LIVE SHUTTLE  vol. 232

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GLIM SPANKYツアーファイナル 今のJ-ROCKのフォーマットからは完全にはみ出したライブ。そして5月の日本武道館へ

GLIM SPANKYツアーファイナル 今のJ-ROCKのフォーマットからは完全にはみ出したライブ。そして5月の日本武道館へ

GLIM SPANKY 「BIZARRE CARNIVAL Tour 2017-2018」
2018年1月6日 新木場コースト

昨年は6月に日比谷野音を制覇し、順調にライブのスケールを上げてきたGLIM SPANKYが、新木場コースト2Daysにチャレンジする。最新アルバム『BIZARRE CARNIVAL』を掲げたツアーのファイナルだ。しかも今年5月に初の武道館公演を開催することが発表された後ということで、メンバーの松尾レミ(VO&G)と亀本寛貴(G&cho)ばかりでなく、オーディエンスたちの気分も盛り上がっているに違いない。都内最大規模のオール・スタンディング会場の一つ、新木場コーストの入り口には“初 日本武道館 開催決定!”のフラッグが飾られていて、入場前にそのフラッグの前で写真を撮るファンがたくさん見受けられた。

ゴリゴリのロック・ファンだけでなく、さまざまな様相の人たちで、フロアもスタンドもすでに満員になっている。年齢層も小学生くらいから年配の方まで、相当に幅が広い。そのせいなのか、満員にも関わらず押し合うこともなく、開演直前になっても、フロアは殺気だっていない。少しでも前で見たい人は、すでに前に詰めかけていて、そうでない人はゆっくりバンドの登場を待っている。

灯りが落とされ、BGMがいつものSteeleye Spanに切り替わると、ブルーのラインを際立たせた照明がステージを美しく彩る。ドラムス、ベース、キーボード、パーカッションの4人のメンバーが先に登場し、亀本が現われると歓声が上がる。続いて松尾が出て来ると、さらに歓声が高まった。松尾が手を上げると、BGMが止まって、いよいよ開演だ。

12弦ギターのイントロが響く。『BIZARRE CARNIVAL』の1曲目の「THE WALL」だ。『BIZARRE CARNIVAL』は70年代のサイケデリック・ロックをベイスに作られていたが、「THE WALL」もその影響が強い楽曲。背後から当てられる照明と、松尾のボーカルにかけられた深いエコーが、70年代を彷彿させる。もちろん70年代の音楽を知らないオーディエンスも多かったと思うが、彼らにとってはそれが“GLIM SPANKYのサウンド”として受け入れられている。それを証明するように、1コーラスが終わると、「ウォー!」という登場時とはニュアンスの違う大きな歓声が上がった。

ステージに目をやると、松尾は身体を揺らしながらギターを弾いていて、リラックスしているようだ。2コーラス目では、さっきの1コーラス目よりもさらにパワフルな声が出る。スタートから松尾は絶好調だ。歌が終わると「新木場!!」とシャウトして、「こんばんは、GLIM SPANKYです!」と短く挨拶したのだった。

続いては「BIZARRE CARNIVAL」。ニューアルバムのタイトル曲だ。フルートの音色のシンセがイントロを奏でる。ロックにフルートを持ち込んだと言われる60年代末のイギリスの名バンド“ジェスロ・タル”を思い起こさせるサウンドだ。アルバムで聴いたときより、アートの香りを強く感じる。これがライブの面白いところだ。目の前で演奏されることによって、たとえば松尾の身体の動きなどから、彼女が伝えたい世界観がストレートに伝わってくる。3曲目の「The Trip」まで、序盤は『BIZARRE CARNIVAL』の曲順通りに進んだのだった。

「どうも、GLIM SPANKYです。今日はツアー・ファイナルということで、ようやくこの光景が見れました。私はこのツアーが大好きで、今日はイケてるロックなライブにしたいと思ってます。よろしくお願いします」と松尾。ここからは少し『BIZARRE CARNIVAL』から離れて、「ダミーロックとブルース」など、これまで大切にしてきたロック・ナンバーが並ぶ。

ミディアム・テンポの曲が続く中、オーディエンスはゆっくり身体を揺らしたりしながら、じっと演奏に耳を傾けている。ピョンピョン跳ねたり、リズムに合わせて拳を突き上げたりする昨今のライブに比べると、正直、地味なリアクションだ。しかし、オーディエンスたちの音楽との向かい合い方は、どのライブよりも真摯で、懸命だ。このあたりが、GLIM SPANKYのライブの特徴だろう。さまざまな人たちが、好きなようにライブを楽しんでいる。GLIM SPANKYの2人も同じように、自分たちのペースでライブを楽しんでいるところが頼もしい。スマッシュ・ヒット「怒りをくれよ」でようやく観客が拳を上げ、“普通のライブ”っぽいノリになったのだった。

そしてライブは、この後が面白かった。松尾のアカペラからスタートする「闇に目を凝らせば」から、“ダークサイド”に入ってゆく。自らの内面世界を掘り下げ、孤独と光について語る歌詞が鋭く耳に刺さる。少ない音数が緊張感を高めて、場内はしーんと聴き入る。続く「Velvet Theater」は、自分のためだけに開く秘密の劇場についての歌。自暴自棄寸前の気持ちを、ギリギリで保つシリアスな内容だ。

そしてこのシークエンスの最後は、穏やかなラブソング「お月様の歌」だった。前の2曲があったからこそ、ラブソングを優しく歌う松尾の魅力が際立つ。シンプルな歌声が、コーストにいるオーディエンス一人ひとりに、しっかりと届いている。ここまで聴いて、松尾がボーカリストとして急速に進化していることを思い知らされた。

元々、松尾の歌の実力が同世代では群を抜いていることは、誰もが認めるところだろう。それが今、新たな段階に入ろうとしている。彼女はこのところ、いろいろな状況でのライブを経験し、その経験が歌に安定感を与えた。加えて、彼女の人間的な成長が、これまでにないリアリティを歌にもたらしている。松尾は間もなく、J-ROCK史に残るボーカリストになる予感がした。このジャンプアップが、この日のいちばんの見どころだった。

「1月31日に新しいシングル『愚か者たち』が出ます。このシングルは3曲入りです。これまでGLIM SPANKYは、シングルやミニアルバム、アルバムと、いろんな形態でリリースしてきました。どの作品も、フルアルバムのつもりで作ってます。アートワークも妥協はしていません。5月には初の武道館も決まりました。私たちは好き勝手にやっていて、みんながどんどん仲間になってくれる。武道館でもナチュラルに、とにかくカッコいいロックのライブをやりたい。ロックは生きてるって、世間に見せつけてやりたいと思ってます」と松尾が宣言すると、それに賛同するように大きな拍手が起こったのだった。

『BIZARRE CARNIVAL』からの「美しい棘」も、松尾の圧倒的な歌唱力によって、メロディが突きぬけて聴こえてくる。このあたりからGLIM SPANKYは、終盤に向かってテンションを上げていく。「Sonntag」では亀本が官能的なギター・ソロを決める。「NEXT ONE」ではダイナミックなドラムが、コーストに一体感をもたらす。本編ラストは、『BIZARRE CARNIVAL』の最重要ナンバー「アイスタンドアローン」だった。この曲は先の日比谷野音のオープニング曲で、バンドがこの半年で“ひと回り”成長したことの証のように、たくましく聴こえてきたのだった。

アンコールで、まず松尾が話し始める。

「GLIM SPANKYのライブって、お客さんの年齢層がカオス(笑)。4才ぐらいの子供が親に肩車してもらって見てたり、私の親よりも年上の人がいたり。年齢、性別、国籍に関係なく届くロックをやってるつもりなんで、すごく嬉しく思います」。

亀本が続ける。

「いろんな人が楽しめるライブを目指して、いいバランスを取っていこうと思ってます。いろんな楽しみを提供していきたいってことを、年明けなんで伝えておきます」。

「このツアーで初披露。この日のために練習してきました」と松尾が言って始まったのは、ニューシングル「愚か者たち」だった。2月1日に公開の松坂桃李主演の映画『不能犯』の主題歌だ。メロディアスなロックで、本編の70年代ロック・テイストとはまた違うGLIM SPANKYの持ち味を活かしたナンバーだ。オーディエンスもすぐにメロディを覚えてしまったようだった。

「次の歌は、ノルマを払ってライブをやってた時代から歌ってます。その頃は、音楽なんて辞めろって、いろんな人から何度も言われました。12月に26才になりました。わかってくれない人にも突き刺さるように歌います」と「大人になったら」を松尾は心を込めて歌う。それまで演奏に聴き入っていたオーディエンスは、最後の曲「褒めろよ」で再び拳を突き上げてエネルギーを爆発させる。

今のJ-ROCKのフォーマットからは完全にはみ出したライブだった。自分の思うやり方で音楽を楽しむ人たちがここにいた。僕は「こんなライブがあってもいい」と心強く思ったのだった。

文 / 平山雄一 撮影 / HAJIME KAMIIISAKA

GLIM SPANKY 「BIZARRE CARNIVAL Tour 2017-2018」
2018年1月6日 新木場コースト

セットリスト
1.THE WALL
2.BIZARRE CARNIVAL
3.The Trip
4.ダミーロックとブルース
5.いざメキシコへ
6.怒りをくれよ
7.END ROLL
8.闇に目を凝らせば
9.Velvet Theater
10.お月様の歌
11.吹き抜く風のように
12.Freeder
13.美しい棘
14.白昼夢
15.Sonntag
16.ビートニクス
17.NEXT ONE
18.アイスタンドアローン
19.愚か者たち
20.大人になったら
21.褒めろよ

その他のGLIM SPANKYの作品はこちらへ

ライブ情報

GLIM SPANKY LIVE AT 日本武道館

5月12日(土) [東京] 日本武道館

GLIM SPANKY

松尾レミ(Vocal & Guitar, Song Writting, Art & Design)、亀本寛貴(Guitar)。
ロック、ブルースを基調にしながらも、新しい時代を感じさせるサウンドを鳴らす男女二人組ロックユニット。
アートや文学やファッション等、カルチャーと共にロックはあることを提示している。
ハスキーで圧倒的存在感のヴォーカルと、 ブルージーで感情豊かなギターが特徴。
ライブではサポートメンバーを加え活動中。

オフィシャルサイトhttp://www.glimspanky.com/

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