAVEの活動を開始。2017年5月には、14枚目のオリジナルアルバム『CARPE DIEM』をリリース。2017年12月26日にはHEATWAVEの全楽曲から23曲を厳選した初の2枚組セルフカヴァーアルバム『Your Songs』を発売したばかり。

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