黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 11

Interview

ゲームの神様・遠藤雅伸氏(中)「ゲームから僕は逃げない」教育の道に進んだ経緯とは?

ゲームの神様・遠藤雅伸氏(中)「ゲームから僕は逃げない」教育の道に進んだ経緯とは?

アタマで考えた面白いと感覚的な面白いは、その質が違う

それは、ちなみになんでしょうか?

遠藤 やらなければ分からないこととか、そこに流れるコンセプトだったりとか、(コンセプトの)立て方とか、思想の問題です。

ああ~。

遠藤 彼らは「じゃあゲーム作ってみようか」って言ったときに「何が必要ですか?」って聞いてきます。で、「そうだね、プログラム書けたほうがいいかな?」って言えば「プログラムは何でやれば?」となって、「簡単なのでいいや、Javaでいいかな」って答えると「分かりました。来週までにJava覚えてきます」となります。これで、彼らは覚えてくるんで。

問題はアタマで面白いと思えるゲームを作っちゃうことです。「それ面白いのかな? 俺は面白い感じがしないんだけど」って言ったら、「面白いですよ。こうなってるし、ちゃんとトレードはあるし、ハイリスクハイリターンだし。すごくバランスが取れてて、いいゲームだと思います」って言うんです。それで、「じゃあスマンけど、もう1回やってみて」って言って。もう一度遊ばせると、やっぱり「わあ、面白いな」って言うんで、またやらせるんです。

「え、ホントに面白い? もう1回やってみて」→「まだやるんですか?」→「なんで嫌なの? 面白いんじゃないの?」→「いや、う~ん……」、こうやっているうちに思わず徹夜しちゃうゲームってアタマで考えた面白さじゃないってことが分かってくるんです。アタマで考えたものが面白いわけじゃない。ソコには乖離があるっていうことを彼らは知るわけですね。アタマで考えた「面白い」と感覚的な「面白い」は実は面白さの質は違う。教えなきゃいけないのはソコだっていう。

いやでもそれって、すごい難しいポイントですよね。

遠藤 難しいです。なので、それをどうやって教えるかっていうことをいろいろ考えてきました。そのあと、2011年に東日本大震災があって、東北地方のために何かできないかなっていうことで宮城大学でゲームデザインを教えることになったんですが、その時にゲームデザインっていうのはこういう風に教えればいいんじゃないかなっていう実験をかなりしまして。メソッドがそれなりに確立できたので、こちらの大学で本格的に教えるかということになったんです。

それで、イノケンが亡くなったときに、仕事をしながらでも大学の先生とかできないのかっていう話を岩谷さんにして。1人月分は無理でも半人月分ぐらいなら空きがあるしって。だったら年間2科目ぐらいやってみるかっていうことで始めて、今でも僕は2科目しか教えてないですけども、両方とも芸術学部の全授業の中でベスト5に入ってます。今年(2017年)の前期も1位と3位でしたね。

授業の構成自体がゲームデザインそのもの

それはすごい。何が違うんでしょうかね。やっぱり遠藤さんの熱量でしょうか。

遠藤 授業の構成自体がゲームデザインそのものなんですよ。まず、やらせたいことがある。それをやらせるためのモチベーションを喚起するにはどうすればいいか、なんですよ。で、本人たちの学力、成果がスコアじゃないですか。だったら、それをスコアと実感できるような仕組みみたいなものを作ればいい。ゲームとまったく同じです。最近デザインした授業では自分が何もやらないでも生徒たちが勝手にどんどん勉強して、勝手に上手くなるっていう仕組みを作って、その授業は断トツのトップになりました。

なるほど、授業自体がもうゲーム作りになっていると。

遠藤 授業もカリキュラム作成もゲームデザインそのものです。あとは博士号の取得ですね。大学の教授だったら博士号を取るべきだと。5年間かかるんですけど、今はD2なんで留年さえしなければ再来年の3月には取れると思います。

再来年ですか、すごいなあ。そこまで遠藤さんのモチベーションを喚起させたものはなんだったんでしょう。やっぱり飯野さんが若くしてお亡くなりになったことによって、ご自身のこの先を考えられたことが大きかったんでしょうか。

ゲームを作っていることから逃げないとは

遠藤 そうですね。だから、生きてる間に僕ができる限りの最大の努力をしておきたい。それが日本のゲームのためであってほしいなと。もうゲームから僕は逃げないんで。

逃げないとはどういう意味でしょうか? 逃げてないと思いますけど。

遠藤 そうじゃなくてね。富野由悠季さん(注37)が『ニュータイプ』の創刊10周年かなんかで言われたと思うんですけど、「僕(富野氏)はずっと映画にコンプレックスを持っていて、アニメよりも映画の方が上だから『いつか映画、いつか映画』と思っていた」と。けれども、「この歳になってアニメは素晴らしいと思えるようになった。だから、僕はもうアニメを作っていることから逃げない」と。

注37:『ガンダム』シリーズの生みの親で、『無敵超人ザンボット3』『伝説巨神イデオン』『聖戦士ダンバイン』など数々の伝説的アニメを世に送り出したアニメ監督。

なるほど、そういうニュアンスですね。

遠藤 なんで、僕もゲームから逃げない。日本のゲームってなんなのかっていうことを定義して発信しようと。でも、これが全然ダメで。「まあ、ご自身で言われるのは勝手ですけども、学術的にはなんの意味もないんで」みたいな。

日本のゲームってスゴイですよ、ホントに

そんな風に言われたんですか?

遠藤 アメリカの小賢しいゲームのゲの字も作ったことないような、ロクでもない研究者の若造にね。それなら博士号を取って、上からお前をねじ伏せてやるよって。バカバカしいぐらい研究したので、日本のゲームが進んでるってことはもう分かってます。日本ってスゴイですよ、ホントに。日本のゲームは日本のプレイヤーの価値観が、こういう形に進化させてきたんです。

他の追従を許さないですね。とにかく価値観の多様性みたいなものが、ものすごくあって。『スプラトゥーン』(注38)とか授業でよく取り上げますけど、いい事例ですね。日本人って、「相手の頭を撃ち抜いて自分が有利だとか相手より上にいるってこと」を証明したくないんです。だから、日本人はFPS(ファースト・パーソン・シューティング)とかMOBA(マルチプレイヤー・オンライン・バトルアリーナ)とかが嫌いなんですよ。

注38:水鉄砲のようなオモチャの武器を駆使して、インクを撃ち合いながら塗った広さを競い合う任天堂の対戦アクションゲーム。2017年に発売された続編『スプラトゥーン2』も大人気となっている。

確かに、日本人はそういう人が多い気がします。

遠藤 で、『スプラトゥーン』って、ただ単に撃つものを弾からインクに変えただけじゃないですか。このインクに変えたことに合わせてゲームデザイン、要するに勝利の評価方法とかを変えただけなんですね。なんですけども、これだけで日本人にはなじむ。相手を撃たなくていいんだっていう部分で、心が開放される。敵から逃げ回りながらカベ塗ってたら、それで勝てるって日本人はそういうの大好きじゃないですか。

そうですよね。

遠藤 だから、『スプラトゥーン』では日本人がいるとアメリカ人とか逃げますよね。日本人には勝てないから。勝てないから嫌だ、日本人と戦うとランキングが下がるから嫌だって考え方ですよ。しょせん、その程度です。日本人は勝っても負けてもどうでもいいんです。楽しいですからね。でも、残念ながらアメリカ人はそれができないんです。ただ、フランス人とかドイツ人とかは日本人と同じ楽しみ方ができます。


続きは第3回インタビュー
1月16日(火)公開

ゲームの神様・遠藤雅伸氏(下)日本のゲームの素晴らしさを世界に伝えるために

ゲームの神様・遠藤雅伸氏(下)日本のゲームの素晴らしさを世界に伝えるために

2018.01.16

著者プロフィール:黒川文雄【インタビュー取材】

くろかわ・ふみお
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDEにてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japan(現LINE・NHN PlayArt)にてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。株式会社ジェミニエンタテインメント代表。DMMオンラインサロンにて「オンラインサロン黒川塾」を展開中。
黒川塾主宰。ゲームコンテンツ、映像コンテンツなどプロデュース作多数。

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