黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 12

Interview

ゲームクリエイター松山洋氏(上)情熱の原点は「週刊少年ジャンプ」

ゲームクリエイター松山洋氏(上)情熱の原点は「週刊少年ジャンプ」

「少年ジャンプ」には常に最先端の面白さがあると信じている

すごい世界だなあ~。

松山 あの頃はそうやって「ジャンプ」の仲間を増やしてましたね。けど、もうほどなくでしたよ、やっぱり『キン肉マン』のヒットが大きくて。あと『Dr.スランプ』。鳥山明さんの連載が始まって、一気に子どもの読者が増えました。それまでは「ジャンプ」も大人が読むものだったんですけどね。

そうそう、大人が読んでましたね。僕もずっと読んでました。

松山 『すすめ!!パイレーツ』(注16)も子どもの読者を増やしましたよね。あと『ハイスクール!奇面組』の前の『3年奇面組』(注17)。ああいうギャグマンガが急に増えてきて。

注16:架空の弱小プロ野球チームに所属する、おかしな選手たちのハチャメチャな日常を描いた江口寿史氏によるギャグマンガ。当時の人気マンガや世相などをネタにしたパロディが満載で、のちのマンガに大きな影響を与えた。
注17:アニメでも大人気になった新沢基栄氏による学園ギャグマンガ。連載開始時は主人公たちが中学3年生だったため『3年奇面組』というタイトルだった。

それはそれで受け入れてたんですか?

松山 もちろんです。「少年ジャンプ」には常に最先端の面白さがあるって信じて疑ってなかったので。もちろん同時に同じスタイルの雑誌があるっていうことにすぐに気づきましたよ。「サンデー」と「マガジン」と「チャンピオン」っていうのがあるっていう。で、見比べてみて思うわけですよ。なんでこんなに載ってるマンガのラインナップが雑誌ごとに違うんだと。「ジャンプ」が一番面白いんだから、みんな「ジャンプ」みたいにすればいいのにって(笑)。

正直、あだち充さんや高橋留美子さんのラブコメ、男女の好き嫌いの話はちょっとエロいところも含めて子供には早かったんですよ。けど「ジャンプ」ってそうじゃなくて「オレはお前をブッ飛ばす!」っていう、とにかく悪いヤツらをこらしめる、気持ちよくやっつける話ばっかなので。ギャグはギャグで洗練されていて、クラスメイトの変態にスポットを当てるような。『奇面組』とかまさにそうだったじゃないですか。

なので、やっぱ「ジャンプ」が一番キレキレで面白くて、その他の雑誌は全然そのレベルになってないなと。むしろ中学生向け、高校生向けっていうか、ヤンキーものやバイクものが多かったりして、ちょっとこれは年齢層高いなって。これじゃあ読者増えない、小学生のオレらが入っていけないんだもんって思いながら読んでましたね。

それは、その年代の視点でないと分からないと思います。多分、『バリバリ伝説』(注18)とか時代的にマッチしてますよね。

松山 だと思います。

注18:80年代に「週刊少年マガジン」で連載されていたしげの秀一氏によるバイクマンガ。バイク好きの中高生を中心に絶大な人気を誇った。

僕なんかにしたら、こっちのほうがストレートに入ってくるわけですよ。でも、多分小学生からしたらバイク早えよなって思っちゃうんでしょうね。

松山 そうなんですよ、「チャンピオン」でやってた『750ライダー』(注19)も喫茶店に入り浸る青年の話じゃないですか。小学生は喫茶店に入り浸らないですから、もうあの世界観設定が分からないわけですよ。

注19:70~80年代に「週刊少年チャンピオン」で連載されていた石井いさみ氏によるバイクマンガ。主人公の高校生ライダーと仲間たちのほのぼのとした青春模様が人気を呼んだ。

ありとあらゆるマンガ誌を読みまくっていた小学生時代

そうかあ~……。

松山 まあ、でもさすがに『タッチ』が始まったら「サンデー」がメチャメチャ売れるようになりましたね、時代が追いついてきて、どんどんいろんな作品がアニメ化されるようになって。『うる星やつら』も大きかったですよ。みんな「サンデー」を読み始めましたから。

ホントにいろいろ読んでこられたんですね。

松山 小学生のときから、ありとあらゆる週刊マンガ、月刊マンガを読みまくってましたね。「サンデー」「マガジン」「チャンピオン」「ジャンプ」。あと月刊……昔は「月刊ジャンプ」っていうのが。今は「ジャンプSQ.」になっちゃいましたけど。あと「月刊マガジン」「月刊チャンピオン」。サンデーだけは月刊が昔はなかったんですね。今は「ゲッサン」っていうのがありますけど、昔は「サンデー増刊」っていってて増刊号だったんですよ。そこで、のちに『スプリガン』(注20)とかが始まって、大ヒット作が生まれるようになったんですけど。

注20:高校生ながら「アーカム」と呼ばれる秘密組織の特殊エージェントを務める主人公・御神苗優の活躍を描いたアクション作。原作はたかしげ宙氏、作画は皆川亮二氏。

でも小学生じゃ、そんなに読むお金ないですよね。

立ち読みは「大人になったら絶対に恩返しします」と思っていた

松山 「ジャンプ」と同じで友達を巻き込んで買ったりしてました。「サンデー」とか「マガジン」もファンを増やして、他のグループにローテーションを組ませて。けど、全部はさすがにカバーできなかったです。なので、ホントに今も申し訳なく思ってるんですけど、小学生のときは町の書店で立ち読みしてました。昔は今みたいにヒモで縛ってなかったんで。子どもながらに分かってはいるんですよ。これは売り物だと。だから、せめて絶対に汚しちゃいけないと思いながら気をつけて読んでましたね。

そこまで気を使われてたんですか。

松山 カンベンしてください、大人になったら絶対に恩返しします、って思いながら読んでました。だから、私は過去も含めてですけど、買った本をブックオフとかに売ったことがないんです。捨てたこともないです。さすがに雑誌は処分せざるを得ないですけど、単行本とかはもう一生モノだと思ってるので。

すごいですね。どうされているんですか?

松山 全部持ってます。1万冊以上あって、今は福岡本社に置いてます。だから、会社がライブラリーですね。あと、最近は電子と紙と両方買うようにしてます。

電子と紙と両方!?

松山 両方買います。『キングダム』(注21)全巻(2018年1月時点で49冊)は持ち歩けないじゃないですか。でも、電子だったら飛行機の中でも読めますから。

注21:戦国時代後期の秦を舞台に天下一の将軍を目指す少年・信と、のちに始皇帝となる若き王・嬴政(えいせい)が乱世を生き抜いていく姿を描いた原泰久氏による歴史大河巨編。現在「週刊ヤングジャンプ」で好評連載中。

う~ん、だけど全部はムリかな。僕も望月三起也先生(注22)が大好きで全部持ってるんですよ。さすがに持って歩けないから最近は電子書籍でも買うんですけど、松山さんみたいに両方全部は持ってないです。だから、本当にすごいと思います。

松山 まあ、マンガがホントすべてでした。

注22:1960年代から長きに渡って活躍したマンガ家。はみ出し者ばかりが集まった7人の特殊警官が悪党たちを叩き潰していくで『ワイルド7』はドラマ化もされるなど大ヒットとなった。そのほかの代表作は『秘密探偵JA』、『俺の新選組』など。2016年に死去。


続きは第2回インタビュー
2月5日(月)公開

ゲームクリエイター松山洋氏(中)ゲーム会社かあ、全然考えていなかったなあ

ゲームクリエイター松山洋氏(中)ゲーム会社かあ、全然考えていなかったなあ

2018.02.05

著者プロフィール:黒川文雄【インタビュー取材】

くろかわ・ふみお
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDEにてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japan(現LINE・NHN PlayArt)にてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。株式会社ジェミニエンタテインメント代表。DMMオンラインサロンにて「オンラインサロン黒川塾」を展開中。
黒川塾主宰。ゲームコンテンツ、映像コンテンツなどプロデュース作多数。

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