Interview

The Birthdayは今なぜライブDVDではなくライブCDという形を選んだのか?

The Birthdayは今なぜライブDVDではなくライブCDという形を選んだのか?

昨年5月から半年にわたって行なわれたツアーThe Birthday TOUR 2017“NOMAD”の最後を飾ったZepp5公演の中から、厳選されたテイクを集めた初のライブ・アルバムが『LIVE AT XXXX』だ。ライブDVDが主流になっている今、音だけのリリースは非常に珍しい。ビジュアルなし、サウンドだけで勝負するライブ・アルバムは、相当な自信がなければリリースに踏み切れない。アルバム『NOMAD』のインタビューでチバユウスケは「The Birthdayは新しいフェイズに入った」と語っていたが、それはバンドに対する自信の表われでもあった。実際、『LIVE AT XXXX』には、繰り返し聴きたくなる魅力がぎっしり詰め込まれている。しかもツアー終了後、わずか2カ月でのスピード・リリースには、自信だけでなく、凄まじい気迫も感じられる。
屈指のライブ・バンドとして音楽シーンに君臨してきたThe Birthdayからのビッグ・プレゼント『LIVE AT XXXX』とはどんなアルバムなのか。制作の中心となったギタリスト、フジイケンジに全貌を聞いてみた。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 田中和彦

『LIVE AT XXXX』では肉躍る感じがすごく出せたなと思ってます。逆に、45本のツアーをやった記念のライブCDみたいな感じにはしたくないなと思ってた。

なぜ“いまどき貴重なライブ・アルバム”を出そうと思ったんですか?

そんな話、ツアー前は全然なかったんですよ。今回のツアーは前半と後半に分かれていて、後半戦が始まってしばらくしたらスタッフサイドやレコード会社から「ライブ・アルバムを出さないか」みたいな話が出てきた。最初はそのレベルだったんです。で、僕は毎回ライブを、ラインの音(注:会場のP.A.スピーカーを鳴らす回線の音。会場の大きさや形状によって調整されているので、スタジオ録音のバランスとはまったく異なる)を聴いてたんですよ。ツーミックス(注:ライトとレフトの2チャンネルしかない、ラフなミックス)なんで音質は悪いんだけど、それを聴いていて「これを作品にしたいなあ」っていう思いが、ずっと前から僕にはあった。

このツアーに限らず?

限らず、です。昔、まだ僕が田舎にいた10代の頃は、RCサクセションの『ラプソディー』とか『Yeahhhhhh…at武道館』とかのライブ・アルバムをホントによく聴いたし、ライブのやり方もそこから教えてもらった。普通のスタジオ・アルバムを聴くよりも、そこにもうひとつ夢がある感じがあって、「ああ、早く東京に行きたいな」と思ったし、「『ラプソディー』がレコーディングされた久保講堂って、どこだろう?」とか、そういうようなことに思いを馳せながら聴いてました。「よォーこそ」っていうその曲名が、もう衝撃的でしたね、やっぱり。そこから一気にロック・シーンも変わっていったし。

だから「いいライブ・アルバムを作りたいな」っていうのはずっとあったんですよね。今回のツアーの前半と後半の隙間に、新潟LOTSでKEN YOKOYAMA BANDと一緒にやったイベントがあって、そのときのライン録音を持って帰ってたんだけど、そのテイクがすごく良くて。ちょっとブート盤っぽい感じの音だけど、たまさか、バランスも良くて、「これいいな!」っていうのがあった。とにかくうねってて、こんなヤツを出したいなと思ってたんですよね。
そのイベントでやったのは、『BLOOD AND LOVE CIRCUS』からの曲がわりと多かった。『BLOOD AND LOVE CIRCUS』のインタビューで「血湧き肉躍る感じのアルバムにしたい」ってよく言ってたんですよ。その新潟のライブは、まさに血湧き肉躍る感じが出てた。確実にレコーディングよりも、演奏も面白かったし、いいなと俺は思ったんです。ライブってやっぱりスタジオを超えるもんだと思う。 勢いとかエネルギーとかパッションがバッと出てるものがたまたま録れるのなら、出したいなって思ってたんです。
今回はそういう青写真が僕の中にあったから、『LIVE AT XXXX』では肉躍る感じがすごく出せたなと思ってます。逆に言うと、今回45本のツアーをやったから、その記念のライブCDみたいな感じにはしたくないなと思ってた。

もっと作品性が高いものを目指した?

うん、そう。見に来てくれた人にとっての“記念品”みたいな感じで、よくライブDVDを出すじゃないですか。そういうノリとはちょっと違う、今のThe Birthdayのライブのパフォーマンスでいちばんいいヤツを集めて、作品性の高いものを出したいなと思ってた。たとえば「プレスファクトリー」とか、過去の、僕がやってない時代の曲にも僕のテイストが入ってるし。

「プレスファクトリー」をもう一回スタジオで録り直すってものでもないしね。

そうです、そうです。それは絶対に超えられないですから。

ただライブだと、形も変わってくるし。

うん、ライブだったら、しれっとできるなあと思ってね。そしたら、金沢辺りだったかな、やっと僕らのマネージャーがメンバーを集めて、「ライブ・アルバムを出すのは、どうですか?」って言ってきた。そのときは、ライブをノーカットで全部入れようっていうノリだったんです。でも僕は、ノーカットの長いライブ・アルバムは聴いてて飽きちゃうかなと思っていて。できればCD1枚で完結する“作品”にしたかった。

2枚組とかではなく?

ノーカットにすると、2枚組になっちゃうんですよ。でも僕自身、2枚組のライブ・アルバムって、2枚目はあんまり聴かなかったことがよくあったんで(笑)。

自分がね(笑)。

そう、自分が(笑)。オールマン・ブラザース・バンドのライブとか、そうだったし。

僕もオールマンのフルのライブCD持ってるよ。

俺も持ってますよ(笑)。   

でも何回も聴くのは、やっぱり1枚にまとめてある方だな。

うん、そうそう。やっぱり聴きやすいものがいいかなと思って。なので打ち合わせのときに思い切って、「もっとギュッと凝縮しませんか」と言ってみた。「Zeppの5会場からいいテイクを選んで、まとめたらいいんじゃないですか」って言ってみたら、「じゃあ、それでやろう」っていうことになった。

ライブの名作は、普通のスタジオのアルバムを聴くよりも一個視界が広がるというか、2Dから3Dになる感じ。

フジケンさんのライブ・アルバムに対しての思いは、どんなものだったんですか?

僕、ダニー・ハサウェイのライブ・アルバムがすごく好きで。あれはたった8曲で構成されてるじゃないですか。 

しかもリズム隊が2セットある。

そうそうそう。2つの会場でやった曲からセレクトしてまとめてる。そういうアルバムを作りたい、ずーっと聴けるライブ・アルバムを作りたいなっていう思いがあったんです。

僕は今回の『LIVE AT XXXX』を、しみじみ聴いてしまった。「歌モノのアルバムだ!」っていう感じがすごくしていて。The Birthdayをしみじみ聴きましたって言うと怒られるのかもしれないけど(笑)、何度も何度も聴けるアルバムだと思った。

しみじみしましたか(笑)。僕はかっこいいバンドで、カッコいいライブ・アルバムを作るっていうのが、昔からひとつの夢としてあった。中学校高校の頃にライブの名作をいくつも聴いたし、普通のスタジオのアルバムを聴くよりも一個視界が広がるというか、2Dから3Dになる感じ。ライブDVDと違って、ライブ・アルバムは音だけだけど、なんか一個視野が増えるみたいな感じがあったから、そういうライブ・アルバムを作りたいなっていうのがあったんですよ。

それでミーティングで提案したんですね。

そう。最後にダメモトで言ってみたんですよ。そうしたら、それが通った。

「だったら、お前やれよな」ってなったの?(笑)

そうそう。なんかチバくんが言ってましたね、「じゃあフジケン、頼むよ」って(笑)。

(一同笑い)

全員でテイク選びをやるよりかは、誰かが選んだ方が早いから、「じゃあ、俺がやる」って立候補しました。

それで結局、全部引き受けることになっちゃったわけですね(笑)。その時点で「こんなアルバムになるだろうな」っていうイメージはあったんですか?

んー、ありましたね。僕が今回のツアーですごく好きだったのは、セットリスト前半のうねりから、後半の「プレスファクトリー」に入るところ。

あの曲がいちばんしみじみしたかな、ははは!

「プレスファクトリー」ですか(笑)。あれって、何て言うか……工場の従業員の歌だったりするから、すごくフレンドリーな曲なんですよ。お客さんも♪みんなファンキー♪っていうフレーズを歌ったりするから、あの曲に辿り着くのがすごく楽しみだった。 そこに向かうライブの流れもすごく良かったし、そこからエンディングに向かう流れも好きだったんですよ。 ダニー・ハサウェイのアルバムにたとえると、「You’ve Got a Friend」に当たる部分ですね(笑)。みんなが一緒に歌うし、一体感があって、すごくフレンドリーな雰囲気になる。僕のイメージでは、そういうハッピーなとこに向かっていく空気感が出せたらいいなっていうのはありました。

大変だったけど、構成と選曲を任せてもらって良かったね。

あははは、そうですね! 曲順はだいたいライブの流れに沿って作ったので、僕がやったのは5会場のどのテイクがいちばんいいかっていうセレクトと、あとはミックスにずーっと立ち会ってたっていう感じです。チバくんも後半からは一緒にミックスに立ち会ってました。

なんで途中からチバくんは参加したんだろう?

普通はやっぱり気になりますよね。ライブ・アルバムとはいえ、僕みたいに細かくいじくり倒すような人間が、スタジオにこもってるって聞いたら「何やってるんだろう?」ってなりますからね。ハルキもそうだし。気にならないのはキュウちゃんだけで(笑)。

あはははは!

ハルキくんには来てもらいたかったんだけど、でも彼は「自分はまな板の上に乗ります」みたいな感じで言ってくれて、マスタリングの最後の最後に通しで聴くときに、「聴きに行きます」ってやっと来ました。で、「どうだった?」って聞いたら、「いい」としか言わないんですよね。

良かったですねえ、それはね。

それはすごくありがたいという感じで。

キュウちゃんだけは最後まで来なくて(笑)。

キュウちゃんはもう…あ、でも途中で1回来たかな(笑)?

キュウちゃんらしいなあ(笑)。チバくんは最終的には聴いて何か言ってましたか?

いや、チバくんはねえ、もう最後は泥酔してました。はははは!

わははは! 通しで聴きながら、スタジオで泥酔してたんだ。

500mlの缶ビールを4本空けて、そのあとさらに4本買ってきたんですよ。だいたい2リットル行ったらチバくんは終わるって俺にはわかってたんで。

チバくんは最後までちゃんと聴いてたのかねえ(笑)。

うーん・・・・でも、最後は握手しましたよ、はははは!

「すっげえいいの出来た!」つってチバくんは言ってましたし、俺も満足、夢が叶ったなあって思ってます。

アルバム作りの作業は、実質どれくらいでやったんですか?

セレクト含めて2週間ぐらい。実質は5日間、6日間ぐらいです。これでも 時間掛けたほうですよ(笑)。悩んだのは、お客さんの歓声をどれぐらいの割合で入れるか、そのさじ加減が肝というか。音自体はけっこうドライに作った。で、曲が終わったときに歓声がブワーッと来て「あ、これ、ライブなんだ」って気づくぐらいでいいんじゃないかなと俺は思ったんですよね。でも、往年の名作ライブ盤って、もっと歓声が入ってるのが多い。会場にもよるんだろうなあ。会場の音をちょっと足したりすると、ボトムがぼやけたりするんで、曲がもったいないなってちょっと思ったりしたところもあったんで。もうちょっと小っちゃいハコで録ってたら、また別だと思うんだけど、そこがちょっと悩んだ。

でもこの期間で僕は全力でやったから、後悔は別にない。うん……僕とチバくんが最後に握手した、それで終わりなんですよ(笑)。

ふははは! リスナーとしては「こういうライブ・アルバムを待ってたんだよ!」、「こういうライブ・アルバムが出来て良かったね!」と言いたい。

「すっげえいいの出来た!」つってチバくんは言ってましたし、俺も満足、夢が叶ったなあって思ってます。

ありがとうございました!

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ライブ情報

The Birthday『Quattro×Quattro Tour’18』
6月20日(水)  名古屋CLUB QUATTRO
Open 18:00 / Start 19:00
info.JAILHOUSE 052-936-6041

6月21日(木)  梅田CLUB QUATTRO
Open 18:00 / Start 19:00
info.YUMEBANCHI 06-6341-3525

6月23日(土)  広島CLUB QUARRO
Open 17:00 / Start 18:00
info.YUMEBANCHI 082-249-3571

6月28日(木)  渋谷CLUB QUATTRO
Open 18:00 / Start 19:00
info.SMASH 03-3444-6751
※全公演共通:5,000円 (税込・1DRINK別 600円)
一般発売:2018年3月31日
※小学生以下、保護者同伴の場合は無料

The Birthday

Vocal & Guitar : チバユウスケ(7.10)、Guitar : フジイケンジ(3.08)、Bass : ヒライハルキ(6.20)、Drums : クハラカズユキ(4.03)。
2005年9月、チバユウスケ(Vo&G)が中心となって結成。2010年末から現在のメンバーに。結成10周年となる2015年には、ベスト・アルバム『GOLD TRASH』をリリースし3度目の日本武道館公演を成功に収める。2017年3月シングル「抱きしめたい」をリリース。5月にニュー・アルバム『NOMAD』をリリースして、27日からは全国ツアーがスタート。2018年1月31日には初のライブ・アルバム『LIVE AT XXXX』をリリースする。

オフィシャルサイト
http://www.rockin-blues.com
http://thebirthday.jp