LIVE SHUTTLE  vol. 235

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山崎育三郎 彼らしい“歌の世界”へのエスコートぶりが、心憎いほど自然でジェントリー。ステージングに、耳と目が釘付けになったツアーを振り返る

山崎育三郎 彼らしい“歌の世界”へのエスコートぶりが、心憎いほど自然でジェントリー。ステージングに、耳と目が釘付けになったツアーを振り返る

山崎育三郎 LIVE TOUR 2018~Keep in touch~
2018年1月15日 豊洲PIT

うまい、上手い、巧い、美味い、旨い……。どの文字をあてても、この人の歌のうまさにはとうてい追いつかない。ミュージカル界の貴公子と呼ばれ、その世界では揺るぎないポジションを築いた山崎育三郎の歌手としての力量は、とんでもなくすごいものがあった。もちろん実際にステージに立つ彼のパフォーマンスを耳に目にする前から、素晴らしいに違いないと思ってはいた。けれどもやはり百聞は一見にしかずの諺どおり。百想像は一見一聴にしかずだった。

なにしろオープニングに歌われた1stオリジナルシングル『Congratulations』の、第一声で完全に持って行かれた。本人が登場するまでのイントロダクションとして、ポートレート写真やリハーサル風景の写真などが映し出され、ジワジワと“生いっくん”への期待が高まると同時に、「こんな感じなのかもしれない」「あんな感じだったりするのかもしれない」と思い描いていたことなど、「♪コングラ~ッチレ~イション~~~」の声が聴こえたきた瞬間、すべてどこかにいってしまった。冗談ではなく目ではなく耳が点。声の圧というか、迫力というか、力強くも美しい歌声に飲み込まれるように聴き入っていた。しょっぱなからしてそうなのだから、それに続くパフォーマンスは推して知るべし。ボーカルとダンスに釘付けになったまま、気づけばラストの『あいのデータ』という2時間となったわけである。

披露された曲はアンコールも含めて全19曲。これまで発表された作品からの選曲になるため、基本はカバー曲が中心。けれどもCDで耳にしていたより数段、どの曲も山崎育三郎度は高くなっていた。例えば斉藤和義の『ずっと好きだった』は、原曲のロック色がぐっと抑えられ、ポップソングの色合いを強める形に生まれ変わっていた。また高低差のあるメロディーラインもなんのその、アップダウンを繰り返すボーカルにミュージカル俳優としてのキャリアも彷彿とさせられたレミオロメンの『3月9日』。『ひそかな夢 EVERMORE』も同じ意味で、語るようなボーカルと豊かな声量が圧巻と言える歌唱となっていた。

またボーカルが心まで真っ直ぐストンと入ってきたのが、弾き語りによる尾崎豊のバラード『Forget-me-not』。学生時代よりやっていたピアノ演奏と一体化したボーカルは、圧倒される声量と声の良さもあり、この人のひとつの本領発揮とも言える素晴らしさだった。弾き語りというシンプルなスタイルは、ボーカルだけで物語を構築できる力量がより一層際立ち、抗いがたく磁石のように耳が歌へと引き寄せられる、そんな快感も味わえることになった。

そうしたカバー曲としての醍醐味を味わう一方で、カバー曲であることを忘れてしまうほどオリジナル化している曲もあった。歌唱力のある人ゆえ、尾崎紀世彦の『また逢う日まで』、布施明の『君は薔薇より美しい』はハマって当然という曲だが、それにしてもの似合い方だった。どちらも力みなく、淀みなく、軽やかにリズムに乗って歌う様は、もはや山崎育三郎節と言ってもいいほど。特にビッグバンドジャズ風にアレンジされた『また逢う日まで』は、聴き心地も満点な仕上がり。

そしてもう1曲、驚くほどにオリジナル化していたのがAqua Timezの『虹』。切なさと明るさの絶妙なバランスといい、疾走感といい、声との相性といい、すべてが抜群だった。この曲を聴くうちに、機会があればアフリカンビートが効いたサウンドの曲や、ポルノグラフィティのラテンミュージックを取り入れた曲のカバーなどもリクエストしてみたいと思わされた。その意味ではGLAYの『生きてく強さ』もそう。これを聴きつつ思ったのが、90年代のガールポップの曲のカバー。歌い放つようなややラフなボーカルのカッコよさは、あの時期の女性アーティストのロックチューンに合いそうだと思った。

そうしたなかで初披露された新曲2曲も、とても聴きごたえがあった。不器用な男の恋物語をミディアムバラードに仕立てた『Beginning』と、ミラーボールと派手な照明が似合いそうなキャバレー色も濃厚な『TOKYO』は、ともに、この人のキャリアあればこそ。そう思わざると得ない、表現力の幅に脱帽させられた。

しかしそれにしても山崎育三郎の歌は、聴けば聴くほど“歌”というものの面白さに気づかされる。シンガーソングライターの歌とは違う、いい意味で歌う本人と歌の間に距離が保たれた歌は、こんなにも自由度が高いものなのだと思った。その距離があるから、リスナーは歌い手にエスコートされて自由に歌に入り込むことができる。また山崎育三郎のエスコートぶりが、心憎いほど自然でジェントリー。だから気づけば歌のなかに自分の居場所を見つけて、そこでゆったりと、あるいは夢見心地で、あるいは身に染みる思い出とともに、歌に浸ることができるような気がした。

という歌の素晴らしさで耳が釘付けになるとしたら、山崎育三郎はダンスでも目を釘付けにする。これまでミュージカルを活動の中心に据えてきた人なのだから当たり前といえばそうかもしれないが、本当にちょっとした仕草ひとつでさえも美しい。流れるようにリズムに体を重ねた次の瞬間、キレよくピタリと動きが止まり、しかもその体のラインが実にきれいに決まっている。鍛え抜かれたからこその美しさと言えばいいのだろうか、ターンひとつ、ステップひとつ、リズムのとり方ひとつ……、何もかもが過不足ない自然な動きとして目にとまる。この過不足ないということが、実はとんでもなく高度なことなのだろうが、それを感じさせない自然さでステージの上をスムーズに動き回る。

その、聴いても観ても心奪われる東名阪のコンサートと2ndオリジナルシングル『Beginning』のリリースで、2018年の幕を開けることになった山崎育三郎。ミュージカルや役者としての活躍も楽しみではあるが、素晴らしい今回のステージや新曲を前にすると、この延長線上に広がっているであろう音楽での活動と新曲が、否応なく楽しみでならなくなってきた。

文 / 前原雅子 撮影 / 川嶋謙吾(田中聖太郎写真事務所)

山崎育三郎 LIVE TOUR 2018 ~keep in touch~
2018年1月15日(月) 豊洲PIT

SET LIST
1. Congratulations
2. ずっと好きだった
3. 君は薔薇より美しい
4. Forget-me-not
5. 366日
6. 3月9日
7. また逢う日まで
8. 夏の終りのハーモニー
9. 生きてく強さ
10. 僕こそ音楽 Ich Bin Ich Bin Musik
11. ひそかな夢 EVERMORE
12. 波乗りジョニー
13. 虹
14. 男の子女の子
15. 女々しくて
16. TOKIO
17. Beginning(新曲)
<ENCORE>
18. TOKYO(新曲)
19. あいのデータ (Happy ver.)

その他の山崎育三郎の作品はこちらへ

ライブ情報

「LIVE SDD 2018」
2月17日(土)  大阪城ホール
詳細はhttp://fmosaka.net/sdd/

「Billboard LIVE OSAKA 音力-ONCHIKA スペシャルライブ vol.8 山崎育三郎 Premium Night」
3月19日(月)  ビルボードライブ大阪
詳細はhttp://www.ytv.co.jp/music_power/

山崎育三郎

俳優、歌手。1986年1月18日生まれ、東京都出身。A型。
2007年、ミュージカル『レ・ミゼラブル』のマリウス役に抜擢。以降、ミュージカル俳優として活動。2015年、ドラマ『下町ロケット』(TBS系)真野賢作役で、一躍注目を浴び、ドラマ『あなたのことはそれほど』ではミステリアスな同僚を演じるなど幅広い演技をみせ、個性派俳優として活躍。7月期には金曜ナイトドラマ「あいの結婚相談所」(テレビ朝日系)主演藍野真伍役を演じ、更に8月16日に自身初めてのオジリナルシングル「Congratulations / あいのデータ」をリリース。
趣味はゴルフ、特技はダンス、ピアノ、野球。
2017年12月2日からは、オトナの土ドラ「オーファン・ブラック~七つの遺伝子~」(フジテレビ系)に岩城槙雄役として出演。
2018年1月17日には、ニューシングル「Beginning」をリリースし、“山崎育三郎 LIVE TOUR 2018”も無事終了。5月には主演ミュージカル『モーツァルト!』の再演が控えている。

オフィシャルサイトhttp://www.ken-on.co.jp/1936/

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