モリコメンド 一本釣り  vol. 49

Column

ゆるふわリムーブ “ネガティブとポップ”の絶妙なバランス感覚。王道のギターロックを追求する4人

ゆるふわリムーブ “ネガティブとポップ”の絶妙なバランス感覚。王道のギターロックを追求する4人

エレクトロもテクノもヒップホップもジャズも大好きだが、いちばん心がトキメクのはやっぱり“ギターロックバンド”というワードだ…などというとちょっと青臭いだろうか・ザ・スミス、アズテック・カメラ、ペイル・ファウンテンズ、ティーンエイジ・ファンクラブ、ヴェルヴェット・クラッシュ、スーパーカー、アジアン・カンフー・ジェネレーション。挙げればキリがないが“グッドメロディ×ギターサウンド”を軸にしたロックバンドには40代半ばになった現在でも、どうしても惹かれてしまう。2010年代以降はロックバンドがダンスミュージックの要素を取り入れる傾向が強まり、オーソドックスなギターロックバンドは減少している印象もあったが、“バンドの基本はやっぱりギターと歌だろう!”という気持ちに変わりはない。これは決して筆者の思い込みではなく(たぶん)、多くのリスナーを巻き込み、大きなムーブメントを作り出すことできるギターロックバンドの登場を待ち望んでいる音楽ファンは多いのではないだろうか。

今回紹介する“ゆるふわリムーブ”は、王道のギターロックの復権を予感させる若手バンドのひとつだろう。メンバーは網谷(G/V)、久保(G)、本田(Ba)、高宮(Dr)。 広島を拠点に活動している4ピースバンドだ。RADWIMPS、BUMP OF CHICKENなどをルーツに持つ網谷を中心に2013年に結成され、「根暗な少女は笑わないe.p」を発表。2015年8月度のMUSH A&R MONTHLY ARTIST(THE ORAL CIGARETTES、フレデリック、LAMP IN TEREENなどを輩出したオーディション&育成プロジェクト)に選出され、12月にはスペースシャワー主催オーディションDay Dream Believerで全国3569組から最終選考4組に残るなど、注目度は徐々にアップ。さらに2016年1月にリリースしたワンコインシングル「透明な藍のようにe.p.」が発売から9日で完売。その後も「泡になる前に」「モノローグ」「夢の記憶」をスマッシュヒットさせるなど着実に実績を重ねてきた4人は、2017年6月に7曲入りミニアルバム「芽生」を発表。これまでの人気曲、新曲を収録した本作によって、全国区のバンドへの第一歩を踏み出した。

ゆるふわリムーブの音楽的な特徴は、“負の感情を含んだ生々しい歌”と“ポップに振り切ったメロディ”そして“シンプルかつエッジーな手触りを持ったバンドサウンド”だろう。作詞作曲はすべて網谷が担当。ネガティブな心象風景をポップに描き出す網谷のソングライティングは、ミニアルバム「芽生」によって既に確立されたと言っていい。

オープニングナンバーは「夜を越えて」。切ない気分を誘うギターフレーズから始まり、心地よい疾走感と爆発的なダイナミズムを備えたバンドサウンドへと移行、ドラマティックなメロディを高らかに響かせるこの曲は、ゆるふわリムーブの音楽的な特性をわかりやすく示している。歌詞の主人公は、恋人を失ってしまった“僕”。「今も僕は まだ君をここで待ってる」と未練をのぞかせながら、“君に届くように僕は歌うよ”と切実な思いを歌い上げる歌詞も興味深い。この曲から伝わってくる切ない心象風景は、ソングライターとしての網谷のキャラクターそのものだと言っていいだろう。

“ネガティブとポップ”の絶妙なバランス感覚は、そのほかの楽曲にも共通している。激しく打ち鳴らされるビート、キラキラしたフレージングとハードな音像を併せ持ったギターとともに、大事な女性と過ごした日々がフラッシュバックしてしまう男性の感情を歌った「フラッシュバック」、パワーポップ系のサウンドと繊細な旋律のなかで“君と二人で隠れる場所を作ろうよ”というフレーズを鳴らす「夢の記憶」。妄想交じりの恋愛感情を(ちょっと危険なほどに)ロマンティックに映し出す楽曲は、ロックファンだけではなく、一般的なJ-POPユーザーにも幅広くアピールしそうだ。

唯一のバラード系ナンバー「スカーレット」も素晴らしい。この曲のテーマも失恋。“君”がいなくなったことを頭で派わかっていても、どうしても心が追い付かない。情けなくても愛しい感情を結晶化したかのようなサウンドエスケープは、このバンドが持つ音楽的なポテンシャルの高さを証明している。“グッと来るバラード”をまっすぐに表現できることも、彼らの大きな魅力だろう。

かわいいバンド名には似合わない(?)、骨のあるバンドグルーヴ、そして、表面的な前向きさに逃げることなく、自分自身の情けない思い、ダークな感情をあくまでもポップに表現した歌。アンビバレンツな要素を内包しながらも王道のギターロックを追求する“ゆるふわリムーブ”。こういうバンドが存在感を増せば、バンドシーンはもっともっとおもしろく、豊かになっていくはず。大いに期待したい。

文 / 森朋之

オフィシャルサイト
http://yuruhuwawawa.wixsite.com/yuruhuwaremove

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