黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 11

Interview

ゲームの神様・遠藤雅伸氏(下)日本のゲームの素晴らしさを世界に伝えるために

ゲームの神様・遠藤雅伸氏(下)日本のゲームの素晴らしさを世界に伝えるために

フランス人曰く「日本人はいい意味で狂ってる」

遠藤さん 堀井雄二さん CEDEC2009

ちょっとイヤな質問しますけど。今の日本のパブリッシャーはどう思われますか? いっとき迷走している感があったかなとも思うんですが。

遠藤 今の日本のパブリッシャーはちゃんと分かってますよ。金儲けしたいヤツらが迷走させてただけです。

じゃあ、作り手たちはそんなことはない?

遠藤 そうですね。『パズル&ドラゴン』以降、やっぱりゲーム性だってことに作り手も気がついたんです。そのためには何が必要かってところに今は踏み込んでますね。スクエニとかって海外に負けないだけの技術力を持っていながら、その使い方が女の子の脇の下をいかにキレイに見せるかとかですよ?

アッハハハハ、なるほどなるほど。確かにそうですね。

遠藤 それを称してフランス人は「日本人はいい意味で狂ってる」って。技術の使い方がおかしいって言うんですけど、そのおかしさこそがアートだよねっていう。

そうですね。

遠藤 僕も一時期迷走しかかったんですが、フランス人に救われたんで。フランス人は日本のゲームのことをどう思ってるか調べてみようってことになって、6500人がアンケートに答えてくれたんですよ。そうしたら、日本のゲームは全然遅れてないし、今でも進んでいるっていう。じゃあ、日本のどこがっていうことで調べていくうちに、だんだんそういったことが分かってきたんです。

6500人ってすごいですね。そこまで遠藤さんを動かすのはゲームに対する愛ですか?

遠藤 自分が作ってきたものに対する責任ですよね。

すべては日本のゲームの未来のために

この先もずっと現役ですか。

遠藤 もうそのつもりです。博士号を持ってれば何を書こうと、それはそれで研究なんで。そのためにも博士号をちゃんと取らないと。

なるほど、素晴らしいですね。

遠藤 変でしょう? 「前に行ってるよな」って言う風によく言われますけどもね。ベクトルは違っても、常に日本のゲームをやってる人たちに背中を見せ続けられるように。でも、それって単に自分が遊んでるのと一緒なんで、それもまたエンタテインメントなんですよ。

人生そのものがエンタテインメントというか、空気を吸ったり水を飲んだりするのと同じようになってるんじゃないかなと思います。そのレベルまで昇華したのは遠藤さんぐらいじゃないですかね。

遠藤 誰かが道さえ付ければ後から追いかけてくるヤツが超えますよ。

でも、ちょっと継ぐ人が見えてこないなあ。

遠藤 大丈夫です、出ますよ、いくらでも。野茂がいなければ大谷もいなかったわけで、そういう風に思ってるんです。

作り手であり教師であり、なおかつご自身がエンタテインメントでありカルチャーですからね。ただ、今回お話をうかがって、遠藤さんの見方が少し変わりました。これまでは「作り手」っていう意識でずっといたんで。

遠藤 そこは完全に切り替えてますね。

ですね。今日改めてその部分を実感しました。

遠藤 はっきり研究者の方に軸足は移しています。それは、すべて日本のゲームの為にというコンセプトはそれで揺るがないですね。

今日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。

遠藤先生と同クラスの生徒さんと記念写真

撮影 / 北岡一浩 取材協力 / 仁志睦


取材後記

2000年の前半の春の頃、私と遠藤さんが久し振りに再会したのは、渋谷区恵比寿にある「耳鼻科医院」の待合室だった。当時、私はスクウェア(当時)が創業したデジキューブに在職しており、遠藤さんはモバイル&ゲームスタジオの代表取締役だった。待合室での再会ゆえに、挨拶程度の会話であまり多くを話すことは無かったが、「こちらの耳鼻科の先生は良いよね」という話をしたことを良く覚えている。

当時の遠藤さんは、既にモバイルゲームに興味の対象が移っており、家庭用ゲームの開発者としてあまり表に出ていなかったと思う。とは言うものの取材にあるように「動物番長」のように表には出ないかたちで多くのゲームをサポートしていた。

一般的には家庭用ゲームの作品でクレジットが無くなってくると、終わったクリエイターなどと言われるのだが、遠藤さんは常に自分の興味や情熱の向く方向に向かってきた人だろう。多くの会社が「ポチポチゲーム」だろ…と揶揄する中で、モバイルゲームの黎明期からそのシーンの開拓に尽力をしてきた。

そして、現在、その意志と情熱は後進の育成と日本のゲーム性やその根底に流れる精神性を研究している。テクノロジーの進化という表層ではなく、人間の持っているエンタテインメントを司る情感、本能を研究している。それは遠藤さんの長いエンタテインメントの旅の中でまだ道半ばなのである。


著者プロフィール:黒川文雄【インタビュー取材】

くろかわ・ふみお
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDEにてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japan(現LINE・NHN PlayArt)にてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。株式会社ジェミニエンタテインメント代表。DMMオンラインサロンにて「オンラインサロン黒川塾」を展開中。
黒川塾主宰。ゲームコンテンツ、映像コンテンツなどプロデュース作多数。

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