モリコメンド 一本釣り  vol. 48

Column

FAITH 長野県伊那市発の現役高校生バンド。海外フェスで演奏しているシーンを思い浮かべてしまう、音源の魅力とスケール感

FAITH 長野県伊那市発の現役高校生バンド。海外フェスで演奏しているシーンを思い浮かべてしまう、音源の魅力とスケール感

“真に新しい才能は、常に我々の想像の外から生まれる”と言ったのは誰だっただろうか。実際、“どうしてこの場所からこんなバンドが出て来るの?!”と驚くことは意外と多い(たとえば青森から出て来たSUPARCARとか、徳島出身のチャットモンチーとか)。Youtube、音楽ストリーミングサービスが普及し、古今東西のあらゆる音楽がスマホ1台で聴けるようになっている現在、その傾向はさらに強まってくるだろう。今回紹介するFAITHもそのひとつ。長野県伊那市を拠点に活動する現役高校生の5人組バンドだ。

別々の高校に通っていた5人(そのうち3人が日本人とアメリカン人のダブル)が出会ったのは、キャパ約150名の地元のライブハウス“伊那GRAMHOUSE”。2015年にバンド結成、翌年に「第6回長野県高校生バンド選手権」最優秀賞を受賞し、長野のライブハウスを中心にライブ活動をスタートさせると、ツアーで長野を訪れたバンドから「長野にすごいバンドがいる!」と口コミが広がり、徐々に知名度がアップ。さらに2017年に開催された10代限定夏フェス「未確認フェスティバル2017」に参加、エントリー総数3199組の中からファイナリスト8組に選出された。その最初の音源が2017年11月15日にリリースされた1stミニアルバム「2×3 BORDER」だ。

まずはアルバムの1曲目「Take me away from here」を聴いてみてほしい。キャッチーかつエッジーなギターリフ、疾走感としなやかさを併せ持ったビート、ダイナミックなメロディラインがナチュラルに共存する楽曲からは、このバンドが持つ音楽的なポテンシャルが実感できるはず。何よりも素晴らしいのが、楽曲全体から感じられる圧倒的なポジティブ感。音を詰め込み過ぎず、伸び伸びと大らかなサウンドスケープを描き出すことで、リスナーに心地よい解放感を与えてくれるのだ。“ここから遠い場所に私を連れていって”というタイトルからも、特定のジャンルや枠に収まることなく、どこまでも広い場所に向かって進んでいきたいという前向きな意志が伝わってくる。

そのほかの楽曲もきわめて魅力的。ノスタルジックな旋律とシャープなバンドサウンドがひとつになった「Bana Pla」、ブラックミュージック的なグルーヴを取り入れた「distance」、ファンクネスを感じさせるベースラインを軸にしたダンスチューン「DON’T FALL」。“あの夏の思い出”を映像的に映し出すポップナンバー「Summer」、ドラマティックなメロディラインが印象的な「September 7th」、大事な人たちの別れをテーマにしたパワーポップ系ナンバー「Kian」メンバー全員が作曲を手がけるだけあって(クレジットはすべて“Lyrics:ドリチュラーあかり Music:FAITH”)、楽曲の幅はかなり広い。軸になるルーツはおそらく海外のポップパンク(Blink-182、FALL OUT BOYなど)だと思うが、ひとつのジャンルに特化するのではなく、メンバー個々の作曲センスを取り入れ、融合させることで、優れてポップな音楽性を手に入れているのだ。ボーカリスト・ドリチュラーあかりのヌケのいい声質、そして、英語詞でありながら耳なじみがいい(特にサビのフレーズはめちゃくちゃキャッチーで、すぐに口ずさめる)リリックもFAITHの大きな武器だろう。

驚くほど自然に洋楽テイストを吸収し、日本のバンドシーンの枠には収まらないほどのスケール感——FAITHの音源を聴いていると、海外のフェスで演奏しているシーンを思い浮かべてしまう——をすでに備えているにも関わらず、これまでのライブはほとんどが長野県内という“Think Globally,Act Locally”状態のFAITH。全員が10代とあって、今後の活動がどのように展開されるかは未知数だが、このバンドに無限の可能性があることはまちがいない。日本のバンドシーンだけに収まらず、どこまでも自由に飛躍してほしい。そう願わずにはいられない逸材である。

文 / 森朋之

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