黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 11

Interview

ゲームの神様・遠藤雅伸氏(下)日本のゲームの素晴らしさを世界に伝えるために

ゲームの神様・遠藤雅伸氏(下)日本のゲームの素晴らしさを世界に伝えるために

属人性を排除した状態で世の中に発信したい

生き方そのものがエンタテインメントですね。同時に自分が得てきたものを残していきたいっていう気持ちを強く感じます。

遠藤 なんだろうな……そういった教育方法みたいなものを属人性を排除した状態で世の中に発信したいんで。だから、学会とかでこういうやり方をしましょうっていうのを、いろいろな新しい演習方法とかをどんどん作って公開してます。ほかでゲームを教えている人が、それを使って効果を上げてるっていうのもどんどん出てきてるんで。

この先は学位を取られて、いわゆるゲームとはどんなものだっていうのを、より強く訴えていこうと?

遠藤 そうですね。僕が経験的に得たことを「こんなことじゃないのか」って提示しても、博士号がないとたわごとになっちゃうんですけど、学位を取ってからそれを書くと、先生の書いた、博士の書いたものなんで。それってそのまま真実として引用されたりするんです。ブログに書くような内容のことも博士号を持って書くと、その文章を引用していいんですよ。それはそういうひとつのコンセプトであり概念であり、新しい問題提起になるんです。それでないと世界とは戦えない。

技術の無駄使いはすごく大事

世界と戦う意味というか意義というのは、日本のゲームの素晴らしいところを伝えたいってことですよね。

遠藤 日本のゲームの優位性を示したいんですよ。だって面白いもん。FPSなんてクソつまんないじゃないですか! よりリアルな新しいグラフィックの描画ができて、なんでFPSになるんですか? リアルなグラフィックを使うんだったら、『ファイナルファンタジー』みたいなほうがいいんですよ。キレイなお姉ちゃんが出てくるとか、イケメンな男が出てくるとかっていうことのほうが大事で、そっちに(技術を)使えばいいんですよ。

技術の無駄使いみたいなことはやっぱりすごく大事で。たとえば、「ノンリニア破壊」っていう技術がありますよね。「ノンリニア破壊」って建物とかに爆弾なんかを撃ったとき、その力によってどういう風に建物が壊れるかっていう破壊モデルのことで、3Dで作ったものを再構築してプロシージャルにモデリングしていって分解する。要するに、バラバラって崩れていくのをやる技術なんですけど、日本の「ノンリニア破壊」で一番素晴らしいなと思ったのは『メタルギアライジング リベンジェンス』(注42)です。あれって刀でバッと斬ると、切り口がスパっといくじゃないですか。そこにノンリニア破壊を使っているんですよ。

注42:2013年に発売された『メタルギア』シリーズのアクションゲーム。敵の部位や建物などを刀で斬り裂く斬撃アクションが話題を呼んだ。

そこに使っているんですか。

遠藤 技術的にはそうですよね。で、何が楽しいってズバッと斬った感? 斬った感覚を盛り上げるためにその技術を使ってるんですよ。日本刀の独特の斬れ方を実現するために、必要ならそういう技術を使う。横井軍平さん(注43)とかと同じですね。

注43:『ゲーム&ウオッチ』、『ゲームボーイ』、『バーチャルボーイ』などのハード開発に携わったことで知られるクリエイター。すでにある技術を利用することで新しいモノを生み出す「枯れた技術の水平思考」を提唱したことで知られる。

そのとおりですね。

遠藤 それが日本の根本に流れる技術の使い方ですよ。その技術があるから作ろうっていうコンテクスト・ドリブンでやると、ロクでもないものしかできないんです。コンセプトが大事なんです。よく例に出すのは『塊魂』(注44)ですけど、『塊魂』はあのコンセプトだったら、あのグラフィックがちょうどいいんですよ。

あそぶゲーム展 トークセッションにて

あれをフォト・リアリスティックな技術を使って作ればどうなりますか? ネコを巻き込んだときに、そのネコは毛がふさふさしていてギャーって鳴きながら血を流す、そういうゲームを作りたいんですね、アナタ方はって話です。そんなクソゲーいらねえわって。そこが30年遅れてるんですよ、技術で作ろうとしてるヤツらは。

注44:塊を転がしながら、いろいろなモノを巻き込んで大きくしていく異色のアクションゲーム。2004年にナムコから発売され、ユニークなゲームシステムや個性的なグラフィックなどが話題を集めた。

――30年遅れてるっていうか止まっちゃった感じですかね。技術は30年進んだけど、情感が止まっているというか。

「ゲーマーズゲート」って知ってます?

遠藤 止まっちゃったんじゃなくて、そもそもの人間性の部分ですね。「ゲーマーズゲート」って知ってます? いわゆるゲームにおける差別問題です。たとえばMMOとかで一緒に組んでる人の中にリアルな女性が混じっていたとするじゃないですか。そうしたらアメリカでは「なんだ女かよ」って、キックされることがよくあるんです。これが「ゲーマーズゲート」です。そんなことやってる国なんですよ。

日本って女性がもっともゲームをする国だと思うんですけど、それは女性がゲームをする土壌がいっぱいあって、女性がゲームをするっていうことに対して日本人は当たり前だし、それに対してリスペクトを持っているからです。MMOとかで女性が入っていたからって、それでキックするような人は日本にはほとんどいないです。そこで「女となんかとやってられるか」って、いまだに言ってるような国に負けるわけないじゃないですか。

そこは人間性、国民性の違いだから、なかなか埋まらない感じがするんですよね。

遠藤 埋まらなくていいんですよ。僕はドイツ人の方から「あんな若い国はどうせ積み上げたものが何もないんだから、そんなこと言ってもしょうがねえよ」っていう風に言われて納得しましたね。マーケットとしてデカいってだけで偉そうにしてるけど田舎だからって。だから、アメリカ主導で動くのはダメだと。ただ、アメリカでも分かっている人がどんどん増えてきてはいます。

そうですか。変わってきますかね。

遠藤 変わるでしょう。人間は成長するんだから。

う~ん、でもなんか成長してないような感じがするなあ。

遠藤 そう思う部分は僕もあります。なんでドナルド・トランプがアメリカ大統領に当選しちゃうのかなあ、あの国だからだろうなあって。やっぱり銃が捨てられない国なので…しょうがないですね。人が信用できないんですね。

削り切った真髄の部分を面白いと感じるように作れ

これからゲームを作ってみたいという人にアドバイスはありますか? やっぱり「自分でやれ」って感じですか(笑)。

遠藤 そうですね。自分の手を汚して作ることはすごく大事だと。あとコンセプトですね。面白いと思えるコンセプト。そのコンセプトのために、どれだけ切り詰められるか。そのコンセプトをどれだけ際立たせることができるかなんで。

料理にたとえて言うと、美味い刺身を作らなきゃダメなんですよ。それが日本のゲームの真髄ですね。いろいろ調味料を加えて、フランス料理を作るんじゃないんです。フランス料理がマズイって言っているわけじゃないですよ? いろいろなものを入れてバランスを取って絶妙の美味しさを作る。もちろん、それはあります。

素材の良さを活かした何かを作ってほしいという意味でいいんですか?。

遠藤 削りに削った中から出てくる本質的な美味しさというか。面白さも削りに削って、最終的に出たエッセンスがしっかりした状態で作らないとダメなんですね。これってなんかちょっと物足りないよねってモノに何かを足してもダメなんです。「なんかさあ、ちょっと物足りないからタマ撃つようにしない?」とか「HPをとか、つけてみようか」とか、そんなのまったく意味ないんですよ。それ以前のところ、そうなる前のところが面白くなきゃ。だから、削り切った真髄の部分を面白いと感じるように作れ、ですね。

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